第67話 123回6日目〈3〉S★0
「赤と白の玉鉱石から魔力を抽出して染めたの。少しもったいない使い方だけど、
メルクオーテはサクラの頭を撫で、そっと髪を手に取る。
優しい眼差しをサクラへと向ける彼女の表情は、とても満足げだった。
どうやら彼女達はこの髪色をとても気に入っている様子だ。
だが、やはり俺はなぜピンク色に? と、いう疑問が頭を離れない。
だから、二人に悪いと思うが、つい訊ねてしまう。
「でも何故その色なんだ? てっきり元の色に染め直すのかと」
すると二人は俺をじっと見つめ、声を揃えて答えた。
「サクラが絶対この色がいいって言ったのよ」
「メルメルが前の色はやめようって言ったの」
ほぼ同時の返事を即座に処理できず、俺は首を傾げる。
そんな俺を見て、サクラが続けた。
「メルメルね。私の髪が前と同じだと、タケが大切な人を思い出してつらいんじゃないかって」
直後、メルクオーテは赤面し、彼女はサクラの口を塞いで「余計なこと言わないのっ」とこぼす。
そして、俺はメルクオーテの気遣いに、自分が動揺していると気付いた。
俺は、サクラの髪をヒサカと同じにすることが、自分にとってどうかなんて考えもしなかったのだ。
あるいはヒサカの髪をいじるということ自体に、考えが至っていなかったのかもしれない。
「そうなのか?」
メルクオーテに確認すると、彼女はバツが悪そうに目を逸らした。
その反応で、俺はサクラの言葉に確信を持つ。
「ありがとう。気を遣わせた」
「違うったらっ。あんたサクラの髪に注文つけないし、文句言われないよう頭使ったのよ」
「すまん」
「あ、謝ってほしい訳じゃ……でも、そうね。髪染め代、少し割増しで請求させてよね」
気恥ずかしそうに、ちらりとこちらを見るメルクオーテ。
やはりこの子は優しいなと思った。
でも、口には出せない。
彼女を優しいと言うには、金がかかることを俺は忘れていないからだ。
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