茶碗
ある駅。杉三と蘭が駅員さんに助けてもらいながら、電車を降りる。
蘭「ありがとうございます。帰りもお願いします。」
杉三「新しい駅ができたの?」
蘭「そんなものないけど?杉ちゃんどうしたの?」
杉三「前来たときは、鯨が吐き出すオキアミみたいに人が降りてたじゃない。今日、きてみたら、人が全然いない。ねえ、駅員さん。」
駅員「実はですね、半年前からあるんですが、駅の近くにある、タワーマンションから、茶碗が落ちてくる嫌がらせがありまして。だから、みんなここには、寄り付かないのですよ。」
蘭「嫌がらせにしては酷すぎますね。誰かの頭にでも当たったら困るでしょうが。」
駅員「そうなんですけどね。いくら報道してもやめないんですよね。犯人は。」
蘭「ああ、そういえばやっていましたね。」
杉三「僕のうちはテレビがない。」
駅員「お二人さん、どちらにいかれるんですか?」
蘭「ああ、単に友人の見舞いですよ。小杉病院に。」
駅員「そうですか、それなら、介護タクシーの方が良いでしょう。車いすの方には、危なっかしくてしかたありませんよ。」
蘭「五分くらいで着くと聞きましたけどね。」
駅員「いや、お二人の頭上に当たったら困ります。ちょうどあちらに1台ありますから、乗っていってください。」
蘭「仕方ないな。」
杉三「サービスよくていいじゃない。」
蘭「杉ちゃんにはお金というものは、効かないからね。」
運転手に、のせてもらい、タクシーは走り出す。杉三は窓から手を振り
杉三「ありがとう、親切な駅員さん。」
駅員も手を振り替えした。
運転手「小杉さんなら、すぐちかくですから、ワンメーターでかまいませんよ。」
蘭「ありがとうございます。」
運転手「はい、あっ!」
キイッという音がしてタクシーがとまる。
杉三「なんだ、何をやったんだ!」
運転手「ちょっとまって、」
といって、運転手がタクシーから出ると、同時に目の前に茶碗がおちてきて、どしゃん!という音がする。
蘭「運転手さん、大丈夫ですか!」
杉三が両手で顔を押さえてなく。
蘭「泣かないでよ!こんな大事なときに!」
といって自分の口を塞ぐ。それをいうと、杉三はさらに泣き出してしまうからだ。
運転手「いやいや、この程度じゃ、大丈夫ですよ。ちゃんと小杉さんまでいけますよ。別の道をとれば良いだけです。」
杉三「指、怪我してる。」
運転手「いやいや、破片を拾っている時に、ちょっと怪我してしまっただけですから、大丈夫です。」
と、運転席に座るが、
杉三「絶対だめ!治さなきゃ!血が出てるじゃありませんか。」
運転手「はい、お客さんをのせたら、すぐに治しますよ。」
杉三「絶対だめ!いまは、治す方が先!」
と、車の窓から顔をだし、
杉三「だれか、この人をみてくれる、病院をしりませんか!」
すると、通りかかったちゃらんぽらんな高校生が、
高校生「バカだなあお前。目の前に高橋薬局があるじゃないか。」
杉三「どれですか?」
高校生「ここでございます!」
と、看板を指差す。確かに高橋薬局と書いてある。
杉三「じゃあ、僕を下ろしてください。僕はあるけないし、読み書きができないのです。薬剤師さんに、この、運転手さんを治してと頼みたいんです。」
蘭「杉ちゃん、あんまり、、、。」
といいかけると、高橋薬局の中から、おばあさんが出てきて、
おばあさん「どなたがお怪我をされたの?」
杉三「こちらの方です。」
と、運転手を指差す。
おばあさん「あら、運転手さん?」
杉三「はい、いま植え木鉢がおちてきて、欠片を拾っていたら、怪我をしたんです。」
おばあさん「わかったわ。運転手さん、おりてください。」
運転手「すまんね、ばあちゃん。」
と、渋々タクシーを降りる。
杉三「やった!おばあさん、ありがとう。」
高校生は、怖がって逃げていった。
杉三「あ、僕、おろしてよ!ねえ!」
蘭「ああ、全く。ドンキホーテの話を知らないのかよ。杉ちゃんは、それさえも読めないのか。」
おばあさんは、傷薬をもってきて、運転手の怪我をした右指にぬり、包帯で巻いた。
杉三「本当にありがとうございます。車の中からのお礼しかできなくてごめんなさい。」
運転手「さて、小杉さんいきますか。」
おばあさん「もう四時すぎたから、面会時間はおしまいだよ。」
蘭「え、、、。そんな。僕はサンチョパンサか。なんでこんな災難にあうんだろ。運転手さん、本当に申し訳ない。」
運転手「いやいや、お客さんが悪い訳じゃありません。毎日のように、茶碗がおちてくるのを、何にも解決しようとしない、このまちが悪いのです。小杉病院にわたしがお詫びしておきますよ。お二人を駅まで、無料でお送りいたします。」
杉三「どうもありがとうございます。茶碗が落ちてきたときは本当にビックリしました。確かに、警察らしき人も見かけませんもの、解決してない訳ですね。一刻も早く、解決をいのりますよ。ねえ、いの。」
蘭「それよりも、今日見舞いができなかった杉沢さんに謝らなければ。」
タクシーが動きだし、駅に向かう。
運転手「面会の許可書をもらったのかな?小杉に見舞いにいくということは。」
蘭「え?許可制なんですか?知りませんでした。ただ、面会時間が一時から四時までとはきいていたから、いそいできたんです。かねてから、行きたいとは思っていたんですが。精神科というものは、ずいぶん違うのですね。」
運転手「そうですよ。あそこは、お医者さんが面会を許可した患者でなければ面会ができないことになってるんです。普通の病院とは違いますからな。」
蘭「そうだったんですか。確かに精神科とは、聞いていました。でも、そんなシステムだったとは。ああ、とんだ無駄骨折りだ。」
杉三「いいじゃないか。人助けができたし。こんないい運転手さん、なかなかいないよ。」
運転手「ありがとうございます。いい誉め言葉で、ちょっとてれますな。お友だちは、うつ病にでもなったのかな?このあたりは、小杉さんがあるから、うつ病かな?と思われる人をよくみかけますよ。だからこそ、介護タクシーの需要が多いのです。お安くしてますので、またきてくださいね。」
タクシーは駅前に到着する。
蘭「迷惑をかけてすみません。これでお礼の足しになればいいのですが。」
と、お札に、茶封筒を渡す。
運転手「いやいや、一万円なんて要りませんよ。二キロしか走ってないですから、650円で結構です。」
蘭「でも、あんなに、」
運転手「いえいえ、私どもは、半分ボランティアのような会社ですから、障害のある方から、代金をもらうのは、規定の範囲内と決めています。お客様は神様、をいつも忘れないようにしていますよ。」
蘭「そうですか、では素直に受けとりまして、650円お支払します。」
と、硬貨を運転手に手渡す。
運転手は二人を車からだしてくれて、
運転手「どうもありがとうございました。またきてくださいね。」
と、あたまを下げる。
杉三「また来るよ!親切な運転手さん!」
と、手の甲を向けてバイバイし、二人は駅に向かっていく。
蘭「杉ちゃんは、ある意味ドンキホーテみたいだね。でも、ドンキホーテだから、幸せなのかもしれないよね。」
杉三「そうさ。だって今日は、とってもいい一日だったよ。」
蘭「はいはい。明日に備えて早く帰ろう。君は、急行電車にのることもできないのに、どうしてそんなに、幸福者でいられるのだろう?もしかしたら、福の皮を被って生まれたのかなあ?」
二人はそれぞれ駅員に手伝ってもらいながら、電車に乗る。各駅停車なのでがら空きなのはいいのだが、急行の二倍以上時間がかかり、富士に帰ってきたときは、もう夜になっていた。
駅を出ると、美千恵がまっていた。
美千恵「お帰り。杉沢さんどうだって?」
蘭「いや、それが、僕が面会許可をもらうのをわすれていたので、引き返してきました。ごめんなさい。」
杉三「ちがうよ、母ちゃん。とても親切なタクシーの運転手さんに出逢ったんだよ。
そうしたら僕らの目の前に、茶碗がおちてきて、運転手さん、怪我をしちゃったの。そうしたら、親切なおばあさんが、介抱してくれたんだ。とてもいい、一日だった。」
美千恵「まあ、とりあえず、うちへ帰りましょう。蘭さんは家で一度休む?」
蘭「どうしようかな。」
美千恵「また、顔色悪いわよ。休んだ方がいいわ、アリスさんに迎えに来てもらうように、私から連絡しておくから。」
蘭「今回は、心臓じゃなく、あたまが痛いですが、まあ、一人でいるのも苛立つだけだろうから、お邪魔します。」
美千恵「じゃあ、そうしましょ。きしめん買ってきた。」
杉三「うれしい!ありがとう!」
三人、美千恵の車に乗り、杉三の自宅へむかう。
杉三の家
杉三「(きしめんを食べながら)今日は茶碗がおちてきて、運転手さんもびっくりしてた。どこから落ちてきたんだろう。あたったら、大怪我するはずなのに。」
美千恵「あら、仕事仲間も言ってたわよ。小杉病院に見舞いにいこうと思ったら途中で茶碗がおちてきて、怖い思いをしたんですって。テレビ局が取材に来た、何て言う子もいたわよ。なんだか、小杉病院に近づくほど酷いとか。」
杉三「そんなに、話題になってたの?」
蘭「杉ちゃんは、テレビが家にないから、知らないのかもしれないけれど、毎日のようにこの事件は報道されているよ。一日一回は必ずどこかで茶碗が投げ落とされてくる。ひどいときは、十回以上なげ落とされる時もあるんだ。あそこの辺りって、高層ビルが立ち並んでるところだから、怪我をした人があとをたたないんだって。」
美千恵「十回とは多すぎるわね。なんだか、気味が悪いわ。誰が仕掛けたのかしら。」
蘭「テレビでは、同じ形の茶碗がなげ落とされるから、同一犯と思われているらしいけど。しかも、由緒ある茶道用の茶碗だって。」
杉三「も、もしかしたらだけど、宗教テロとか?」
蘭「あの辺りは、新宗教団体は、聞いたことがないね。あるとしたら、小杉病院だけだよ。」
美千恵「十年前にオープンしたのよね。あの病院。元々は、東京にあったのが、こっちにきたから、家族ぐるみで引っ越してくる患者さんが殺到して、大変な事になったんですって。で、その対策として、高層マンションをたくさん作ったって、私、聞いたことがあったわ。」
蘭「つまり、患者たちが投げ落としているのでしょうか?」
杉三「違うよ。患者さんたちは、みんな優しい。そんなことはしない。」
蘭「杉ちゃんは、思い込みも強いね。本来ならああいうところは怖いとおもうよ。どう頭が働いているのか、よくわからないよ。」
インターフォンが鳴る。
声「蘭、迎えに来たわよ。」
蘭「ああ、アリスか。」
美千恵「もうそんな時間?時間がたつのははやいわね。」
蘭「今日はありがとうございました。またきます。」
美千恵「はいはい、またきてね。」
蘭は、車いすを操作して、玄関に向かい、
アリスに介助してもらって車に乗る。
アリス「お休みなさい。」
杉三「またね!」
数日後。杉三の家。電話が鳴っている。美千恵が受話器をとり、
美千恵「はい、影山でございます。ああ、蘭さん?どうしたの?」
声「杉沢さんの面会許可を得るために、小杉病院に電話してみましたら、まだ鬱からは、回復していないけど、短時間なら今日か明日、面会してもいいということでした。多分、杉ちゃん、大喜びだと思いますが、予定はどうでしょう?今日ならアリスが休みなので、電車は使わなくてすみます。」
美千恵「ちょっとまって。(カレンダーをみて)ああ、何も用事はないわ。じゃあ、お願いしてもいいかしら?杉三にすぐしたくさせるから。」
声「わかりました。じゃあ、お昼前に迎えにいきます。一時に面会ができるように、」
美千恵「じゃあ、よろしく頼むわ。」
声「はい。」
美千恵は電話を切り、
美千恵「杉三、支度しなさい。杉沢さんの面会許可が出たから、今日、蘭さんと、アリスさんが迎えにくるわよ。」
縫い物をしていた杉三は、すぐ笑顔になり、
杉三「わかったよ、ありがとう!」
と、タンスの引き出しから風呂敷をだし、素早く財布などを包む。
数分後、車の音がして、蘭とアリスがやってきたのがわかる。
高速道路の混雑が心配であったが、そのようなことは全くなく、一時間もかからずに、小杉病院に着いた。
蘭「面会許可までは、まだ、二時間近くあるよ。心配しすぎたな。ごめんね。」
アリス「じゃあ、レストラン、近くで探すわ。」
と、スマートフォンをとりだすと、隣の車にのっていた、おじいさんが、
おじいさん「この病院にはレストランがあって、見舞いの人もたべれるよ。」
蘭「ありがとうございます。車いすもはいれますか?」
おじいさん「大丈夫。病院だから、だれでも、OKなようにつくってあるさ。」
おじいさんはそういって、車をはしらせていった。
杉三「親切なおじいさん、ありがとうございます!」
蘭「じゃあ、入らせてもらおうか。多分混んでいると思うけどね。」
アリス「多少待ってもいいわよ。まだ、面会時間までは、時間がたっぷりあるんだし。」
全員、車をおりて、病院に入る。
杉三「なんか、異様な雰囲気だね。僕がいってる精神科とはまるで違うよ。」
蘭「まあ、そうかもしれないね。杉ちゃんのところはもっとフレンドリーだよ。」
食堂は、入ってすぐのところにあった。幸い、満席ではなかったため、三人は席につくことができた。おそらく、外来患者と思われる人たちが食事していた。皆、年齢も性別も一見しただけではわからない。テーブルは、木でできているが、丸太に生えた、さるのこしかけのように太っているひとばかりだった。
杉三は、メニューを蘭に読んでもらって注文し、三人はカレーを食べた。
杉三「なんだか、怖い。」
蘭「ちょっと重症なひとの病院なのかな?」
さるのこしかけのとなりには、げっそりと痩せた、おじいさんやおばあさんがすわっていた。さるのこしかけたちは、無表情で、欲望のとおりにご飯を頬張って食べていたが、おじいさんや、おばあさんは、悲しみと憂いをもちながら、わざと笑顔を作っているようにみえた。
アリス「長期入院でもしているひとたちかしら?」
蘭「そうかもしれないね。」
杉三「かわいそうだね。」
蘭「えっ、どういうこと?だって家に置いておくと、大変だからここにいるのに。」
杉三「あの人たちは愛されていないよ。親御さんたちの顔を見ればわかる。みんなあの人たちのことを、疫病神と思ってる。戦時中とにたようなところがあるんじゃないかな。」
蘭「戦時中?杉ちゃん、君は戦時中の光景なんてみたことないでしょうが。」
杉三「そうだけど、似てるような気がするの。」
アリス「間引きのことかしら。アルバニアであれば、避妊の技術も普及してないから、今でも生まれた赤ちゃんを殺す家庭は確かに存在するわ。それは、口減らしをするためでしょ。杉ちゃんは、それを言いたいのかしらね。」
蘭「すくなくとも、タイムトラベルができる時代じゃないよ。だから、適当に例えてるだけじゃないかな。」
と、腕時計を見る。
蘭「ああ、もう一時五分前だ。そろそろいこうか。」
アリス「わかったわ。私はお勘定を払うから、二人は、先に病棟にいって。杉ちゃん、こんなところで、お金の勘定をさせて、もし泣いたりしたら何をされるかわからないし。」
蘭「そうだね。じゃあ、杉ちゃん、僕らは先に杉沢さんのところにいこう。今日はアリスの奢りだよ。」
杉三「ありがとう。いこうか。」
杉三と、蘭は先に食堂を出て、受け付けにむかう。
蘭「すみません、杉沢庵君の病室はどちらでしょう?」
受付「はい、A病棟の、五号室です。」
杉三「怖いひとはいるのかな。」
受付「安心してください。A病棟は、症状の酷いひとは、収用されていない所だから、怖いひとはいませんよ。病棟は五階になります。エレベーターでどうぞ。」
杉三「あ、よかった。じゃあ、行かせてもらいます。ありがとうございます。」
蘭「ありがとうございます。」
二人、エレベーターに乗り、五階へ。
五階。A病棟。エレベーターの前はホールになっており、漫画を読んだり、小説を書いたり、患者たちが好きなことをやっている。確かに、さるのこしかけのような人はいない。
看護師「こちらですよ。」
と、五号室と書いた部屋のドアを叩いて、
看護師「庵君、お友だちがきてくれたわよ。ご挨拶位しなさい。」
庵の腕には点滴があった。その腕は、腕というより棒のようである。その棒には、鯉の入れ墨があった。
蘭「庵君、こんにちは。体調はどうですか?」
庵「彫たつ先生、杉三さん、本当にありがとうございます。」
蘭「蘭でいいよ。君が拒食症になったときいて、すぐにでも会いにいきたかったけど、なかなかいけなかった。ごめん。ご両親とも不仲だってのは、彫りにきてくれた時にきいていたから、せめて、彫り師の僕だけでも、仲間だと思ってほしかったからね。」
庵「でも、先生はお体がものすごく大変じゃないですか。それに、富士からここは遠すぎるくらいだったのでは?」
蘭「まあ、妻に送ってきてもらったからね。それに、たいした距離ではなかったよ。大丈夫。」
杉三「それにしても、その体が悲惨すぎだよ。鯉の刺青が泣くよ。」
蘭「ご飯は食べているの?」
庵「はい、全粥あたりなら食べれるようになりました。でも、ここからでたら、またハンストをしたくなるかもしれません。」
杉三「 それではだめですよ。ハンストをして、英雄気分になったとしても、敵は退治できないし、自分の体だけが、弱っていくだけだよ。ハンストのしすぎで、あるけなくなったりしたら、すごく苦しいだろうから。歩けないって、本当に辛いことだからね。」
庵「杉三さんは、お母さんがいてくれるから、いいんですよ。僕は、勉強ができないやつは出ていけと何度いわれたことか。だから、あの二人が死ぬまでハンストをしようと誓ったわけで。」
蘭「ここへ来て、何年になる?」
庵「三年ですね。前の病院に、十年いたけど、院長が亡くなったからこっちに来たので。いや、でも、住めば都ですよ。やっと、同じ悩みをもっている人と出会えましたし。」
杉三「もう、ご両親も、許してくれるんじゃないかな。」
庵「そんなこと、絶対ありません。」
杉三「十三年、病院にいて、その間に反省してくれていると思うよ。」
庵「僕はあの人たちのせいで。」
杉三「いや、誰でも十年たてば、少し変わってるとおもいます。」
そこへ、アリスが、額を拭きながら入ってくる。
蘭「どうしたの?そんなにあせかいて。」
アリス「いまね、B病棟に入り口を間違えてはいっちゃったのよ。そしたら、蜂の巣をつついたような大騒ぎだったわ。なんか、若い患者さんの家庭内暴力の報いとして、お母様が自殺されたんですって。その患者さんが大暴れして。人間とはおもえなかったわ。あの声は。」
杉三「死んでからわかったんじゃ、遅いんだよ。」
蘭「なんとかして、彼にもハンストをやめてもらうようにしないと、おんなじことがおきてしまうから。」
アリス「黙って耐えるのが、日本人だというけれど、こういうときは、何の役にもたたないわね。時代が変わったわ。」
庵は、黙り混んで何か考えていた。
看護師がやって来て、
看護師「庵君、点滴どう?あたらしいのにつけかえよう。」
蘭「僕らも、そろそろ帰ろうか。」
アリス「そうね。明日は仕事だし。」
庵「遠いところをありがとうございます。また、連絡します。」
杉三「楽しみにまってるよ。ひとつだけ、忘れないでね。もう一度いうけど、死んでからわかったんじゃ、遅いんだよ。」
蘭「さあ、帰ろうか。」
アリス「あたし、車を出してくるから、二人とも正面玄関に待機してて。」
蘭「わかったよ、じゃあ、お大事にね。」
杉三「死んでからわかったんじゃ、遅いんだからね。」
二人、車いすを操作して病室を出る。
アリス「お大事に。」
と、二人のあとを追っていく。
正面玄関
病院のとなりには、高層マンションがあった。太陽は西に少し傾きはじめていた。
蘭「やっと全粥か。まだまだ序の口だよ。」
杉三「心って一番難しいのかも。」
蘭「ほんとだね。」
と、そのとき、二人の目の前で、ガシャーン!と何かが割れた音がする。正面玄関の近くに警備室があり、警備員が飛び出してきて、
警備員「お怪我はありませんか!」
しかし、杉三も蘭も、奇跡的に無傷であった。
警備員「またですよ。何個落としたら気がすむんですかね、犯人は。」
蘭「よく、ここに投下されるのですか?」
警備員「はい。これで五回目ですよ。しかも、今日一日で。患者さんたちもたまったものじゃないとおもいますよ。」
蘭「確かに隣は高層マンションですが、不審な人物などの目撃などはないのですか?」
警備員「うーん、二十階建てですからね。警察の方も、ひとが多すぎで、なかなか調査ができないようなんですよ。しかも、この病院の回りが、最大の標的になっているらしく、一番投下数が多いんですよ。」
杉三「女のひとでしたね。」
警備員「だれがですか?」
杉三「落とした人です。本当に小さな声なんですけどきこえました。おりゃあ!といいながら投げ落としていました。」
警備員「あなたは、千里眼なんですか?虚偽の証言は、」
蘭「いえ、彼は、僕らとは違う感覚をもっています。はずれたことは、ほとんどありません。警察をよんで捜査してもらってください。」
警備員「わ、わかりました。」
高層マンションの一室。
ある女性が、一人でテレビを見ている。傍らに、青年の写真。おそらく息子だろうか。
テレビの近くに大きな茶箪笥があった。高級な茶碗がいくつもおいてある。つまり彼女は茶道をやっていた。
ふと、子供の声がした。なにか、食べ物でも、お母さんにねだっているらしい。
思えば長男は、とてもおとなしく、茶道の稽古も、真面目に取り組んでいた。しかし、次男のほうは、いわゆるガキ大将で、稽古などそっちのけだった。
回想
担任教師「お母様、もっとしつけをしっかりしてくれませんか。この間の修学旅行のときだって、庵くんが、新幹線の中でふざけたことで、駅員さんにしかられてしまいました。お兄様を後継者にしようというのはよくわかりますが、弟さんのしつけもしっかりしてくださらないと。」
沙羅「でも、庵も素直ないい子なんですから、この学校にいさせてくれませんか!」
担任教師「でも、ここまで他の生徒に迷惑をかけているのですから、考え直してください。無理なら、、、この際ですから、退学してください。」
回想、沙羅のいえ
沙羅「庵、ちょっときなさい。」
庵「なんだよ。」
沙羅「あなた、新幹線の中で騒いで、駅員さんにしかられたそうね。お母さんには、そんなことしらせなかったのに、なぜ言わなかったの!」
庵「、、、。」
沙羅「ちゃんと話なさい!そういう汚い手は、使うもんじゃありません!」
庵「、、、。」
沙羅「叩くわよ!」
庵「うるさい!」
と、側にあった包丁を手にもち、
庵「殺してやる!」
と、母のあとをおいかける。
道路
沙羅は、横断歩道を横切ってにげる。しかし、庵が近づくと信号は赤になってしまう。庵は無視して走るがそこへ白バイに乗った巡査と衝突し、その場で逮捕された。数ヵ月後、拘置所の食事を全くとらないため、彼は精神病院に送致されていった。
沙羅は、被害者として堂々と振舞い、すぐに茶道の稽古を再開した。多少驚くものもいたが、人の噂も七十五日。すぐきえてしまった。
ところが、約一年ほど前のこと。
朝、智樹が起きてこない。学校へいけと、智樹の部屋のドアをたたいても返事はない。思いきって開けてみると、右手に便箋をもち、左手には農薬の瓶を持って、息子は死んでいた。
「僕が、弟を殺しました。僕が茶道をしていなければ、弟は生きていられたでしょう。僕は生きていて失格です。本当にごめんなさい。」
沙羅は、思わずそれを破り捨てたくなった。しかし、口許にてを当てても、智樹はすでに息耐えていた。
ガチャン、と、ドアが開いて、夫が帰ってきた。夫敬之は、妻沙羅の様子を見て、ため息をついた。
敬之「智樹はもういないんだ。もうすぐ一年たつんだから、いい加減にやめなさい」
しかし、沙羅は動こうとしなかった。
沙羅「こうしなきゃ、智樹をわすれることはできないのよ。庵は安全なところにいっているからいいけれど。」
敬之「そんなこといって、智樹は戻ってこないぞ。それに、庵も俺たちの息子じゃないか。この際だから、お前と一緒に茶道を習うなりしてみろよ。」
沙羅「精神科って、本人にたいしては、すごくサポートするのに、なぜ親にはなにもないのかしらね。」
敬之もへんじに困ってしまう。
沙羅「なにか言ってくれたらどうなの!なんで黙るのよ!」
敬之「わからないものは、わからないんだ!俺だって、ああなるとは、思ったことなんて一度もない!」
沙羅「父親でしょ、何で智樹を止めなかったの!父親なんだから、こうしろって、強い味方になってあげればよかったじゃない!それなのに、毎日仕事仕事で、智樹と会話さえしなかったじゃないの!」
敬之「当たり前だ!お前が智樹に塾に行かせたり家庭教師をつかせたり、金のかかることばかりしていたからだ!お前が金がないないというから、俺は一生懸命働いて来たんだよ!」
沙羅「そう、あたしのせいなの!あたしが世界一ダメな母親だからでしょ!どうせね、あたしが悪いとしかあなたは思ってないんでしょうが、他の子の親だって、塾くらい行かせていたわよ!そんなに、そんなにあたしのことが嫌なんて、」
と、茶箪笥をバン!とあけ、最高級の茶碗をだし、
敬之「よせ、やめろ!それは、記念品として買ったものじゃないか!」
沙羅「あんたなんかしんじまえ!あんたに食べてもらう権利はない!出ていけ!出ていけ!出ていけええええ!」
と、いいながら、茶碗をベランダからそとへ放り投げる。
道路
杉三が不意に立ち止まる。
蘭「どうしたの?」
杉三「出ていけ、出ていけって声がしない?」
アリス「あたしはきこえないけど?」
杉三「聞こえるんだよ、女の人の声で。」
蘭「あ、杉ちゃん、危ない!」
杉三が振り向くと目の前に何か落ちてきた。陶器が割れた時のガシャンという音。
蘭「怪我はなかったか?」
杉三「これ、」
と、破片をひとつ拾い上げ、
杉三「茶碗だ。茶渋がついてるし、かなり使い古したのかな?色があせているよ。」
蘭「怪我はしていないのか。そっちを先にいってほしいんだけどな。」
杉三「柄からしてみて男性用か。」
蘭「でも、空から茶碗が落ちてくることは、絶対にないよ。だから、誰かがおとしたんだと思うんだけどね。」
杉三「すごく高級な茶碗だね。恐らく備前だよ。」
アリス「あら、あの高級な茶碗?テレビによく出るけど。」
杉三「テレビはきらいだよ。備前でも、高級品だから、きっと位の高い人の茶碗だね。」
蘭「杉ちゃん、回りをみてごらんよ。そんな高級な茶碗を持つようなひとはいるのかな?もし、備前の茶碗であれば、持っているひとは大きなお屋敷とかにすんでいるだろうし、むやみに放り投げることはしないとおもう。でも、ここにあるマンションは、賃貸マンションでしょ、だから、そんなお茶碗を持つ人なんて絶対にいない。」
杉三「いや、どうかな。もし、」
蘭「もし、なに?」
杉三「これから、持っていく人だったら?」
蘭「どういうこと?杉ちゃんの発言はたまに意味がわからなくなるから。」
杉三「持っていくひとは、しょっぱなから、粗末な茶碗を持つのかな。誰だって、初めてであれば、うんといいものを持つと思うよ。こういう芸の道にいくひとは特に。」
アリス「杉ちゃんの推理はよくわかるわ。女には、そう言う気持ちもわくもんなのよ。初めてのものほど、記念にしたくて、高級品を持たせるのは、確かによくあることで、あり得ないことじゃないわ。」
蘭「茶道をやっていたというわけか。そして、これを投げたのは女の人。」
杉三「出ていけって言っていたのも女の人だった。あ、また、、、。」
蘭「つまりこのあたりにすんでいる人ってことか。」
アリス「危ない!」
と、杉三の車イスを急に後ろに引く。同時にまた、陶器が落ちるガチャンという音。
アリス「杉ちゃん大丈夫?」
蘭「怪我は?」
見ると杉三の額には血が流れている。
杉三「やっぱり女の人だ。」
どうやら自分の怪我に気がつかないらしい。
アリス「怖いわ。早くかえりましょうよ。何かあったら遅いわよ!」
声「待ちなさい!どこにいくの!戻らないとまた、保護室行きになるのよ!」
杉三「だ、誰の声だろう!」
声「うるさい!」
蘭「庵くんだ!」
杉三が振り向くと、少年が病院の正面玄関から飛び出してくる。彼は、驚くほど俊足で、タワーマンションのエレベーターに、素早くのりこんでしまう。看護師が捕まえようとしたが、エレベーターのドアは閉まってしまった。
杉三「僕らも追いかけよう。」
蘭「杉ちゃん、ちょっと待て!」
アリス「いいわ、私がやるから!」
杉三の車イスを全速力で押し、
アリス「看護師さん、私たちもいかせてください。」
看護師「あなたたちは、」
杉三「僕らは庵くんの見舞いにきました。立て続けに落下物を落としたのは、彼のお母さんだ。彼は、それを阻止しにいきました!」
看護師「あなたは、どうしてそんなことが?」
杉三「わかりません。直感です。お願いします、いかせてください。」
アリス「私からも、おねがいします。」
小さな音が聞こえてくる。なにかを叩いているのだが、はるかに高い位置でなっているようで、あまりよく聞こえてこない。
杉三「やっぱりそうだ。体当たりしてるんだ!」
看護師「体当たりですって!彼は、拒食のために、骨がかなりよわってるの。止めにいかなくては!」
と、エレベーターに乗り込む。アリスが杉三の車イスを押し出す。車イスはエレベーターに自動で入る。と、同時にドアがしまる。
二十階。ドンドンという音は次第につよくなっていく。そのなかには泣き声が、、、。
声「どうして伝わらないんだろう。何で僕は病院で過ごさなければならないの!医者のせいだし、そっちにもある。」
杉三はエレベーターを降りる角部屋の前には、少年が一人座っていて、、、。
杉三「庵くん。」
庵は杉三の方を見る。その顔は悲しみと憎しみが混ざっている。
杉三「つらかったね。大人の道具にされてしまって。」
庵の両目から涙が滝のようにながれ、みるみるうちに顔を流れていった。
杉三「僕は、君に鯉を彫ってくれた蘭先生の友達なんだ。蘭先生、今、すごく心配しているんだよ、君のこと。でも、蘭先生ではなくて、本来一番心配してくれなきゃいけない人が、あんな風にかんしゃくを起こして、お茶碗を投げるようでは、君がハンストをするのもよくわかる。」
すると、バン!と、戸が開いて、般若のような顔をした女が、現れる。
沙羅「庵!」
庵は母のほうをみる。
沙羅「あんたは、病院にいればいいだけなのに!」
杉三「ちょっと待ってくださいよ!彼は、貴方の息子さんですよね!こんなガリガリにやせて、ハンストなんて、本来必要ないと、おもう間柄ではないじゃないですか!」
沙羅「ハンスト?ダイエットのしすぎではないの?」
庵「僕は、智樹兄さんのような体格にはなりたくなかったんだ!」
沙羅「仕方なかったのよ!受験前なんだから!」
庵「兄さんは、なくなる前にこう漏らしたことがあった、受験なんかしたくない、お母さんの付属品なんて嫌なんだって!」
沙羅「そんなこと、智樹は口にしたことはなかったわ。」
庵「あんたが、知らなすぎただけだよ!兄さんは、あんたの期待から逃げたくても出来なくさせられて自殺したんだから!あんたの、大学に落ちたときの顔を二度とみたくないって、よくいってた。」
杉三「お兄さんのことだけじゃないよね。君のことも、あるんだよね。」
庵「それは、思ったことは、」
杉三「いや、ある!その顔がそういってる。この際だから叩きのめしてやりな!」
沙羅「なによ、あなた。顔から血がでてるわよ。」
庵「お母さんは兄さんのことばっかり気にして、僕のことは何もしてくれなかったじゃないかあ!兄さんには、あんなに優しかったのに、何で僕には、鬼のようにしゃべっていたんだ!」
と、立ち上がろうとしたが、たつことができない。看護師がいった通り、骨や筋肉がよわってしまっているのだ。
庵「それが一番辛かった。答えろよ!」
沙羅はドアから飛び出し、ベランダから飛び降りようとするが、杉三が手だけではって、彼女の両足をつかむ。
杉三「逃げちゃダメだ!庵くんの質問への答えをだすまでは!それに、これまで、茶碗を落として、他の人に迷惑をかけたんだから!」
沙羅「どうしたらいいのよ!」
杉三「他に考えないのかよ!」
沙羅「あたしだって、わからないわよ。おんなじような、扱いしかなかったんだから!あたしの父と母だって、三つ年上の姉のことばかり誉めて、あたしのことはなんにも言わなかったんだから!あたしが、どんなに勉強したって、誉めてなんかくれなかったわ!あたしは、そういう扱いしかなかったから、他に具体例なんかなにひとつなかったの!」
敬之「沙羅、お前はどうしてそういうことを、伝えなかったんだ?結婚する前にもいわなかったよな。そんなこと。」
庵「お、お父さん、、、。」
敬之「もちろん、息子一人を死なせたのは、父親である俺にも責任はある。しかし、打ち明けてくれれば、何か手を出せたかもしれないじゃないか。」
沙羅「そんなこと、思い付かなかった。私が子供の頃は、一生懸命仕事している人にたいして、不満を漏らしてはいけないと言われていたから。」
庵「でも、結婚したんだろ?それなら、また違う方法に、と、切り替えられなかったのか?なんで、そんなにながく隠していたんだよ!」
杉三「君は思春期の真っ只中だから、そうかんがえているんだろうが、人間は、歴史からでは絶対に学べないよ!あとになると、それがよくわかるの。」
庵「僕は、僕はどうしたらいいんだ。これから、どうやっていきていけばいいのか。」
杉三「歴史から学ぶのはできないが、感情からは学ぶことができる。その絶望を、うまく使っていけばいい。それだけの話だよ。」
沙羅「あなたって、不思議ね。」
杉三「僕のこと?」
沙羅「そんな風に、人生を読めるなんて。普通の人ができることはできないのに。」
杉三「いや、ばかのひとつ覚えです。僕は、偉い人たちから聞いたことを勝手に覚えているだけです。」
沙羅「すごいわ。私なんて、上の子はなくして、したの子は、追い出して。だめな母ね。」
杉三「したの子はここにいるし、まだ生きています!勝手にしないでくださいよ!」
沙羅は、後ろを振り向く。
したの子は、目にいっぱい涙をためて、
庵「お母さん、本当に、僕が生まれてきて、ごめんなさい!」
杉三「ほら、抱いてやりなよ!謝んなくて良いんだって、いってあげてくださいよ!早く!」
沙羅は、泣いている庵の顔をみて、すこし、手を伸ばした。すると、自動的に彼の体を抱き締めていた。
沙羅「ごめんね、、、。」
看護師が、救急隊と共に近づいてくる。
沙羅「ごめんね、、、。こんなだめな親だけど、もう一度、息子になってくれる?」
庵「もう一度何て言わないで。はじめっからそうなのに、おかしいよ。」
ふたりは、いつまでも泣きはらす。皆、涙が止まるまで待つ。
沙羅「お母さん必ず帰るから、すこし待っていてくれる?」
庵「いいよ、いいよ。いくらでもまつよ。僕は、その間に、ハンストをやめるから。」
敬之「よかった。ありがとうございます。」
と、杉三たちに頭を下げる。
看護師「庵くん、病院にもどろうか。」
庵「わかりました。ハンストをやめられるように、頑張りますから!」
救急隊員が、彼を背負い、看護師と一緒に、エレベーターをおりる。
敬之「いこうか。」
と、沙羅のてをつなぎ、再びやってきた、空のエレベーターに乗り込み、静かに外へでる。
外へ出ると、もう日は沈んでいた。人間が作った光が彼らを取り囲んでいた。
外はすごい人垣で、新聞記者などの報道陣が、待っていたとばかりに、二人にむらがり、質問をあびせるが、二人は黙って通っていく。
その人垣のなかにいた、蘭とアリスは、動けなくなっていると思われる、杉三を探しにエレベーターに乗り込む。このマンションの住人たちは、物騒だとして、出ていってしまっていたので、他の部屋にはだれも
いなかったのであった。
翌日、蘭の家。
テレビは、どのチャンネルも、落下物事件の犯人逮捕についてのニュース一色になっている。
アリス「事件をしないと、親子関係がわからないなんて、なんか、不思議な時代になったわね。」
蘭「大事なものは、はっきりわかっている時代じゃないな。」
アリス「まあ、おたがいがんばりましょ。」
蘭「そうだね。」
インターフォンがなる。
杉三の声「いの、買い物いこ。」
蘭「わかったよ。じゃあ、いってくるね。」
と、買い物かごを膝におき、外へでていく。アリスは、食事の片付けをして、ピアノの稽古場にでかけていった。
杉と蘭のシリーズ その壱 増田朋美 @masubuchi4996
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