第1話

 私の席は廊下側の一番後ろの席だった。

 隣には誰もいないため手始めに前の席の男子について調査を開始しようと思う。


 前の席にいる男子は見た目は人間だ。だけど、担任の話によればこのクラスに人間は私だけみたいだ。少し気になるのは人間が私だけって担任が私に言う時に少し間があったことだ。まぁ、気にしてもしょうがないか。


 私にとってクラスメイトがめずらしいのと同じで、クラスの人たちは人間の私がめずらしいのと転校生だということで休み時間ごとにやたらと群がって話しかけてくる。

 その中には背の小さい人耳がとんがっている人浮いている人獣人などなど。私にとっても興味深い彼等だけれどさすがに休み時間ごとに群がられるのはいいかげんうんざりしていた。

 ただ、群がる人たちから前の席の男子がヴァンパイアだという情報は得られた。

 ヴァンパイアといえば、若い女性の血を吸う種族で、ニンニクと聖水と銀が苦手って聞いたことがある。それと太陽の光を浴びると灰になるとかならないとか。

 でも、今は思いっきり昼間で目の前の席にはちゃんと金髪のイケメンが座っていて授業を受けてるのだけど、これはいったいどういうことなのだろう。

 

 授業が終わった私は人外たちに群がられるよりも先に教室を出ることに成功した。

 とりあえずお昼は群がれることなく過ごしたい。購買でお昼を買った私は屋上へと向かった。

 季節は春。桜は終わってしまったけれど日向ぼっこするにはちょうどいい気温だ。

 ひさびさに自由な時間が持てた気がして、どこで食べようかと屋上を見渡すと、角っこの方に太陽に照らされて輝いている金髪の男子がいた。

 私は彼に近づいた。


「ヴァンパイアなのに太陽の光大丈夫なの?」

 隣いい? とか一緒に食べてもいい? とかではなくそれが私の第一声だった。

 さすがにこれはないかもしれないと内心焦ったが、

「僕はヴァンパイアと人間のハーフだから大丈夫なんだ。夏はさすがに日焼け止めとサングラスと帽子が欠かせないけれど」

 苦笑しながらも彼は答えてくれた。

 彼の名前はマリア・ステレアというらしい。女の子みたいな名前だ。それが顔に出ていたのかもしれない。

「女の人みたいな名前でよく間違われるんだ」

 マリアは困ったように言った。

 了承も得ずにたくさん質問するのも悪いと思い、先に質問してもいいか聞いてみたらいいよと言ってくれた。

 血は飲むのか、にんにくや銀や聖水はほんとに苦手なのか。変身できるのか。

「さっきも言ったけど僕ハーフなんだ。だからなのかあんまり血が欲しいとは思わないんだよね。普通の食事で今はまだ大丈夫なんだ。にんにくは普通に食べれるけど銀と聖水はちょっと苦手かも」

「じゃあ好きな子は?」

「え!? それも答えなきゃダメ?」

「ううん、流れ的に聞いた方がいいかなって思って。でもその反応はいるのかな?」

「いないよ!」

 なんて、他愛無い会話もしつつヴァンパイアのことを聞くことができた。

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蓬梓の調査報告 樹雨 @arbo-pluvo

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