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 その異能は、俺が一歩店内に入り、クレーンゲームの脇をすり抜ける時からワンワン叫んでいた。

 店内に入った瞬間、共感が俺を襲った。

 キュレーン・グェーむにひゃさみゃれたみゃみゃうぉれんれんはしゅしゅんでぇうぃく。

 しょしゅしてぇみゃたんあをちゅらにゅくにょうないちゃみぃいいいにたえにゃがら、しょのきょうううきゃんにょひょうきょうをみゅりゅ。

 あちゃまやがう割れぇしょうに痛い。

 異能ぎゃうぃるびゃしょはうわかっている。

 うぉれは、にゃんときゃ、エスカぇ~ターにぃ乗りぃい、にきゃいへえ。ぢょんぢょんすつうぎゃひどくにゃる。

 二階にとぉどぉくぅううやあ、うおぇれはうぉ思ももいきっリ異能を奴に向けた。


 全ては一気に変わった、俺と奴の間だけ。


 奴は、二階のシンプルでやや時代遅れの安い金額で楽しめるパズル・ゲームの前で座っていた、が俺の異能が奴に届いた瞬間。

 奴はゲーム機に対し座り込み猫背だったのが、頭を抱えエビ反りになった。

 コントローラーの周りには、50円玉が見たことないぐらい散らばっている。

 奴は、どこにでもいる、、、。いや違った。

 年齢は四十手前、男。だが、生活の苦労をしていない青白い肌。髪も髭も伸び放題。典型的な引きこもり。服装は、超安値の全国展開のカジュアルブランドのパーカー。

 上から下まで、そこのカジュアルブランドのマネキンがそのまま歩いてきたかと思うぐらい、上から下までそのブランドを身に着けている。靴は海外ブランドの一番安いスニーカーブランド名プラス、確実メイド・イン・チャイナ、量販店で四千円以下確実。

 このまま、反撃の間を与えずに奴を仕留めないといけない。

 奴がエビ反りになっている間に、、、。

 俺は異能を更に強める。奴の心臓を思いっきり動かし、血液を頭に血圧の何倍もの力で送り込むのだ。

 できれば、百倍ぐらい、いや死ぬぐらい、それも確実に。

 ゲーム機の画面では、どんどんカラフルなボールが上から落ちてきて積み上がっていっている。

 奴は、大きく、口を開け声にならない咆哮を上げている、が、徐々にゆっくりと俺の方向に顔を向けだした。

 この瞬間が一番恐ろしい。

 異能の力など、誰もそんなに変わらない、そう普通の人の力がそんなに変わらないのに殺人が過去も現在も行われているように、、。

 この男は、異能抜けであると同時に、もう一人の俺、異能なのだ。

 幼いころに自分の力に気がついたことだろう。人と違うことにも気づいたのだろう。優越感をもったか、劣等感を持ったか、それとも疎外感か。そして強烈な痛みを伴う共感から、同じ異能の誰かと話す楽しみを少しは得たかもしれない。

 どうして、異能抜けをおかしたのか、自分の意志なのかそれとも自然とからだがそうなったこのおれでも憐れむべきタイプなのか。

 画面ではカラフルなボールがまた一段積みあがり、天井に触れそうだ。 

 ゲームオーバーの画面をこの男は見られないだろう。

 俺は、更に奴の心臓の筋肉の収縮の早め締め上げる強さをあげる。もっと、もっと、もっと、もっと。

 奴の顔が完全にこっちを向いた。

 目玉は充血し真っ赤。血の涙を両目から流している。髪の毛の毛穴。潰れた元ニキビの跡、鼻の穴、歯茎はぐき、頭部のすべて穴という孔から血を流している。壊血病になるとこんな感じなのか、、。 奴は、苦痛に歪んだ叫びを無音で発しながら、獣のように無言の咆哮を上げ続けている。

 それともこれは、俺だけが見ている幻覚なのか。

 こいつは、己の心臓が送り出す血液で、脳が破壊され、死んでいくのだ。

 ゲーム機での画面で赤い色のきれいなボールが積み上がり天井に触れるのと男が紅い球体と化した頭部ごと全身でコントローラーに突っ伏すのは同時だった。

 男が倒れるときにコントローラーにあたったせいで、コントローラーが動き、紅いきれいな色の玉は、横の小さなこの男が死ぬ前に作った溝に落ち、ゲームオーバーにはならなかった。

 

 男が、突っ伏した瞬間、弱い周囲に共感を感じた。

『こいつ、、、だ』


 えっ。


 俺は、背中にかなり強い異能を感じた。急いで振り返ったがおそっきゃったゃ。あたゃみゃがうわれるように痛ぃい。 

 きょん度は、うおれが、無言の咆哮をうあぐぇていたぃや。 

 いにょうを、、、、。いにょうを、、、、。しゃぶれれなやいというょり、きゃんぎゃえらりぇにゃい。

 うおれは、ぅいたしゃとぅのょうへのくぇつ液のしぇいでぇ片膝うぉ付いたゃ。

 そりぇぎゃ、ターニングポイントだった。

 俺は振り返れた。そこには、座れば大人の座高はあろうかというゲーム機の狭間に三歳か四歳程度の可愛い盛りの幼い女のが居た。

 そのは熊のぬいぐるみを左手に持ち、熊は地面にその短い足をたらしていた。

 今までといっしょ、どこにでも居る普通の

 但しまごうことなき異能だ。

 間違いないのは、そのが俺を一点に見つめていることだけ。

 異能の力が変わらないといえども、子供と大人では話が違う。

 おれは、一瞬にして反撃に出ると、そのの頭蓋骨のとある一点をそれも針のような極々小さい一点を異能で貫いた。

 そのは、人形のようにくまのぬいぐるみとともに真後ろに倒れた。

 そのは二度と起き上がらなかった。

 二人いたのか、それで、共感の力が強かったのか。

 このゲームセンターの店員か客がやがて気づくだろう。血まみれになってゲーム機に突っ伏している引きこもりの男とゲーム機の間で仰向けに倒れている針で刺されたような傷を頭につけた三歳の幼いのことを。不真面目な検死官なら気づかないかもしれない。

 俺は、防犯カメラに写っているかもしれないが、俺が他の客と同様にこの二人に一切触れていないことも同じように写っている。概ね警察で処理されても事故死か病死で扱われる。


 同じ眷属を二人も殺した俺は、このゲームセンターを後にし、山の手線に乗った。

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異能狩り 美作為朝 @qww

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