第66話 123回6日目〈2〉S★0
メルクオーテに命じられた仕事はなんとも単調だ。
彼女は俺に
玉鉱石は宝石のように澄んだ見た目をした、おそろしく硬い粘土のような鉱物だ。
メルクオーテいわく魔導術では加工できず、普段は専門業者に依頼するらしい。
業者に依頼するようなことを、俺にできるのかと言う不安はあったが、やってみれば簡単なことだった。
玉鉱石を潰して圧縮し、泥だんごのようにころころと丸めるだけ。
俺は食パン一斤程の玉鉱石を、ちいさな女の子の手にすっぽり収まる程度にひたすら丸めていった。
自身の怪力を、まさか
大抵の労働を、彼女は魔導で片付けてしまうからだ。
それはもう、俺に任せるよりよほど効率的だった。
何にせよ、人体実験以外に提供できるものがあるのは、ひとまず喜ばしい。
そんなことを考えながら、俺は一人、庭で玉鉱石を丸め続けていた。
すると――
「ねぇねぇ、タケ。どうかな? これ」
――ふと、ヒサカの声に話しかけられ、俺は俯けていた顔を上げる。
「……お、おう」
そこには、髪の毛を薄く、ピンク色に染めたサクラが立っていた。
「……ずいぶん、派手な色になったな」
「ふふ。良い感じでしょ?」
日本にいた頃も、そういう色に髪を染めている人は見たことがあるが……まさか
しかし、彼女が日本人顔ではないせいか、おとなしくない髪色でも違和感はない。
それに、すごく自然に見える染まり方をしていた。
なんというか、いかにも染めましたという安っぽさがないのだ。
しかし、何故こんな派手な色にしたのだろう?
てっきり元の色に染め直すとばかり思っていたのだが。
そんな疑問を抱いていると――
「綺麗に染まったでしょう?」
――達成感に満ちた、メルクオーテの声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます