第7話
デンキウナギって身は白身、いや脂身に近いんだなぁ。ウナギと外見は多少は似ているが味のほうはやはりウナギとはかなり違う。醤油と鍋で煮付けてみたのだが、こいつはなんだろう、くどい。さっきの攻撃とかもくどかったしな。
「味付け自体が間違ってたな。脂を落とすような網焼きとかの方がイケたかもしれない」
『そんな情報もらってもどうしろと』
『そうですよー』
イカに戻った司書ちゃんにも言われてしまう。魚人のみなさま、お分かりいただけたであろうか、司書ちゃんはイカだったってこと。さすがにビックリしてたな。
『これ言っちゃなんだけど、もう少しで取り返しのつかないことしてたね』
『そうだな……
『これからみなさんはどうされるんですか?』
『この星で色々やっていけるようだから、ここに入植するつもりだ』
「頑張ってくれ。こちらもこの星に巣食うガンに始末をつけてくるから」
「さっきまで喰うか喰われるかの命のやり取りをしていたはずなのに、なぜ和気藹々としているのか」
包丁はどうしてこう、茶々を入れてくんのかね。闘い終わったら分かり合えることだってあるだろう、たまには。そう、たまにだけど。だいたいは喧嘩するほど仲が悪くなることくらいわかってるっての。
「そういや司書ちゃん、祭司ってどこ行ったんだろうか?」
『んー。わからないですねー。わたしは魚人のみなさんに捕まってたんで』
『その件については色々申し訳ない』
「包丁、黄の王の所在を掴まないといかんな」
「わかった、やってみる」
俺と包丁で再び周囲を探る。地下に何かがあるようだな。しかも……これは両方がいる?
「どうやらこの下にどちらもいるようだぞ」
「そのようだな。行くか」
「おう」
「私はこのイカ娘を送ってから下に向かう。それまでは頑張れ」
「わかった師匠」
地下空洞にどうやら黄の王が待ち構えているようだ。祭司のことも気がかりではある。少し急ぐことにするか。
洞窟を進んで行こうとするが、かなり暗い。松明を持っているとはいえ、なんだろう、薄暗い。人間とは本能的に闇を恐れる生物だからなぁ。それでも進んで行くと……こいつはありがたい。ところどころに発光するコケのようなものがある。ちょっと神秘的といえなくもないが、今は僅かながら明るいことが一番助かる。
「何かがいるが、また、あの感覚だぞ」
包丁が何かの存在に気がついたようだ。磯の匂いもしてきたが、この匂いは……これまで何度となく嗅いできたあの、古代の海の匂いである。
天井に何かの存在を感じる。コレは……咄嗟にその場を離れる。降ってきた石の柱……いや違うぞ!異形のその石のように見えたものはだ。
「アンモナイトだと!しかもこれはまたずいぶんと変な形のやつだな」
「トゲがある貝なのか?気持ち悪い形だな」
包丁に気持ち悪がられているが、アンモナイトには白亜紀後期の絶滅寸前の際に異常な形のものが多数出現している。かつては何らかの環境異常により形成異常になったのではないかと考えられていたが、実際には環境の変化に伴い、急速に周囲の環境に適応しようと様々な形になったことが原因である。
周囲に様々なアンモナイトがひしめいている。まるで邪神壁である。こいつらを操っている何かがいるのだろうか?アンモナイトもかなりの大きさのやつが存在する。あちこちで目が光る。こいつら……俺を襲う気まんまんだな。
「どこかで見たような感じだな。……決着をつける時が来たか」
『ソレハコチラノイウベキコト。ココガオマエノシュウチャクチヨ』
終焉の地、火山の街、そしてこの星……つくづくまあしつこい
「おい、お前まで殻に閉じこもってんのかよ!」
『オマエニイワレルスジアイハナイ』
そりゃそうだけどよ、よりによって二枚貝に閉じこもり周囲にトゲだらけのアンモナイトとはな。もうこちらを(性的な意味で)弄ってくることもないのかい。それはそれでつまらんな。
「ちなみに中ではアレ?全裸女子の格好なの?」
『……バカバナシニハモウツキアウツモリハナイ!シネ!』
「全くだ!馬鹿なこと言ってないで行くぞ!」
どうやらビーナスの誕生ごっこはしてくれないようだ。邪神だからね、仕方ないか。しかし包丁まで向こうの意見に同意すんのかよ。
無数のアンモナイトが襲いかかってくる。推進力がある分、オウムガイよりは強敵である。おまけにレンズ眼だからな、こちらをしっかり見て襲ってくるようだしな。つってもな。
飛び込んで来たアンモナイトの間に割り込み、頭を下げる。ぶつかり合うアンモナイト。砕ける外殻。見てからでも避けられる。そんな大技そうそう使えないもんな。
ちょっと砕けた殻からはみ出た肉を味見してみると、やはりイカに似た味がする。苦味が強いのは内臓も関係するのだろうか。
『マタタベルノカ!コノ、バケモノォ!!』
「邪神にバケモノ呼ばわりされる筋合いはねーよ、今度こそ喰い殺すからな!」
「そういうことを言うからバケモノ呼ばわりされるんだろうが」
否定はしないが包丁よ、相手の肩を持つのはやめてほしい。悲しくなる。ぶつかり合うアンモナイトを避けつつ、だんだんとヤツの本体の二枚貝に近づく。
「いつぞやとは違うぞ!今度こそトドメを刺してやる!」
『カカッタ』
「なんだと!?」
包丁が振動した瞬間、背後から気配を感じたので横っ跳びしてかろうじて回避する。この気配を俺は覚えている。
「てめぇもいたのか黄の王!」
『流石に強いな。一撃で始末をつけるつもりだったそうはいかんか』
「なめんなよ。こっちだって少しは強くなったんだからな」
『確かにいい動きだったな。ところでな、あの壁を見てみろ』
「今の我らに不意打ちは効かんぞ」
『そんなつもりはない。それより、あいつはお前の仲間だったんじゃないか?』
「仲間……て、てめぇ……!」
壁には息も絶え絶えの祭司が寄りかかっていた。なんてこったこの
『イ……イソノ……か……』
「ちょっと待ってろ祭司!こいつら始末して師匠に助けてもらうからな!」
『に……逃げろ……』
『そこまでだ。さらばだ』
空間からどこかで見た武器に似た武器がいくつも出現する。10本はあるぞ!
「遺失した対邪神インターフェースだと!お前が持っていたのか!黄の王!」
『お前達の武器で滅ぶがいい!バケモノ!!』
黄の王の叫び声とともに、対邪神インターフェースが襲いかかってきた!こいつがお前の切り札かクソ
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