第144話 124回1日目〈Y.Y.1〉S★0
ヤシャルリアは王座に座り、その男の顔を見た瞬間『やっとか』と思った。
彼女は呆れながら――だが、心のどこかで彼の帰還に心を躍らせる。
「赤鉄鉱の鎧を捨てた貴様は、いよいよ私と決着をつける気になったのか?」
にやりと口元を緩ませながら、ヤシャルリアはヤサウェイを迎えた。
彼女の敵として――しかし。
「いや、君との決着はまだ先だよ。ヤシャルリア」
ヤサウェイは、仇敵であるヤシャルリアに向かって、飾らぬ顔で微笑み返した。
だが、彼の意図を読み切れず、ヤシャルリアは言葉を重ねる。
「……私の思い違いでなければ、貴様の鎧は私に剣を預けるために必要だったはずだ。貴様は赤鉄鉱を名乗る間だけ、私への怨嗟を捨て、ただ弱者のために戦えた。だが、その鎧を捨て、自らを取り戻すと言うことは、再び私に剣を向ける理由を取り戻すということではないのか?」
敵意ではない眼差しをヤサウェイに送り、彼女は返答を待った。
すると。
「確かに、君の言う通りだ」
ヤサウェイは、ヤシャルリアの言葉を肯定した。
「僕は、君への怨嗟を一時でも捨てるため、君に剣を預け、騎士の名と新たな剣を受け取った。あの時は、そうすることでしか仲間を奪った君の守りたい者達のために戦うことができないと思ったんだ」
「なら、今はどうなのだ?」
再びのヤシャルリアの問いに、ヤサウェイは答える。
「僕は戦えるよ。君の敵と――今は、サクラとタケのために。君との決着はまだ先だが、ひとまず自分に決着はついた。だから、あの鎧は必要ない」
彼は黒剣を携えたまま、ヤシャルリアに向かって戦友のように笑った。
「僕はヤサウェイとして、君の傍で戦おう。いずれ君と、決着を着けるためにも」
ヤシャルリアはその笑みを、心地よく受け入れる。
「お前は、そうでなくてはな……本当に、殺すには惜しい奴」
そして彼女は、自らの手を離れた一人の騎士に、また新たな命を下す。
彼が、自身の敵となるその日まで……。
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