その7
※これはあくまでも個人的見解です。
作品の終わらせ方にこそ作者の力量が問われる。
どのような物語でも終わりを迎えなければ、その作品の本当の評価はつけられない。
一巻一巻のまとめ方も大事だが、ひとつの作品の終わり方は何よりも重要だ。
そういう意味で、どのような理由にせよ、未完の作品に良作はあっても名作はないと思っている。それはプロでも同様で、何年何十年と書き綴ろうと、作者本人が終わらなくてもいいと思うようになったとしても、或いは不幸にも志半ばで世を去ることになったのだとしても、未完作品につくのもあくまでも過程点であって最終的な評価はつけられないし、つけようがない。
近年長編作品が多い中、満足のゆくエンディングを迎えた作品は少ない。繰り返し読みたいと思える作品を挙げるのも難しい。もちろん、それは読者それぞれの受け止め方もあり、一概に言うことはできないが、物語を上手く結末に導くことができない作家が増えていると強く感じる。
昔からそのような作家はいる。風呂敷を広げるだけ広げて、最後の最後で辻褄合わせにバタバタと話を収束させたり、あるいは伏線を拾い忘れて完結後に指摘されたり。また、これも評価の分かれる所だろうが、読者が想像できる無難な終わり方をするのは作り手として力不足であると考える。
作品の後半辺りから不穏な空気を醸し出し、最終巻で読者をがっかりさせる。そうなることがわかって刊行しなくてはならないのは痛恨の極みだが、作品は押し並べて作家の物なので編集が入り込める限度があるのはどうしようもない。
デビュー作がそのままシリーズ化する昨今、話をまとめる能力を見抜けないのはどうしようもないことかも知れない。しかし、何巻も出し続ける間にそれだけの力量を身につけてもらいたいし、そう育てたいのだが、近年の作品は短期間に続きを出すのが一般的となっている。学ぶ時間が少ないことには呵責を感じ得ない。
エピソードをまとめるのと作品を完結させるのとはまるで違う力を必要とする。
プロの作家を目指すのであれば最低でも、掌編、短編、中編、長編とそれぞれに作品を完結させて、腕を磨いて貰いたい。掌編、短編などはいくつ書いても損はない。その上で、何度書き直してもこれがベストと言える最後にするのはプロでも難しい。
いい意味で読者を裏切れることができなければ、この世界で生き残ることは難しい。
近年、尻すぼみの作品ばかりが多いのは実に残念なことだ。
一冊で完結する作品を出してゆくの昔のパターンが最善とは言わないが、物語を終わらせる経験を持たない作家が増える現状は憂慮すべきことだと思う。
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