『きみにしか聴こえない』~小説・calling you より~


自分の声が嫌いな私


話したくても話せない僕


そんな私が


そんな僕が


   ー頭の中の携帯電話でー


あなたと


君と


 ーちゃんと形になって話せてる奇跡ー



誰も知らないでしょう?


誰か知ってたら教えて欲しい



私はあなたに勇気を貰ったの


僕は君から喋る事の楽しさを教えてくれた



あなたから貰うラジカセが待ち遠しい


僕が直したラジカセを使ってくれる君の顔が見たい



     ー早く逢いたいなー




上手く話せるかなと言う期待と緊張を胸に


本当の僕を知ったら…と少しの恐怖を秘めて



『今バス停に着きました』


『もうすぐ飛行機が着陸するよ』



       …………。



『やっぱり帰って下さい』


『どうしてだい?』


『逢ったら幻滅しました』


『…それでも僕は君に逢うよ』



     待ち合わせ場所で


     人身事故が起きた…


     倒れているのは2人



  1人は誰かに突き飛ばされ軽い怪我


    1人は車に轢かれて重体



  彼女は出来た人だかりを掻き分け


  ラジカセを抱えて倒れている彼を


      ー見付けた…ー



   彼の胸ポケットには障害者手帳


   彼女は彼の名を泣きながら叫ぶ


   2時間の時差でなった頭の携帯



『…ッ、もし、もし…』


『本当の事、言えなくて…ごめんね』


『そんな事は良いんです』


『君は…君の声に自信を持って…』



『ぼ、く…が…すき…に、なった…こえ、だから…』



   ープツッ、ツーッ、ツーッ…ー



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