第14話
とっとと人間集めてこいよ!と、バルゼブを散々煽った俺たちは、こっちのメンツを集めてくることにした。邪神を喰った人間がそんなにいるか?いやいるんだよこれが。
「おるかー?」
「もうつっこんだら負けな気がしてきました」
「諦めが早いな」
目当ての男がいる家を訪ねると、そのアフィラムはノコギリで木材を切っていた。俺と包丁を見るなり嫌そうな顔をする。
「イソノじゃない?今日もアフィラムを鍛えにきたの?」
「うーん、まぁそんなとこか。アレンはまだまだとは言え、大分使えるようになってきたぞ。邪神も倒してるし」
「本当!?すごいじゃない」
フィオナの発言に渋い顔をするアフィラムだが、強くなっておいて損はないんだぞ。また喰われたいか?
「それで、また修行ですか……」
心底嫌そうな顔をしてるんじゃない。あまり期待できないのは俺だって理解してる。
「いや、そこまで大したことじゃない。やってくれたら報酬をメルトリウスに貰えるが、どうする?」
「たいしたことがないのに、報酬ですか?」
「うむ。父には私からも頼もう」
マギエムの顔を見てまた渋い顔になるアフィラム。いまは服着てるんだからそんな顔すんなよ。
「いいじゃん、やってきなよアフィラム」
「いやちょっと待ってください。具体的に何を」
「ちょっと邪神いそうなところを散歩」
「さ、散歩ぉ!?」
「そんなびっくりすんなよ。だいたいお前邪神温泉行ったくらいなんだから外くらいどってことないだろ今更」
「そりゃまぁ、そうですが」
「それとあと、終焉の地からここに流れ着いた元ゾンビたちも集めたい」
「元ゾンビて」
名前聞くタイミングなくしたんだよ。早いとこ名前聞かないと。
「それで。何のために外に行くことに?」
「バルゼブって街の取りまとめの補佐やってるやついるだろ」
途端にフィオナの顔色が悪くなる。あいつどんだけだよ。アフィラムもその名前聞くだけでイラッとしたのがわかった。
「そいつがな、邪神喰ってパワーアップとか馬鹿なことやめさせたいんだと。やめたはいいけど何やるのかはこっち任せだと」
「呆れたヤツだ」
包丁もそりゃ呆れるわな。文句だけ言うだけ言ってなんもしないんだもんな。
「んでイソノはうちの人に何して欲しいの?」
「バルゼブの鼻を明かしてやりたい」
「具体的には?」
「ヤツが率いる連中と、アフィラム率いる邪神喰らい隊で、邪神に対する反応を比較する」
「なるほどねー。いいじゃん。行ってきたらアフィラム」
フィオナの了承が取れたな。
「よし、行くとするか」
「私の了承は!?」
「取る必要あるのか!」
「あるでしょう普通!!」
そりゃすまんかったな。しかしだ、ここは来てもらわないと困る。
「とはいうものの、アフィラムもバルゼブのことよくは思ってないんでしょ?」
「実際よくは思えませんよ。人が見てないスキにフィオナに粉かけてくるんですからあいつ」
「え?それホントなの?」
「ウソついても仕方ないでしょう」
もっともである。ならなおのことやつの頭髪を毟……違う違う、鼻を明かしてやりたいだろ。
「うーん、しかしだ、これ気をつけないとヤツがアフィラム消しにくる可能性すらあるな」
「そこまで!?」
「経験者は語るね」
おいこら長野ちゃん、人の古傷に塩塗り込むのやめなさい。さすがにフィオナが未亡人になるのは寝覚めが悪い。
そんなこんなで、アフィラムがカイロスという元ゾンビ仲間の人に声をかけてくれた。
「いいぜ、何ができるってほどじゃないが手伝ってやるよ」
「本当か、悪いな」
「なんせあの野郎、俺たちのこと信奉者扱いして牢にぶち込んだんだからな!」
カイロスにもそんなことを言われるとはどんだけ悪行三昧してんだよ額サンシャインめ。モノには限度ってのがあるぞ!
「そうだそうだ!」
「牢から出られたはいいが、未だに信奉者呼ばわりしてやがる」
「しかしあいつなんでここまで悪行三昧で、補佐とかやれてんの?」
「あいつ、よくはわからんが鉱物とかの加工とか得意なんだよ」
「それで、金属とか作ったりしてるんだよ。金属は必要なもんで、あいつにはアタマが上がらないと」
なるほどな。金とか握ってるみたいなもんか。ひとまずこちらは20人強集めることには成功したな。
「集まったみんなには、今なら長野ちゃんお手製の料理もついてくるぞ」
「マジか!ナガノの!美味いって聞いたことあるんだけどまだ食ってねぇよオレ!」
「俺はちょっと勘弁しようかな……」
「今回のはハーブ唐揚げだ。ちょっとだけ食ってみる?」
持って来たのはウーパールーパーをハーブで下味をつけた唐揚げである。
「ついて来てくれるなら二食用意してる」
「マジか!ここのとこ配給も少ないし助かる!」
「うおーこれうめぇ!行く行く絶対行く!」
「ナガノさん虫以外も調理できたんだ……」
「おいこらそこ、もうあげないよ」
臭みが取れたせいか、かなり好評である(ウーパールーパーとは言っていないし)。よし、戦力は整った。では漁の時間だ。何が捕まるか楽しみだ。
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