第16話 122回111日目〈4〉S★1
しかし、機嫌よく笑えていたのも束の間。
ズグゥはハキに冷や水を浴びせられることになる。
「何言っているの?」
ハキは呆れたとばかりに肩をすくめ、眉根を寄せ強い口調で続けた。
「話を逸らそうたってそうはいかないわよ。それって次の仕事の話でしょう? いいこと? 大事なことだから教えてあげる。私は今! 今晩! 水浴びで髪を洗う時に飛び散った肉片を処理するだろうことをうんざりしてるの! それに、目の前の仕事も終わらない内に次の仕事の話だなんて、足元すくわれるわよ」
そして、しめに彼女はギロリとズグゥをひとにらみする。
流石のズグゥもハキの刺すような視線をあてられ、簡単に次の言葉が出てこないようだった。
彼はデカイ図体をちぢこませ、とつとつと話し始める。
「わ、悪かったよ。けど、こんな細っこい女一人捕まえるだけでこの額だぜ?」
ズグゥは手配書に並んだ数字を指さし、未練がましくハキに見せた。
次の瞬間、ハキはぱっとズグゥから手配書をかっさらう。
彼女は手配書をビリビリに破くと、紙切れとなったそれをズグゥに返した。
「あのね、簡単に捕まらないからこんな額で手配されてるの。それに、私達は賞金稼ぎじゃなくて、冒険者。でしょ?」
この一言はズグゥにとってトドメだ。
「そう、だな」
彼はゆっくりと頷くとハキから紙切れを受け取り、荷物の中に突っ込んだ。
そんな二人のやり取りを見ていると、急にくいくいと服を横に引っ張られる。
引っ張られた方へと目を向けると、ヒサカが俺の袖をつまんでいた。
「ハキ。ちょっと元気になったよね」
そう言って、ヒサカは嬉しそうに笑う。
俺はやれやれと肩をすくめ「やけくそにも見えるがな」と返した。
その、直後――
「静かに」
――見張りをしていたヤサウェイの放った一言が、全員に緊張感を与える。
「どうやら気の早い奴が一人、起きてきたみたいだ」
ヤサウェイの視線の先には地面を掘り上げ、墓の底から上半身を引きって現れる一匹のゾンビがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます