第2章
第1話
状況を整理しよう。再び。
残念全裸シールドという対邪神兵器により、全長数十キロの大地を振動させることすらできる力を持った『大淫婦の娘』を撃破することに成功した。しかしその代償に、俺は
今ここにいるのはマグロ包丁と『祭司』、フィオナ、全裸と俺である。そしてここはどうやら、海の上である。
海の上ということは終焉の地と違い天候の急変、気温の上昇などの危険性が高まる。外気温はかなり高いが、逆に夜はどこまで気温が下がるか想像がつかない。
「祭司、これは地味にヤバい状況だよな」
『……気づいてくれたか』
「ああ。『終焉の地』は海中にあったから外気温についてはあまり考慮しなくてよかった。雨も降らないしな、たまにクジラ降ってきたけど」
『え?そんなことあるの?』
祭司にも想定外だったのかクジラ降ってくるのは。
「おまけに邪神も見当たらないようだ。いいことではあるが……」
「待て、それって
包丁に向かって俺は思わず叫び声を挙げる。ここまで俺が生き延びてこれたのは、邪神を倒しては喰らい続けてきたからである。邪神は敵ではあるが生命線でもある。食料を食い尽くすサバクトビバッタは、人類の敵でもあるが食料としても利用されている。
食料も無しに海を漂流だと……絶望じゃないか?
「このままだと……死ぬ?」
むしろ邪神に来てもらいたい状況がくるとは思わなかったぞ。追って来て襲ってくれよ頼むからよぉ!
『まだ死ぬとは決まってないと思う。見ろ』
「あれ?島なの?」
島か。……邪神があの島にもうじゃうじゃいるのか?いてくれるのか。やったぜ生き残れる。
「ほう。島には陸上の食材もある可能性があるな」
全裸残念イケメン、下は履いてくれたようで何よりだ。
「……確かに。水の問題は終焉の地よりはマシな可能性は高い」
「みんなも流れ着いているのかな?」
『海流から考えるとあの島にいる可能性はあるな。もっとも我らと対立する相手が中心だとすると不味い状況だが』
すまんアフィラム、助けられたら助けてやるが、残念包丁に人間感知機能は無いのだ。むしろ鍋感知機能が欲しい。
「包丁、
「そんなにはいなさそうだが、いるな」
「よっしゃ」
『倒すのは食べる分だけにして欲しいところだ』
「基本そのつもりだし、他に食えるものがあるなら襲われなければ攻撃はしない」
『頼む、私も交渉させてもらう』
「どっちが邪神なのかわからなくなって来たね」
しかし陸だとすると、上手くいけば色々と手に入る可能性があるな。
「コメやミソ、醤油までとは言わないが何か食生活を改善するものが入手できる可能性もあるな」
「何それ」
「全く聞いたことがない代物だな」
『食べられるのかそれは?』
うむ、もし入手できたら祭司を含めたみんなにも食わせてや……
「うおっ!?」
浮島になっていた今いる場所が、島に衝突する。
「なんで?むちゃくちゃ早いじゃないか」
『海流が速いからな』
泳いで島に渡ろうと思ってたんだが、それはせずに済んだのは助かる。
果たして、島の砂浜に漂着する。異常に砂浜が広い。おまけに、島自体はまるで火山だ。カルデラのような構造をしているようにも見える。
「火山だと?」
『月が近いから火山も重力の影響で活発に噴火するのだ』
祭司がアタマ良くて説明役として有能すぎて泣ける。包丁は包丁だけやってればいいと思う。
「あの……空になんか変なのがいるんだけど……」
「あれ……バッタだよなぁ」
「……妙に大きくないか?」
『逃げた方がいいのでは?』
ちょっと待ってみようか祭司。なんで虫ごときから逃げなきゃいけないのか?……いや確かにあれはでかいぞ。まさか!
『群生相だ!あの形態の連中は全てを食い尽くすぞ!』
「でかい上に群生相かよ!フザケンナなんだよこの島ぁ!」
こっちをロックオンしてやがる。人間食う気かよ化け物バッタめ!……馬鹿野郎バッタなんか食いたくねぇよ俺は!!甲殻類の親戚と言われりゃそうだけどよ!にしたって食ったことないし!
「イソノ!あれって食べないのぉ!?」
「嫌だよオレ虫とか食ったことないんだよお!!」
『そういう問題かぁ!?』
不意に、一匹のバッタの土手っ腹に大穴があき、空から落ちてきた。
「食わず嫌いはよくないわよ。食べてみれば良さが分かるってモノでしょ!?ピナーカ!」
えっ、何言ってるんだ?で、誰だ!?
もう一匹、いや二匹が、大穴をあけられ空から落ちてくる。槍を持った女の子が、大きなバッタを掴んだまま、こちらにやってくる。
……虫とか食べる女の子はちょっと……
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