コノハ博士とミミちゃん助手

ふぅらん

第1話

日は沈み、辺り一面真っ暗になったとしょかんの中で、一つの影が動いていました。


「この本は…」


影の正体はしまの長である、コノハ博士。

夜目が利く博士は、暗闇に包まれたとしょかんの中でも本を読むことができます。

そんな彼女が手にした本というのは…


「『ワシミミズクについて』、ですか…」


ワシミミズクと言えば自分を慕う、ミミちゃん助手のモデルの動物です。

おそらく博士が手にした本は、ワシミミズクの生態について書かれたものなのでしょう。


「助手のことがもっとよくわかるかもなのです。調べるのです。」


賢く、頭を使うことができる博士はその本を読むことにしました。


「『ワシミミズクは、森林、岩場、荒れ地に生息する、フクロウの中でも大型のフクロウです。その体の大きさや力の強さから”夜の猛禽”と呼ばれています。』、さすが助手、賢いだけでなく強いとは、すごいのです。やるのです。」


自分の助手が強いことに、博士はわが身のように誇っていました。


その本を読んでいくと…。


「『ワシミミズクは、主にノウサギやネズミといった小型の哺乳類を捕食しますが、鳥類もよく捕らえることが知られています。』、さ、さすがなのです…。助手は強いのです。」


ワシミミズクの捕食対象に「鳥類」が含まれていることに、博士は少しびっくりしてしまいました。


さらに読み進めると…。


「『さらにキツネ、テン、イタチなどの肉食獣や、ガンなどの大型の鳥類、ハヤブサ、ノスリ、』」


「『他のフクロウなどの猛禽類。』」


何ということでしょう。

ミミちゃん助手は、かつては他のフクロウを食べていたというのです。


「…。」


博士もこれには思わず口をつぐんでしまいました。


「…助手は、アフリカオオコノハズクを食べていたのでしょうか。」


アフリカオオコノハズク、博士のモデルである動物。

アフリカオオコノハズクは、ワシミミズクとは対照的にあまり体は大きくはないフクロウです。

賢い博士は、ワシミミズクはアフリカオオコノハズクをかつて食べていたのではないか、そう考えたわけです。


「少しだけ…、怖い、ですね…。」


「どうしたのですか。」


「?!?!」


悩む博士のもとに、突如現れたのは…。


「…?そんなに慌ててどうしたのですか、博士?」


「じょ、助手でしたか、驚かさないでください。」


件のミミちゃん助手でした。


「驚かすも何も。我々、音を立てずに飛ぶなど朝飯ではありませんか。」


「そ、そうでしたね…えぇ…。」


「(ど、どうしてこんなに動揺してしまったのでしょうか…。)」


「(まるで…)」






「’’敵に見つかってしまった’’ような驚きかたじゃないですか。博士。」


「…っ!」


図星。

博士は、まるで追い詰められた小動物のような気分でした。


「おや…?それは、私の本ではありませんか。」


「そうなのです。今しがた見つけて…」


今この話題はまずい…。博士はそう感じましたが…。


「何がわかったのですか?」


そうはいきませんでした。こうなれば自然に話題を変えて、とっとと話を切り上げるのに限ります。


「…助手は、とても優秀な動物ということがよくわかったのです。」


「博士にそう言っていただけると、私も嬉しいのです。」


「私も助手が優秀な動物だと思って誇りに…」


「具体的にはどこが優秀なのですか?」


「…。」


話題をそらそうとする博士の賢い作戦が破られてしまいました。


「どうして黙るのですか?博士?」


ミミちゃん助手は、質問に答えない博士に詰め寄ってきます。


「いえ…別に黙ってはいませんよ…」


博士もまた距離をとりましたが…。


「それ以上後ろに下がれませんよ、博士。」


万事休す。としょかんの本棚がすぐ後ろに迫っていました。


「…私を追い詰めてどうするのです、助手。」


「私は別に追い詰めてないのですよ。博士がただ逃げているだけなのです。」


「そんなのは屁理屈です!今すぐそこをどくのです!さもなくば…」


「博士は私から逃げ切れるわけがないですよ。」


「…っ!」


ミミちゃん助手の瞳の奥に怪しげな光が灯ったような気がしました。

それはまるで、獲物の品定めをする猛禽類のような瞳。

そして、その瞳に睨まれた瞬間、金縛りにあったかのように体が動かなくなってしまいました。


「ねぇ、博士…。」


「ひ、ひっ…」


壁際に追い詰められた挙句、金縛りにあった博士の頬を、ミミちゃん助手は優しく撫で上げます。


「た、食べないでください…。」


「博士もかばんたちに言いましたよね。」






「おいしいものを食べてこその人生なのです。」





























「っていうお話を考えたんだけど、どうかな?」


「ダメなのです。私が博士を食べるはずがないのです。」


「あはは、そこは物語だからいいじゃないか。」


ここは、じゃぱりとしょかんの外。以前、かばんちゃんが博士と助手にりょうりをふるまった場所です。

そこで、タイリクオオカミが新作を作るために、協力者であるミミちゃん助手に、その内容を話していました。


「それを言ったら、あなたこそ他のフレンズを食べるじゃないですか。」


「いやいや、オオカミは肉食のイメージがあるから意外性がなくて面白くないんだよ。」


「これだからオオカミは…。」


ネタ探しのために、他のフレンズに怖い話をして、その表情をスケッチをすることはあまりにも有名です。今回もそのつもりのようでしたが、ミミちゃん助手は全く動じませんでした。


「けどまぁ、一応博士と助手がでてくるからね、確認だけでもしてほしいんだよ。」


「確認だけということは、断っても作るんでしょうね、あなたは…。」


「いいじゃないか、面白い作品ができるんだから。」


「全くあなたという人は…。」


「気にしない、気にしない。それでさ、博士にも確認を取りたいんだけれどもどこにいるのかな?」


「あぁ…博士は…」














「ここにいるですよ。」


「…え?」


オオカミさんの問いかけに対して、ミミちゃん助手は手をお腹の上にのせ、さすっていました。


「何がおかしいのです?」


「え、え…?」


思いもしない返事にオオカミさんは、状況が飲み込めずにいました。


「あなたも言ったじゃありませんか。」











「おいしいものを食べてこその人生なのですよ。」




























「いい顔いただきなのです。」


「いぇーいなのです。」


「へ…?へ…?」


オオカミさんの後ろには、コノハ博士が。そして目の前には、『ドッキリ大成功』と書かれた看板をもったミミちゃん助手が。


「オオカミの怖い話をして、他のフレンズを困らせるとたくさん苦情が入ってくるのです。」


「そこで、私と博士であなたを驚かせて、辞めさせるようにしたのです。」


「…そういうことか。やられた。」


まんまと罠に引っかかってしまい、思わず苦笑いがこぼれるオオカミさん。


その様子を見て、博士と助手は口を重ねます。






「「当然です。我々は賢いので。」」


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コノハ博士とミミちゃん助手 ふぅらん @_bad_apple_

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