第3章
第1話
超大型ダイオウグソクムシくんを海に帰した後、俺たちは街に戻ることにした。幸い、先ほどのように転移させて何かが襲撃する気配はないようである。道すがら、司書ちゃんの仕入れた情報を長野ちゃんにも共有する。
「核兵器を使わせる!?」
「司書ちゃんの話が本当ならそうみたいだぞ。まぁ祭司たちみたいなぼちぼち派ではない連中だからな」
「それで日本とか中国とか、彼らにとって危ない国を先制核攻撃!?そんなの地球がむちゃくちゃになるじゃない!核の冬が来るよ!」
長野ちゃんのいうとおりなのだが、人類殲滅派の邪神連中にとってはそれでちょうどいいくらいに考えている可能性は高い。
「もう1つ厄介なのは、どうも連中、人間以外の食料どっかで調達できるかもしれんことなんだよな」
「なにそれ」
「邪神が人間喰うのはエネルギーとしての情報を得るためのようだ。高度な情報処理を行え、かつ連中にとって安全に飼育できる人間以外の生物がいるならそっちを使うよな」
「そんなのがいるならわざわざ人間食べなくていいよね?滅ぼす理由にならないんじゃない?」
「こっちの世界では飼育しにくいとかそんな感じかもな。さらに危険生物駆除の意味もあるんだろ。いずれにしてもはた迷惑な話だ」
日本人とか海棲生物捕食民族、邪神にとっては危険生物以外の何者でもないから駆除したいのはわかる。特定外来生物みたいなもんだ。つってもお前らがこの世界に俺引きずり込んだんだろうが。俺らはブルーギルかなんかか。
「そんな理由で滅ぼされるとかなんなの!あり得ない!」
「そりゃそうなんだが、問題は実際あいつらそれできる可能性は高いってことな」
「どうするの?」
「……とりあえず味方は多ければ多いほうがいい。あとは敵をできるだけ減らすことだ」
「味方って言っても街の人と、せいぜい祭司たちくらいじゃない」
「祭司たちが味方ってかなり助かるんだがな実際」
「それはまぁそうだけど」
「減らすといっても、実際問題戦争になったら勝てないな」
「そうね、私たちはともかく、ほとんどの人はまともに戦えないよ」
戦力が足りない。こちらの人間は基本的に戦力外だ。アレンみたいにガッツのある奴ですらまともに相対せないんじゃ、相当に厳しい。
「ならやっぱこれしかないな」
「どういうこと?」
「長野ちゃんたちは街に戻ってくれ。俺は奴らの巣に向かう」
「そんな!むちゃくちゃじゃない!」
「とりあえず黄色の王とやらの味見がしたい」
「あ、味見」
そうだよ。やはり美味いかどうか、それが問題だ。強い奴程美味いといいんだが。さすがの長野ちゃんにも呆れられたが仕方がない。大体戦争になったとしても、精神干渉で動けないんじゃまともにやりあえるわけがないだろうが。
「バカなことをいう……」
「しかしな包丁、街の人たちがヤツらと相対するのは、奴らにスナック菓子渡してるようなもんだ」
「だからと言っておめおめ死にに行くのは勘弁だ」
「そうか。なら、俺だけで味見に行くことにする」
「待て」
オロオロしている長野ちゃんに包丁を渡そうとすると、包丁が文句を言ってくる。
「お前に死なれたらだれが私を使うんだ?」
「安心しろ、死にに行くわけじゃない」
「なら、私がいたほうがいいだろう」
全く、このツンデレ包丁め。
「仕方ないな、まずは潜入して戦力調べつつ味見してくるに止めよう」
「わかった」
「もうツッコまないんですね」
そういうこというなよアレン。まぁ締まらないのも含めて俺たちらしい。
長野ちゃんたちと別れて、一路邪神の巣に向かう。包丁が震える。あまりに数が多いなら、まずは摘み食いして帰ることにしようか。
「今日の
「1つ聞きたい」
「なんだよ」
包丁が改まって何かを告げようとしてるようだが。邪神はどこにいるのやら。
「お前は以前、戦争する気は無いと言ったな」
「ああ。今もだがな」
「しかしな、こうなったらもはや生存競争とか悠長なことは言えないのではないか?」
「そうだな」
遠くの方を見ながら俺は包丁に生返事を返すしかなかった。実際のところ、連中の意識をどうにかしない限りどうにもならん。
「でもよ、まともに戦えないんだがなこちらは」
「それはそうだが」
「だとしたら、頭だけ摘み食いして混乱させるくらいしかないだろ。負け戦な気はするが」
「……」
磯の匂いがしてきた。今日の
果たして、そこにはトグロを巻いた蛇のような形の岩があった。
「またうまそうなヤツがいやがる」
「どう見ても岩にしか見えない」
「まさかと思うがこの奥に洞窟でもあるのか?」
「……中に邪神がいるぞ」
ならば、こいつを始末することにしよう。あたりから枯れ木を集めてきて、火をつけることにした。
「いい匂いがしてくるな」
「……まさかそのまま喰うのか!?」
こんなところにいやがるオオヘビガイ、貴様が美味かったのが運の尽きだ。グツグツと煮えたぎるオオヘビガイ。
少し包丁で切って食ってみる。これは!口の中に広がる旨み。 サザエとかに少し似ている。もう少しシンプルな味わいだがな。
「美味いな」
「……中に煙が入り込んでいるぞ」
中で何やらどったんばったん大騒ぎしている。何かいたのか?まさかと思うが……
「ひょっとして、一酸化炭素中毒?」
「哀れなヤツらだ」
しばらくオオヘビガイを食べながら待っていると、中の音が聞こえなくなった。どうやら邪神の燻製が出来上がったようだ。あとで食べてみよう。
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