第11話



 オウムガイをシメたので、邪神温泉を目指すことにする。思ったよりオウムガイ軽いな。オウムガイの殻の中にはガスが詰まっているので、見た目より軽いようである。


「オウムガイは結構良い邪神しょくざいなんだよ。しかしだ」

「何を言いだすんですか唐突に」


 アフィラムを連れて行けと言い出したのは包丁である。包丁はそんなに俺のことをボケ倒しキャラだと思っているのか。ツッコミが足りていないとでも言うのか。


「もっとこう、つまみ的な邪神しょくざいが欲しいところだよな。せっかく顔役メルトリウスから酒かっぱらってきたのに」

「かっぱらうと言うが、醤油だったな、調味料と交換だろうが」

「酒もある、邪神メインディッシュもあるのもいい。つまみ的な邪神しょくざいは必要だ」


 包丁のいうとおり、メルトリウスには長野ちゃん謹製たまり醤油を渡しているので、これはまぁビジネスだ。言葉の綾ってもんだ。


 確かに旨そうではあるよオウムガイ。でもね、もうちょっと軽いヤツが欲しいんだよ軽いヤツが。


 また風向きが変わったのか、磯の香りがする。いや、違うな。


「来たようだな」

「……いつも思うんだがな、私より早く気がついていないかお前は」


 足元にニュルニュルと気持ち悪い生物が複数蠢いている。肌色で卑猥な形をしているが……こいつは!


「ユムシかよ!特大サイズの!これはいいな!」

「え!?え?こ、この卑猥なヤツたべるんですかぁ!?」


 アレン、卑猥なヤツってなんだよ。確かにちょっとだけ形似てるけどな、アレに。


 しかしだ、釣り餌などにも利用される存在でありながらユムシはかなり旨い。日本ではそこまで食べられてはいないものの、北海道など一部地域で食されている。また、中国の一部や韓国ではもっとメジャーに食べられている。味の方は甘みが強く、ミル貝などの貝に比較的近い。


 それにしてもこいつらデカイな。長野ちゃんとかフィオナいなくて良かったよ。色々な意味で。


「こいつら襲って来たりしないですよね」

「おいバカフラグを立てるなアフィラム」


 不意に明確な殺意、いや違うな、だが妙な気配を覚える。


「おほおおおおぉおぉ!?」


 アフィラム、何叫んでやがるんだよ、と言おうとして俺は絶句した。彼のお尻に穴があると思うのだが、そう、穴るところにユムシが突撃しようとしている。


「うわぁああ!」

「クッソそこに入ったらさすがに喰えねぇよ!」


 ユムシに包丁を突き立てる。気をつけないとアフィラムが痔瘻になりかねない。


「ふ、服で止まりました」

「あっぶねぇ……さっさと始末しましょう!」


 アレンのいう通りだな、こいつら危険すぎる。俺たちの貞操が危ない!今夜のつまみにしてやる!ヤツらが俺たちの貞操を喰らうか、俺たちがヤツらを食い尽くすかだ!俺たちの菊門を穿とうとするユムシどもめ。


「狙いがわかっているのならなぁ……所詮は下等生物じゃねぇか!」


 尻穴めがけて飛びついてくるヤツらを包丁で両断する。そしてだ!


「早速持って来てやったぞ!新兵器の威力、その身で味わうがいい!」


 刺身にしたユムシに溜まり醤油を垂らす。食感もいいし甘みも強い。これは確かに喰う人が多いのもうなづける。


「……旨い……」


 口の中に広がる旨味を堪能する。刺身にたまり醤油というのは、どうしてこうも合うのだろうか。


 菊門を穿とうとするユムシたちも、捕食されるとなると我先に逃げだしはじめる。恐怖というものを少しは感じたか。


「相変わらず……恐ろしい人だ……」

「しかし何故俺たちの尻なんか狙うんでしょうか」

「地球に似た生態の魚がいる。そいつらは生殖目的だ」


 ユムシがこんな生態をとるような進化をするというのもなんだよなと思いながら、俺はモグモグと刺身を食べる。


「……何だろう、凄く穢れた気がするぞ……あんなモノを斬るハメになるとは……」


 包丁よ、見た目はともかく、ユムシはあくまでチン◯じゃないからな。

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