元勇者は魔王になる

@tsumiki1234567

第1話 プロローグ

「帰ってしまうのですか?」


目の前の女の子は今にも泣きそうな顔で俺にそう問いかけた。


「魔王を倒すために召喚されたからな、魔王がいなくなった今この世界には存在しちゃいけないらしいんだ。ほんとなら魔王を倒した時点で元の世界に戻される決まりのところを神様がおまけしてくれて、こうしてエリーにお別れを言いに来れたんだよ」


「勇は悲しくないんですか?もう二度と会えなくなってしまうんですよ?なんでそんな平気な顔をしていられるんですか?」


エリーは悲しみと怒りが混じったような声で俺に詰め寄ってくる。


「二度と会えないっていうのは大げさじゃないか?死ぬわけじゃあるまいし」


「大袈裟じゃありません。世界が違うんです。

もう勇とは会えなくなるんです。」


「馬鹿なのかお前?」


「馬鹿とは何ですか?私は勇と会えなくなるのがつらいんです」


こいつは何をそんなに心配してるんだか。世界が違うから二度と会えない?


だったらそもそも…


「俺たちがもう一度会うことが無理だっていうなら、そもそも俺たちは出会ってないだろうが。」


「え?」


エリーはきょとんとした目で、俺を見つめる。


「考えてもみろよ。元の世界に帰るから二度と会えないなんておかしいだろ。一度来れたんだから、いつかまた来れるだろ?」


「だからさ、今生の別れじゃないんだ。笑って見送ってくれよ」


そういうとエリーは涙をぬぐった。


「わかりました。別れの言葉は言いません。

もう一度会うその日まで私はあなたのことを思い続けています。」


「それじゃ、またな」


「はい、お体にお気を付けください」


そうして、俺のこの世界での物語は終わりを迎え、平凡な日常に戻ることになった。


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