第16話



 司書ちゃんを襲った不届きな精力豊富なウナギ野郎とセミエビを、どう料理しようか考えている。


 セミエビは味が強いから人によっては嫌がるようだが、全般的に味噌汁はうまいと評価されるので、味噌汁の具にしよう。出汁は昆布である。その昆布やワカメだが、アメリカ西海岸では大量繁殖して問題になっている模様である。日本に輸出したら問題解決だと思う。


 ウナギは……蒲焼きしかない。ここまでくると蒲焼き以外の選択肢はあるまい。幸い砂糖などもあるし、醤油も十分ある。ウナギのタレぽいものを作ることもできそうではある。寄せゼリーだってある?すまないなイギリス人、このウナギは蒲焼き専用なんだ。


 などと脳内料理会議をしているとだ。


「完全に何を考えているかはわからんが、どうやって食べるか考えているんだなお前は」

「嫌な機能だな包丁のそれは」


 包丁が失礼なのは人の心の中にズケズケ入って来るからもあると思う。心の中に土足で足を踏み込むのはやめて欲しい。


「正直なところこの機能は邪神感知の延長上にある」

「どういうことだ?」

『私たちも人間の皆さんと同様、頭の中で色々と情報処理をしています』


 急に司書ちゃんが話に入ってきた。声だけとはいえ、かわいい子の方が包丁と話すよりは楽しい。


「まぁこれだけ話せるんだもんな。十分知的生命体だよね君たち」

『人間の皆さんより少し上の部分もあります。特に情報を元に、様々な物に干渉することに関しては確実に上です』

「確かにな。まだ俺たちの世界じゃ研究が始まったとこだ」

『え?そうなんですか……そこまで来てるとすると……』


 何やら考えこむようにしている司書ちゃん。


『ともかく、私たちは外見的には海の生命体とそう大差ないですが、内在的神経器官や群体化により情報処理性能を高めています』

「なんのためにそんな進化したんだ……」

『自然に進化したのではないですねー。おそらくなんらかの存在の介在があったのではないでしょうか』

「そう。お前たちが邪神と呼んでいる存在と海棲生物では保持する情報量には圧倒的な差がある。情報の感知。それこそが私の機能である」

「そういうことか。どおりで心も読まれるわけだ」


 喋りながら歩いているうちに、無事邪神温泉にたどり着く。


「ここだ。祭司の農場もでかくなったな」

『祭司さんも変わってますからね』


 仲間にまでそんな言われるんだ祭司さんよ。


『おお、戻ったか。※※※※!』

『※※※※※!あっ。祭司さんも!』

「祭司。司書ちゃんって呼べってこの子言ってたんだけど、危なかったぞ。こいつとこいつに酷いことにされそうになってたぞ」

『な、なんだと!?』

『危ないところをこちらの方とソードちゃんに助けてもらいました』

「でも、なんでここまで襲われたんだ」


 アレンの疑問ももっともだ。人間を襲うならまだしも、邪神どうしだぞ。


『後で詳しく話しますが、彼らが非常にマズいことをしようとしていることを突き止めました』

「何をしようとしているんだ。そんな邪神どうしでそこまで襲撃する必要があることってなんだよ」

『……核兵器って、わかります?』

「か、核兵器?なんですかそれは」


 俺以外が怪訝な顔をする中、俺のみが真っ青な顔をしていたに違いない。


「ウラニウム235の核分裂やプルトニウムの核分裂、プルトニウムの核分裂をエネルギー源に太陽と同様の核融合を引き起こす兵器だ」

『太陽と同様……それだけ聞くととんでもないな』


 祭司の言う通り、人類が作り出した中ではもっとも凄まじいものである。最大の出力のものは瞬間的に太陽と同出力を発揮したのだ。


『人間って怖いんですね……ともかく、人間の持っているそれらの兵器を人間に使わせて、特定の人たちの抹殺を考えています』

「間接的に、か」

『はい』


 よくわかったな。教えてくれて感謝しかできない。司書ちゃんにも頭向けて寝られないな。恐ろしい計画立てやがる邪神どもめ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る