またね。

栗田モナカ

第1話

「またね……」と握手をしてそれぞれの家に帰る。

"またね"がただの約束のない挨拶だという事か分かっていたから、一瞬その手に伸ばすのを躊躇った。


ただの友達の位置から何処にも動けない自分は、この先この想いを抱えたまま生きていくのだろうか。


どうにもならない人だから、どうにもならない苛立ちを覚えて、いっそのこと気持ちをぶつけて終わりにしてしまおうか。そんな風に感じてみたり。


でもどうしても。どうしても友達でいいから、このままでいたいと思ってしまうのも正直な気持ち。


ずっとずっと好きだった。ずっとずっと好きな人。

手を伸ばしても届かない、それでも大切な人。


今度の約束なんて当然ない。いつ会えるかなんて、分からない未来。


貴方の暖かな手を一瞬握って、じゃあって言ってバイバイした。


悲しいのか、悔しいのか分からない。自分が隣に居られない人間だから、歯痒さばかり感じてる。


この先どうしたらいいのか、この先どうなるのか、多分きっと答えは出ているのかも知れないし、出ないかも知れない。


初めて握った貴方の手を、離したいのか違うのか、分からなかった。


友達のままで、このままで。想いを胸にしまい込んで。いつもの様にメールを送って、何でもない話をして……。


「好きです」の言葉は日常に隠して、いつの日か、「またね」のセリフが現実になる様に願おうか。


もう一度、貴方と握手をしようか。


ただの友達として……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

またね。 栗田モナカ @Seriemi0113

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る