第6話 罪

 彼女が目を覚ますと知らない場所。

 何も見えないの、音もない空間。

 少しして誰かが来る、

(やっと起きたか、人が倒れてると聞いて駆けつけてみればお前と一つの瓶が落ちててな、身元調査の為に一回病院に連れて行ったんだがまぁ調べて見ると重大な事が発覚して今ここに入って貰ってるわけだがあの瓶中身…知ってたよな?)

 彼女は少しして全て思い出した、人魚から貰ったガラス瓶の中身、人魚の涙を飲んだ事、あの後の記憶がない事、逢魔が時の事、人ならざる者と出会う時間、


(記憶にある見てーだな、お前さんの事で今上層部がお祭騒ぎみたいに毎日会議だ。もう少ししたら罪を問われる、それまでここにいてくれ怪物さん。)

 そうすると一人の男は階段を上って行き電気が消された。


 彼女が環境を変えるために得た物は人ならざる者になった事。

 人間ではあり得ないほど美しい銀色の髪に紅い瞳、見た目はその二つしか変わってなく、ただ人間ではあり得ないくらい冷たい身体になっていた。

 彼女は絶望した、悪いのはいないものとしてきたこの世界で、自分の周りにいた人間で、ただ少しだけ周りの環境が変わると思い安易に飲んだ自分自身に…

 何度も後悔し、絶望し、泣き崩れ、死にたいと思うけど死ねない。

 人魚の一部、不老不死。

 前と変わらぬ環境一生孤独を背負っていく。前と違うのは死ねないという罪。


 多分数日がたっただろうこの前と同じ男がきて半年ほど経った後死刑になるらしい。

 彼女にはどうでも良かった、もう何に絶望すればいいかもわからずただ時間が経つのを暗い闇で待つ。

 あれから何時間おきに二、三人の看守が交代で一人ずつ見張りに来る様になった、最初は無関心だった彼女も元々あった人と接したいという欲が出てきて次第に話す様になる。

 看守と話す時間は、たわいもない話だけど彼女にとっては人間の頃もあまり感じられずにいた何気ない普通の時間だった。

 その日も話終わり電気が消される、真っ暗中彼女は静かに泣く、あの辛い時期に誰かに話せていたら何か変わっていたのかもしれない、見知らぬ誰かでも良い、少しでも話せていたら何か変わっていたかもしれない、そんな後悔を背負いながら。

 何ヶ月経ったかわからない頃後2週間後に死刑が迫っていると聞かされる。

 もはや1日の感覚も狂っている彼女、彼女は最後に願い事をした。

 歌を歌わせて欲しいと、彼女が経験してきた人生、絶望、後悔同じ様な環境にいる人に気付いて貰うために歌に託したいと。

 執行日1週間願い叶ってすごい高い屋上で歌わせてもらえることになった、見張りでよく話を聞いてくれた看守が二人。

(何時まで歌っていいの?)

 彼女は聞いて見る

(気のすむまでどうぞ。)

 看守の人が言う、話してて聞いたけどあの人は看守の中でも偉い人らしい、話してる時もよく私の事を聞いてきたりして上の人に報告してるって行ってたかな


 そんな事を思いながら私は少しして歌い始めた。

 メロディも何もない、ただ感情を言葉にして歌う。

 苦しみ、悲しみ、孤独、絶望、あらゆる感情が押し寄せる、何曲か歌った時いきなり大っきい人達が現れて歌うのを手伝ってくれるって言ってくれた。

 彼女はびっくりしながらも周って人達に協力してもらい最も伝えたい感情の歌を歌った。

 辛い環境の中でも人は一人では生きてけない、辛い時には見知らぬ人でも良いから誰かに話して見て?きっと助けてくれる人はいるから。今の環境が全てではないよ、きっと君の中の檻から出れるときは来るはずだから、私は罪を犯してしまったけど、どうか届いて欲しい、あなたは一人ではないと。

 日本中の人に届けたい苦しんでる人に向けて、そんな願いを込めて…


 歌い終わった後彼女は周さん達にお礼を言い、少しだけ夕日を眺めてからあの場所へ戻された。

 罰せられるまでの時間はそんなに長く感じ無かった、後悔も無く自分の思いを伝えられたからだと思う。

(時間だ、ついてこい。)

 一番最初に会った看守について行く。

(最後に聞きたいんだが怖くはないか?)

 彼女は首を横に振る。

(そうか、もし生きられるとしたら生きたいか?)

 彼女は頷いた。

 彼女の顔には涙の跡がなく笑顔だった。

 それは罰を受ける時でさえも…

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