第85話 123回10日目〈15〉S★1
「あんたの転移体質。魔導による後天的なモノには違いないの。でもね、解析しようにもあんたに用いられてる魔導式が後進的すぎてちっとも進まないのよ」
後進的すぎて?
彼女が口にした言葉の意味を俺は計りかねた。
すると、要領を得ていないことが顔に出ていたのか、メルクオーテは続けて俺に聞かせる。
「要するに術式が古すぎて無駄が多い分、アタシの知識とかち合わないの。アタシの知っている術式には余計な部分でも、あんたの転移体質にとっては削っちゃだめだったり、一文言で済む部分が、十や百を超える数の文言で構築されていたり……こんがらがってくるのよね」
言葉を続けながら、彼女は頭を抱えていく。
「今、本気で独力でやる困難さを感じてるところよ」
「珍しいな、お前がそんな弱気だなんて」
「はぁ……ばかじゃないの? そっかばかなのね。魔導の知識がないばか。当事者のくせにまるで他人事みたいな顔して、こっちは古代魔術に、魔力消費対策。あと転移術と術式交差と加結配合の専門家の手を借りたいくらいなのに」
メルクオーテが挙げた専門家が何かもよくわからぬまま、俺は「すまん」と謝った。
しかし、それで彼女の機嫌がよくなる訳でもない。
メルクオーテは俺からそっぽを向き、手にしたサンドイッチを乱暴に食み千切った。
「それに一番の大問題は、あんたの転移体質に用いられた術式がどんな時代、世界の呪術式、転移術式とも一致、類似しないことなのよ」
彼女は口にしたサンドイッチを噛み潰しながら文句をこぼす。
だが、素人なせいか俺はまたいらんことをメルクオーテに口走った。
「転移体質? なんだから、転移術式じゃないのか?」
直後、彼女は烈火のごとく怒り出す。
「だからっ! そうじゃないから困ってるの! もうっ! こっちは主体系の術式がわからないから、のろのろちまちま部分的に解析を進めてるっていうのに!」
すると、目に見えて苛立っているメルクオーテを見て、ふいにサクラが声を発した。
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