討伐-ゾンビ-
第13話 122回111日目S★1
この世界ではゾンビを討伐するのに最適な時間は夕方だと言われている。
理由は二つ。
一つは、ゾンビが日光を避け日中は姿を隠しているから。
二つ目は、夜間はこちらの視覚が効かないのに対し、ゾンビが嗅覚と聴覚を頼りに人を襲うからだ。
そう初めてヤサウェイに聞いた時、俺は一つ感心したことがある。
それは、この世界のゾンビには嗅覚があるんだ。と、思ったことだ。
実は、以前にも俺は別の世界でゾンビと遭遇したことがある。
その際、当時仲間だった剣士に「ゾンビは聴覚だけを残した動く死体だ」と説明された。
世界が変われば、ゾンビという存在も様々と言うことだ。
まあ、向こうの世界では嗅覚があることがわかっていなかっただけ……という可能性もあるが、今更それは確かめようもない。
とにかく、俺達はこの世界のゾンビの生態……? を、考慮し、討伐のため夕方になるのを待っていた。
それもゾンビの目撃情報があった墓地群の目前でだ。
じめじめとした湿気の多い墓地周辺はお世辞にも居心地が良いとは言えなかった。
今日は気温が高いこともあってことさらにひどい。
汗をかいた端から服が肌に張り付いていくのは大変な不快感だった。
「あ~……じめじめする、最悪……」
今回ばかりは俺も、緊張感なく泣き言をたれるヒサカと同じような心境だ。
仲間達もそれは同様らしく、木陰に入りながら手で顔を扇いだり、汗で張り付いた服をつまみあげたりと各々暑さをしのいでいた。
「はぁ……本当に最悪ね。今朝もシャワーを浴びてから街を出たのに、こんなに汗をかくなんて……」
特にハキは口を開けば文句しか出ない状態で、どうやらこの熱気に一番嫌気がさしているのは彼女らしい。
ハキは胸元をはだけさせ、肌があらわになるのも気にせず、服で顔を扇いでいた。
そして……。
「全く……誰よゾンビ討伐なんて引き受けた愚か者は……」
そう言って、じとりとズグゥを憎らし気に睨んだのである。
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