第14話 122回111日目〈2〉S★1
「なんだよハキ。最初はおめぇだって乗り気だったじゃねぇか」
ぐっしょりとかいた汗を拭いながら答えるズグゥに、キッと眉根を寄せたハキが噛みついた……しかし。
「あれはタケをからかうのがおもしろかっただけ。仕事に乗り気だった訳じゃないわ。はぁ……もっとよく考えるべきだった。この時期のゾンビって腐りが早くて臭いがきついし、斬りつけた時に肉片がびちゃびちゃに飛ぶし。もう、ホント……はあぁ」
責める口調は束の間。
彼女は深い溜息の後、すぐ俯いてふさぎ込んでしまう。
すると、ズグゥは軽口をはさみ、ハキに追い打ちをかけようとした。
「おうよ! おかげで誰もやりたがらない。だが、この時期ゾンビの討伐報酬は増額されててうまみがあるぜ」
臭いくらいなんだと開き直って豪快に笑うズグゥ。
ハキは彼の笑い声に辟易したのか、俯いたまま動かなくなった。
そんな彼女を心配してヒサカが顔を覗き込もうとしたその拍子、ハキは急にむくりと顔を上げる。
「高い報酬なんて知らない! もっと私達に見合いの仕事はなかったの? わざわざこんな仕事をしなくても良かったじゃない!」
「真面目に話すとよ、良い仕事はあらかた取られた後だったんだ。オレ達が着く前日にデカイ商船が来たみたいでな。それの護衛仕事が終わった冒険者がこぞってギルドに押し寄せたらしい。後に残ったのはゾンビ討伐みたいな色物か新人向けのおつかいばかりだったんだ」
ズグゥの言い分を聞くと、ハキはまた水をかけた燃えさしみたいに沈みこんだ。
「あと一日早ければ……まさか、あの野営がこんなところに響くなんて」
がくりと肩を落とし彼女はそれきり沈黙してしまう。
だが――
「ただよ。その商船の連中、商売敵だけじゃなく稼ぎ話も運んで来たみたいだぜ?」
――直後、ズグゥはハキを元気づけるともからかうともとれるにやりとした笑みを浮かべて、三枚の紙を取り出した。
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