第9話

 日曜日の朝、姉さんににやにやされながら出かけた。本当にどうしようもなく憂鬱だった。

 相手の人は大きな電機会社の社員。いい大学を出てて、恰幅がいい。そんでもってあたしのわからないパソコンの話や、大学の話をする。ちっとも面白くないし、すごくお仕着せがましくて自慢しいの人。嫌い。

 あたしは謙虚でひねくれてても繊細な人が好き。辛口なくせに相手のことをいつも気にして言葉を選ぶ人が好き。

 もう嫌だな、帰りたいって思った時、

「穂乃香!」

 蒼太君の声。聞き間違い? いや、蒼太君だ。ロビーのソファに座って話してるあたしたちの前に、蒼太君が立ちはだかった。

「穂乃香、行こう」

「え」

 蒼太君はあたしの腕をとって立ち上がらせた。

「なんだ、おまえは」

 相手の人が起ちあがる。

「お前こそなんだ。穂乃香は俺の彼女だ」

 鼻の頭が痛くなるほど熱くなった。涙が滝のようにあふれる。

「ごめんなさい!」

 あたしは相手の人に謝って蒼太君と走り出した。

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ツンデレなあいつ 藍上央理 @aiueourioxo

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