ハンターの休日
@nutaunagi1205
第1話
「あらぁ〜! オオカミさんじゃないのぉ〜!ねぇなに飲むぅ?いろいろあるよぉ!」
「やぁ、久々だね。そうだなぁ、リラックス出来る紅茶とかあるかな?」
ここはこうざんの上にあるジャパリカフェ。巨大セルリアン戦後の祝宴でアルパカが紅茶を振る舞ったことにより知名度が上がり以前より賑わっているようだ。
「おや、あれは…」
カウンター席にも二人のフレンズが座っていた。彼女達もまた、巨大セルリアンと戦ったメンバーの一員だ。
「これは、ドラマの予感だね…」
作家としてのセンサーが物語の予感を捉え、タイリクオオカミは楽しげな微笑を浮かべた。
==============================
「い、いやぁ、初めてジャパリカフェに来ましたけど、いいところですね!紅茶も美味しいし、トキさんの歌もその、刺激的で…」
彼女はリカオン。快速と並外れた持久力を持つ優秀な
「…ん?あぁ、そうだな、此処までの山登りはなかなかいい運動になった。トレーニングメニューに取り入れてもいいかもしれない」
彼女はヒグマ。ハンターグループのリーダーで、その戦闘力『さいきょー』と名高い。ぶっきらぼうな性格だが仲間想いで冷静な判断力を持った頼れるリーダーである。
「え? は、はい。 じゃなくて!せっかくのお休みなんだからトレーニングは忘れましょうよぉ!」
(ていうかヒグマさんから休日のお誘いなんて初めてなんだけど!?もしかしてなにか怒られるんじゃ…)
「はぁ?何言ってるんだ。ハンターたるもの… じゃなくて… まぁ、そうだな。紅茶も美味いし、トキの歌も刺激的で…」
(えー! それさっき僕が言ったやつじゃないですか! しかもいつものヒグマさんだったら確実にお説教コースだったのに… これは益々おかしいぞ…)
(やばい… これもしかして最初にリカオンが言ってなかったか? そもそも普段何喋ってたっけか…)
〜回想〜
「あたしが前から行く!キンシコウは後ろから石を狙え!リカオンはキンシコウを補助だ!」「ママぁ〜」「バーベルスクワット500本だ!グダグダ言うなリカオン!」「キンシコウママぁ〜」
〜終了〜
「…」
(…駄目だセルリアン狩りとトレーニングの話しかしてない。いやていうか何だキンシコウママって!?言ってないぞ!そもそもキンシコウが「たまにはリカオンさんと二人でカフェでも行ったらどうですか?楽しくお話して親交を深めるのも大事ですよ?」なんていうからこんなことに…)
苦悩するヒグマ。その顔はセルリアンが逃げだしそうな程の迫力を醸し出していた。
「…」
(ヒグマさんめちゃくちゃ険しい顔してるー! はい終わった!僕の平和な休日は終了です!)
「そ、そういえばこの前の巨大セルリアン戦は危なかったな!ボスが皆を集めてくれなかったらどうなってたか…」
(ちくしょう!またこの話題を出してしまった!もう5回は話しただろこれ!)
考えに考えた結果、出てきたのはセルリアンの話題。彼女は悲しいほどハンターであった。
「は、はい!そうですねぇ、ライオンさんやヘラジカさんは凄かったですね。僕もあれ位パワーがあればなぁ…」
(またこの話題かぁ… もう15回位聞いたなぁ…)
「ああ、あいつらとは一度手合わせしたいもんだ。それにあいつらだけじゃなくジャガーとオオカミもあんなに強かったとはな」
「はい。ジャガーさんはパワーもスピードもかなりのものでしたね。タイリクオオカミさんは頭もいいし持久力があって… はっ」
(この話の流れ… ヒグマさんの険しい表情… 分かったわ!僕はクビね!)
冴え渡るリカオン探偵の迷推理。ヒグマの口下手とリカオンの自信の無さが生んだ悲しい事件であった。
「そうだな、あの後タイリクオオカミと話したがかなり頭のキレるやつだ」
「ええ、そうですね…」
思考のデフレスパイラルに陥るリカオン。しかし戦闘の話題になると周りが見えなくなるヒグマは気がつかない。
「戦闘では確実に関節を狙っていたし周囲がよく見えていたな。チームプレイでこそ真価を発揮するタイプだろう」
「う、うぅ〜!」
「ん? お、おいどうした、どこか痛むのか!?」
カウンターに突っ伏してしまうリカオン。ここでようやくヒグマもリカオンの様子がおかしいことに気づく。
「今まで、ありがとうございました!」
突然立ち上がり感謝を述べるリカオン。驚いてぽかんとするヒグマ。
「あの時セルリアンから救っていただいた御恩は忘れません!「いやおい」これからもヒグマさんから教わった心構えを忘れず「いや待て待て待てって!!」
「突然どうした!?何の話だ!?」
「えっ 僕はクビで代わりにタイリクオオカミさんが入るんじゃ…」
「はぁ?何言ってんだお前以外に務まるわけないだろ」
「えっ」
予想外の一言にぽかんとしてしまうリカオン
「お前なぁ、今更チーム変えるわけ…うわっ!」
泣きながら胸に飛び込んできたリカオンを咄嗟に抱きとめるヒグマ。
「うぅ… うぇええええぇん…」
嬉しかった。自分は認められていた。
ヒグマのようなパワーやキンシコウのような技を持たない自分に自信が持てなかった。
巨大セルリアン戦で強いフレンズ達を見て、自分でなくてもいいのではと不安になっていた。
だからヒグマのぶっきらぼうな一言が、なによりも嬉しかった。
「あー、なんだ、あたしは口下手だからさ、なんか誤解させちゃったみたいだけど、お前の事は仲間として信頼してる。その、これからも、よろしくな。」
「はい… はい…」
泣きながら何回も頷くリカオンとその背を撫でるヒグマ。そんな姿を見て感極まってしまったフレンズが一人…。
「うわぁぁあああん!」
「うぉっ!?」「ひぇっ!?」
二人の元に飛び込んできたのはもう一人のセルリアンハンターであり今回の一連の出来事の仕掛け人ともいえるキンシコウその人である。
「リ゛カ゛オ゛ン゛さ゛ん゛よ゛か゛っ た゛て゛す゛ね゛ぇぇ!」
「は、はい゛い゛いぃぃ!」
「ど、どうすりゃいいんだこれ!わからん!」
一向に泣きやまない二人を抱え、思わずジャガーのような事を言ってしまうヒグマであった。
~fin~
それからしばらく後、『ギロギロと三人のハンター』が出版されアミメキリンちゃんがハンターに弟子入りしようと三人を追いかけ回すのは別の話…
ハンターの休日 @nutaunagi1205
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます