その4
※これはあくまでも個人的見解です。
一年のうちで新人作家としてデビューされる方が何人いるだろうか。
多くは賞を獲ってのデビューであるから賞の数でわかるだろうが、今現在、いくつあるのか数えるのもひと苦労だ。一般小説の賞は減少傾向にあるが、ライトノベル関連になると、大小の関係なく、webをも含めると恐らく月に二、三度は締め切りがあるのではないかと思う。その上で、大賞以外に佳作や奨励賞、入賞せずとも見込みのある方には連絡をつける場合もあるので、相当数の新人がデビューしているはずだ。
各社で異なるので一概には言えないが、新人作家方に都度、告げることがある。
仕事は辞めないで下さい、という言葉だ。
学生ならば、就職はして下さい、だ。
何の問題もなければ受賞作がデビュー作として発刊するのだが、当然ながらそこはスタートであってゴールではない。
最悪、その一冊で儚く消える可能性もある。一般小説はその確率が高めだ。ライトノベルになると大半がシリーズ物として刊行されることになるが、それもいつまで続くかなど神のみぞ知るとしか言いようがない。
勝負の二作目とよく言われるが、そこに辿り着くのも相当に高いハードルなのだ。
そのため、いきなり作家一本に絞るのは危険だと告げている。
他の職業を経験して作家に転身することはよくあることだ。多くの場合は成功もしくは何の問題もないまま転身するし、失敗したとしてもそれは経験のひとつとして糧となり、役立つこともある。
その逆に、作家から他の職業に転身する場合、作家としてやっていけなくなってそうなることが殆どだ。若ければまだましなのだが、それなりの年齢となると相当苦労をすることになる。
昔はまだしも、今現在、職業作家として食べていくことははっきり言って難しい。
作品のファンはいても、作者のファンにまでなってもらえないことが多いからだ。
それでもシリーズ物が続けばメディアミックスも相俟って、作家としてやっていけるのではないかと思われるかも知れないが、そうでもない。
メディアミックスが常套手段となっている昨今、色々と収入源が増えたように思うかも知れないが、しかしながらそれらで得をするのは出版社、アニメや映画の制作会社等々であり、作家の手元に入る収入というのは然程多くないのは、分野は違うが海猿事件などでご存じかと思う。映像化されるのは最早一種のステータスであるのと同時に、宣伝手段の一つでしかなくなっているのだ。映像化と同時に人気が上がり、終了と同時に人気がなくなる。盛り上がらなければ原作にまでその悪影響が出て、打ち切られることすらある。
そんな中で二作目、三作目と商業ラインに乗るレベルの作品を生み出せるのはほんの一握り、文筆業で生計を立てられるのはその一部、更には一生涯を通して作家としていられるのは数えるほどしかいない。
一年間でデビューした中に二、三人いれば僥倖と言える。
デビューしたからと言って安心してはいけない。
シリーズ物を書かせてもらったからと言って安心してはいけない。
メディアミックスを含めてひとつのシリーズ物を手懸けても、それだけで生きていけるのは数年に一度の大ヒット作だけだ。
二作目、三作目と人に読んでもらえる作品を書き続けなければ、道はすぐに閉ざされる。
夢だけで続けられるほど甘くはない。
だからと言って夢を失っては続けられない。
作品を書くのと、作家になるのとはその実、まるで異なる意味合いを持つ。
それを理解していない人は多い。
職業作家として作品を作り続ける覚悟。
これは相当に重い。
――引退を決意された貴女の勇気に敬意を表します。ですが、文壇の門戸はいつでも開いていることも覚えておいて下さい――
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