ランチタイム-気付きー
第83話 123回10日目〈13〉S★1
「あーむっ」
サクラは大きな口を開け、ぱくりとサンドイッチを頬張った。
ぷくっと頬が膨らむ顔は満足げで、彼女が至福であるのだとわかる。
俺とメルクオーテは、そんなサクラを間に挟んで腰かけ、共にサンドイッチを頬張っていたのだが。
「……魚か」
今、俺はサンドイッチに口をつけず、つい考えに耽っていた。
視線を自分のツナっぽい魚サンドと――
「あ、サクラ。たまごついてる。ほら、ほっぺ! 動かないで」
「もう、メルメル邪魔しないで!」
「じゃ、邪魔なんてしてないったらっ」
――サクラが握るタマゴサンドへ、交互に注ぎながらだ。
すると、俺がじっとサンドイッチを見つめていることに気付いたのか、メルクオーテが訝しんで口を開いた。
「ちょっとタケ? あんた、何サンドイッチと見つめ合ってんのよ」
彼女はきっと俺をにらみ「残す気じゃないでしょうね?」と続ける。
俺は「まさか」と、否定しようとしたのだが――
「タケ? 私が代わりに食べてあげようか?」
――サクラが会話に混ざり、話は思わぬ方向へ転がり出した。
「だめよサクラ。タケはもう大人なんだから、好き嫌いは許しちゃだめ」
「そうなの?」
きょとっと首を傾げるサクラと、彼女に言って聞かせることで遠回しに俺をたしなめようとするメルクオーテ。
気分転換を楽しんでいる二人に、余計なことは考えさせまいと……俺はごまかそうとしたのだが……状況は変わったと思い直し、二人を巻き込むことにした。
それに、メルクオーテには確認しておきたいこともある。
「なあ、メルクオーテ。こんな時になんだが、ちょっと訊いていいか?」
「なによ?」
「いや、さっき。俺の分のサンドイッチは転移しない材料で作ってあるって言ったよな?」
「ええ一応、わかってる範囲でね?」
「じゃあさ――」
俺は、サクラが食べているサンドイッチを指差して訊ねた。
「――例えばこれ、今二人が食べてる分を食べたら、俺に転移は起きるのか?」
俺の転移する体質について……。
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