第15話 122回111日目〈3〉S★1
それらの紙にはそれぞれに人の顔が描かれ、絵の下には数字が並んでいる。
細々と書かれたこの世界の文字が俺には読めなかったが、それでもこれが指名手配書なのだろうと見当をつけることができた。
「こいつら、賞金首って奴か?」
「ご明察! 三人ともここら辺に潜伏してるって情報のある賞金首らしい。で、特にコイツだ」
彼は喜々として語りながら、俺達に一枚の手配書を指さして見せる。
「『ひっかき傷のヤシェーリア』詐欺と殺人で7ヵ国から指名手配中の女だ。二、三日前にもこっから西の方の街で目撃されたらしい。今、コイツ目当てに流れて来てる賞金稼ぎも少なくないってよ!」
ズグゥの指先にはフードを深く被った女性が描かれていた。
しかし、容姿や髪型といった特徴はまるで描かれていない……。
だが、唯一と言っていい彼女の特徴――頬にある三本のひっかき傷はなによりも印象的だった。
「すごく綺麗な傷ね……」
そんな言葉に俺は手配書から顔を上げる。
声の主はすぐにヒサカだとわかった。
彼女はまじまじと手配書の女の顔を見ながら、不思議そうに自分の頬をさすっている。
すると――
「もしかしたら、故意につけた傷なのかもね」
――しょげ込んだまま、視線だけをこちらに投げてハキが話し始めた。
「宗教的な何かか、呪術的なものか。その女の感性、趣味って線もあるけど。いづれにしろ、それだけ特徴のある指名手配犯なら長くは逃げられないでしょうね」
どこか皮肉っぽくいうハキにヒサカはなるほどと頷く。
直後、バシバシとズグゥが手配書を叩きながら口を開いた。
「でよ! オレらも狙ってみないか? この『ひっかき傷』! ゾンビ討伐なんかより報酬もずっと多い。少なくとも肉片が飛び散って髪を洗う時にイヤな思いはせずに済むと思うぜ?」
そう言って俺達を誘うズグゥはとても楽し気だ。
にやりと歯を見せて笑う彼は、既に頭の中で賞金の山分けは終わったという顔をしていた。
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