異世界の邪神と飲み会したかったので飲んでみた
Supplement 0:邪神ですが飲み会したいと思います
俺たちが家に帰ると、玄関の前に見知らぬ……いや、俺たちが知っていたはずの人物を見つけた。
「……師匠!?」
「やっぱり覚えていたのか。そうだろうとは思っていたがな」
「このひ……カっちゃんの師匠じゃない!?起きちゃったの!?宇宙がぁ!!宇宙が滅ぶぅ!!」
「長野さんだったか。やっぱり覚えてたのね。君ら何なの」
呆れたように師匠に言われる。記憶消されてたの今思い出したよ。そりゃふつう消された記憶なんて思い出せないもんだろうけどな。あの異世界での味がよみがえってきた。結構うまかったなぁ
「記憶を消したつもりだったが身体にしみついた記憶までは消せなかった、ということか」
「おいこら包丁!お前もいるのか!師匠銃刀法違反で捕まるだろ」
『相変わらず元気そうで何よりだ』
「祭司!お前もすっかり元気になったのか!」
『完治というわけではないがな』
「このあたりウロウロしてたらさすがに捕まらないですか?」
『それなら大丈夫ですよ!それにしても記憶消したはずなのに……やっぱりあなたたち人間じゃないのでは……』
見知った顔が次々出てくるな。それにしてもひどいこと言いやがる司書ちゃん。司書ちゃんのほうは人間の格好しているので(しかも服もちゃんと着ている。見習えマギエム)捕まるようなことはまずないだろう。しかし久しぶりに見ると祭司はやっぱ迫力あるなぁ。
「それにしても急にどうしたんだ師匠。56億年7千万年くらい寝てる予定だっただろ。あとだいぶあると思うんだが」
「今期のアニメ気になったんで夢の中で起きてみた」
「おい」
「でも師匠さんは神様みたいなものですよね。それくらいわざわざ起きてみなくてもいいような……」
確かにみゆきの言う通り、わざわざ起きて来ることもないような気がする。
「あのな、確かに私はそれなりに凄いとは思うんだけど、全知全能の絶対神じゃないからな。某神話体系では絶対神と同一視してるけど。だいたい絶対神が人間の規範とかなんとかに干渉してくるとかどんだけガバガ……」
「それいじょうはいけない!」
「おっと。まぁともかく、全知全能でもないわしは今期のアニメとかマンガとか見たくってちょっと起きてみたんだ。ついでにおまえたちに会いたくなってな」
「俺らはアニメのついでかい」
「もっとも手ぶらっていうのもどうかと思うんで、ちょっとカニ持ってきた」
「ささ、上がってくれ」
「単純なんだから……」
何言ってるんだよみゆき、師匠の持っているカニ見ろよ。最高級のズワイだぞ!キロいくらだよこれ。上がってもらわないわけにはいかないだろ。そう言おうと思ったがみゆきのヤツも師匠が持っているカニの品定めをした結果、
「……お師匠さま上がってください、ささ、どうぞどうぞ」
と言い出しやがった。みゆきさんよ、カニと昆虫はかなり遠いと思うぞ。具体的には魚類と哺乳類くらい遠い。もっとかもしれない。味も含めて。
「さすが師匠、鍋の材料も持ってきてるとは」
「今年は野菜高くないか?」
「ところでカニ鍋やら焼きガニやらやるとして、酒とかどうします?」
「普段飲まないのか」
「確かにカっちゃん普段は飲まないね」
「飲まないわけじゃないけどな。酒買ってこようか?」
ん?司書ちゃんも何か持っているな。瓶の中には琥珀色の液体が入っている。
「
「そんなのあるの!司書ちゃんも上がって!」
『私も一応買ってきたぞ、ア〇ヒスー〇ード〇イを』
「……祭司なんでそんなまたオーソドックスなもんを。店の人になんか言われなかったか?」
『特殊メイクだといったら納得してもらえた』
「納得すんなよ店の人、本当はヘルメットとかで入るの禁止だぞ」
『これは素顔なんだが……』
祭司は常識人枠なのかそうでないのかをきっちりしてほしい。ていうかなんでそのビールを知っているんだよ祭司。そりゃどんな料理にもよく合う、アサ〇〇ーパー〇ライってCMもあったくらいだけどよ(そんなものはない)。
なんだかんだいいながらみんなで俺の家にあがりこむ。師匠、みゆき、司書ちゃんたちが料理の準備を始めた。おれは手持無沙汰なので祭司に最近のことを聞いてみる。
「けがの具合はもういいのか」
『なんとかな。その節は世話になった』
「それは師匠のおかげだよ。俺はいつも通りにやっただけだ」
『それでも助かったには違いはないからな。こうしていられるのも二人のおかげだ』
「困ったときはお互い様だろ」
『違いない』
師匠が鍋をもってきた。今日は土鍋である。土鍋にはうまそうにカニの足が並んでいるではないか。こんなの絶対うまいぞ畜生。鍋一号は今日は台所でお休みだ。ちなみに鍋一号だが、いつの間にやらうちにあった。すっかり忘れてたが、包丁除けたら一番付き合い長いな。師匠が日本酒を持ってきている。あっ、それは!
「カニといえばこれだ。かにみそ食べた後一杯やろう」
「甲羅酒!日本酒も持ってきたのか師匠」
「日本酒か……」
「みゆきって日本酒ダメなひと?」
「ダメじゃないけど……ね。いろいろと思い出してしまうことが……」
『……いやな記憶なら吸っちゃいましょうか?』
「ありがと司書ちゃん。でもね、いやな記憶ときれいな思い出って、切り離せないものもあるよ」
『そうですか……』
そういや付き合い長いのにあまりみゆきの昔の話を知らない。正直あまり詮索するのもどうかと思うので、あえて聞くことはないけど。本人がそのうち気が向いたら話してくれると思っている。それでいいんじゃなかろうか。
「さて、準備もそろそろできたし、みんないいか!乾杯!」
「かんぱーい!」
こうしてよくわからないうちに、人間と邪神の飲み会が始まってしまった。ちなみにだが、日本でこうもうまいもの食わしてくれる存在のことは確実にこう呼ぶのだ。
神、と。
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