フードファイト学校の校長
ちびまるフォイ
こんな生徒じゃ合格はむりぃぃ!
「君にフードファイト学校の校長をお願いしたい」
上司から言われて赴任した先は、食事偏差値が底辺の学校だった。
「うちは昔から小食な子が集まっているんです。
だから飯受験でもいい結果が出せなくて……」
「なるほどね。子供が集まらなくなって資金繰りもできないと」
そこで俺のような優秀な人材を校長に抜擢したわけか。
来るべき飯受験に向けて、この生徒を変えてやる。
「私にまかせてください。必ずや飯成績を上げてみせます」
飯受験ではたくさん食べれば、いい学校に入れる。
この学校ではとにかくたくさん食べることを教えなければ。
「いったいどうすれば、生徒の食事量を増やせるか……」
授業として配膳される給食を見ながら考えた。
給食のほとんどが残されている。
「そうだ! 給食を腹いっぱい食べたくなるようにすればいい!」
周囲の反対と、借金をしてまで一流のシェフを雇った。
それまで食事量を増やすためだけの給食が、一気に彩り豊かなものとなった。
「これで生徒もお腹がいっぱいだろうと喰いたくなるはずだ!
そして毎日大量に食っていけば、食事量も増えて受験で合格だ!」
マラソン選手が毎日たくさんの距離を走ってスタミナをつけるように、
飯受験生にも毎日たくさん食わせれば成績もあがる。
そのうえ、ここでの食事は超一流。きっと食べるはずだ。
「こ、校長! 大変です!!」
「ふふふ。どうした? 成績が上がりすぎてやばいのか?」
「いえその逆です! 赤字が増えています!!」
「はぁ!?」
給食を見てみると、シェフを雇う前と後とで残される量は変わらなかった。
金をかけてこれだけ美味しい食事を提供しているというのに。
「いったいどうなってる!? なんでみんな食べないんだ!?」
「いくら美味しくても、毎日レストラン通いたくはないからでしょうか……」
「くそ! いったいどうすればいい!!」
食事の質を上げても残される。
これでは食事量の底上げにつながらない。
どうすれば……。
「そうだ。いっそもう食べさせなければいい。
受験当日まで腹を空かせまくって、受験日にたくさん食べさせれば……」
「校長!? 本気ですか!?」
「成績上がっていい学校に合格してもらわないとどうしようもないんだよ!!」
強引な方法ではあるが確実に有効なはず。
校長権限で生徒への食事提供をぴたりと止めて、飢餓寸前まで耐えさせる。
ついに飯受験当日。
「校長先生、今頃生徒はどうしているでしょうか」
「あれだけ食事を抜いたんだ。今頃、獣のように受験飯を喰い漁っているさ。
ほかの受験生の飯まで食ってたりしてな。ははは」
「それだけたくさん食べていれば、いい学校に入れるでしょうね」
教頭と余裕ぶっこいた会話をしていると、
受験会場の様子を見てきた先生が青ざめた顔でやってきた。
「校長先生! 逆効果です! 受験生は全然食べてません!!」
「えええ!?」
慌てて受験会場に向かうと、うちの生徒の食事は進んでいなかった。
「な、なんでこんなことに……」
「お腹を空かせすぎたんです……。
空腹であることさえも慣れて普通になってしまったんです……」
「そ、そんな!」
隣の受験生はバクバク食っているその横で、
ヤギのように小さい口でちびちび食べている生徒たち。
「もうだめだ……この受験は食事の量で合格が決まるのに……」
俺はひざから崩れ落ちた。
その後、合格者発表会が行われた。
「校長先生、見に行かないとダメですよ」
「いやだいやだ。どうして、どこにも合格してないのがわかってて
わざわざ見に行かなくちゃいけないんだ!」
「あなたが校長だからですよ。現実を受け止めてください」
「うう……」
しかたなく合格発表の掲示板に向かった。
案の定、うちの生徒はどこの学校にも合格していなかった。
あんなに食事偏差値低い生徒を拾ってくれる
懐の深い学校なんてあるわけないんだ。
「はぁ……やっぱり……もううちの学校は廃校だ……」
「あの、小食高校の校長ですか?」
「ええ、そうですけど」
「実はあなたの生徒さんをぜひうちで雇いたいと思っています」
「ほ、本当ですか!! どこの学校ですか!?」
「うちはNASAです。宇宙空間では食事が限られています。
少ない食事で生活できる人材を探していたんですよ。
まさにあなたの学校の生徒さんがぴったりです」
フードファイト学校の校長 ちびまるフォイ @firestorage
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