ペットゾンビの飼い方!

ちびまるフォイ

町の人たちはみんなゾンビ好き!?

「はぁ、ゾンビ飼いたいなぁ」


ネットを探しているとゾンビが売っていた。

これはとすぐに注文してから気が付いた。


「ゾンビってどうやって運ばれるんだろう」


ペットゾンビが宅配で来るのだろうか。

それとも、ペットゾンビが自分で歩いてくるのか。


なんにせよ時間がかかりそうだ。


などと思っていると、風切り音が耳に入った。


――ヒュー―。


どん、と何か叩き落ちた音がしたので庭を見てみると

俺が注文したペットゾンビが倒れていた。

その頭上には飛行機が飛んでいる。


「ま、まさか! 空から落としたのか!?」


いくら死なないとはいえ、大丈夫なのか!?

慌ててペットゾンビにかけよると、何事もなく立ち上がった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛……」


「おお! すごい! さすがゾンビ!」


ペットゾンビはよたよたと歩きながらうめき声をあげている。可愛い。

このなんともいえないトロさがたまらない。


「よしよし、今日から家族になるからな、よろしく」


「あ゛あ゛あ゛」


待望のペットゾンビを迎えての華々しい生活がはじまった。

ペットゾンビは扱いが楽て、食事や排せつも不要。

飼いやすさでいえば犬や猫よりもずっと簡単だ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛」


「よしよし、それじゃ今日は一緒に寝ようか」


知能はないが感情らしき断片は残っているのが萌えポイント。

歯はすべて抜かれているので、噛みつかれる心配もない。




充実したペットゾンビとの共同生活だったが、

ある日町の人たちが各々の武器を持って家をぐるりと囲んでいた。


「おい! イカレ野郎! 出てきやがれ!」


「いったいどうしたんです? こんなに人を集めて」


「どーもこーもあるか! お前ン家のゾンビが怖くて

 こっちは夜も8時間しか眠れないんdな!」


「大丈夫ですよ。このゾンビは噛みつきませんし、それで感染もしません」


「そんなこと信用できるか!!

 いいからゾンビを差し出せ! ぶっ殺してやる!」


「彼女は僕の大事な家族です!」


町の人たちは恐怖から完全に殺す気でいる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛……」


「大丈夫だよ、心配しないで。俺がなんとかするから」


どうすれば町の人にペットゾンビの安全性をわかってもらえるだろうか。


「そうだ! 思いついたぞ!」


「おいなにしてる! さっさとゾンビを出しやがれ!!」


町の人との押し問答が続く中、頭上に飛行機が飛んでいった。

やや遅れて風きり音が聞こえてくる。


ヒュー――……ドン!!!


「うわあああ!!! ぞ、ゾンビだぁ!!」


いましがた購入した新しいペットゾンビの届け先を、

町の人たちがいるど真ん中に指定した。


町の人たちはすぐに武器を構えるが、まるで襲わないゾンビを見て考えを改めた。


「あれ……噛みつかない……?」


「これでわかったでしょう。ペットゾンビは安全なんです。

 噛みつかれて感染することはありません」


「私たちは恐怖のあまりなんてむごいことをしていたんだろう。

 小動物の虐待は許さずに、害獣と思えばどんな残酷なこともできるなんて人としてありえない」


「みなさんの人数分、ペットゾンビを購入しました。

 ペットゾンビの良さをもっとわかってください」


「ああ、そうするよ」


小さい女の子ゾンビや、スタイルのいいゾンビなど多種多様。

みんな思い思いのゾンビとの共同生活へと戻った。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


「うん、もう大丈夫だよ。ゾンビの良さがわかってもらえたから。

 これでこの町は安全さ」




数日もすると、あれほど嫌がっていた人たちも優しい顔になっていた。


「いやぁ、ペットゾンビはいいものだね。

 一緒に生活しているとどんどん愛おしくなってくる」


「そうでしょう。わかってもらえてよかったです」


「噛まれる危険もないし、知能も低いから襲われないし最高だ」


「性的接触さえしなければ感染しませんしね」






俺の一言で町の人の顔色がかわった。


「ちなみに、解毒薬とかはあるのかな?」

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