こうぶざせき

@syame

第1話

「ハカセたち、かばんちゃんがいなくなって寂しそうだったねー。きっと『りょうり』が食べれなくなって悲しいんだよ!」


「そうだねサーバルちゃん。僕も、自分のナワバリがわかったら、また戻って来て、料理を作ってあげられるといいな…」


ジャパリバスに揺られながら、「みずべちほー」を目指す三人。ラッキービーストのボスは運転に集中しているようだ。「みずべちほー」への道は平坦で、車体も揺れず快適だ。


「あー!そうだ!かばんちゃん、見てみてー!」


サーバルはおもむろに大きな大きな紙を取り出した。


「うわぁ!サーバルちゃん!?どこから取り出したの!?」


「へっへーん!すごいでしょ!ハカセにもらったんだ!」


どこに隠していたかわからないが、驚くかばんに対してサーバルは自慢気だ。


「ねぇ、かばんちゃん。前にセルリアンを倒したの時のあの『飛ぶやつ』作ってよ!これなら大きいのが作れるよ!」


「あぁ、あれは『かみひこーき』っていうんだ。…僕もなんで作れるのかわからないんだけど…。この大きさの紙だとちょっと大きすぎるかな…」


「そーなんだ…大きいのが作れると思ったのに…」


サーバルは残念そうな表情だ。きっと大きな紙飛行機を作ってに違いない。


「あぁ、でも、他のなら作れるかも!これをこうして…」


大きな紙を折り始めるかばん。


「なになに!?なにを作るの?」


興味津々のサーバルをよそに、黙々と

紙を折るかばん。


「……最後にここを差し込めば…できた!」


かばんが作り上げたのは、尖った山のような形をしていた。


「かばんちゃん、これはなに?お山みたいな形だけど…?」


「これはこうやって…」


かばんは被っていた帽子を取り、作った山を被ってみせた。


「これは『かぶと』っていうみたいです。たぶん…」


「すっごーい!かばんちゃん、ヘラジカみたい!紙でツノがつくれるんだ!わたしも被るー!」


かばんは『かぶと』頭からを取るとサーバルに渡した。

サーバルは勢いよく『かぶと』を被った。



ビリッ



サーバルの耳が『かぶと』を突き抜けた。『かぶと』から耳が飛び出ている。


「うわっ!ごめんなさい!破れちゃった!!どーしよー!?」


慌てふためくサーバル。


「サーバルちゃん……あは、あははははははは!」


一方のかばんはその様子を見て笑い転げている。


「えっ!どーしたのかばんちゃん!?壊したのに怒らないの!?」


「だって、サーバルちゃん、似合って…あはっ…あははははは!」


「そんなに笑わないでよ!」


さすがのサーバルも恥ずかしくなったらしく、かばんにほんの少しだけ怒ったようだ。


「ごめんねサーバルちゃん。実は、僕もハカセにいくつか紙をもらってきてたから続きをやろう」


かばんは自分のカバンから数枚の紙を取り出す。サーバルの持っていた紙と違い、小さくて色鮮やかだ。


「きれーな紙だね!」


「『おりがみ』っていうんだって。

としょかんに本と一緒に置いてあったんだ。ハカセが持っていってもいいっていうから貰ってきちゃった。『かみひこーき』も載ってるね。一緒に作ろうか」


「よーし!よく飛ぶやつを作るぞー!」


気合を入れるサーバル。だが、作り方はわからないので、かばんのまねをして、一生懸命に折っていく。

かばんは器用に折っていくが、サーバルはなかなかうまくいかない。指先が上手く使えないようだ。


折り上がった『かみひこーき』をテスト飛行させてみるが、サーバルの飛行機はすぐに墜落してしまった。


「ふぎゃー!難しいや!かばんちゃんはきよーだね。私には難しいかも…」


「そんなことはないよサーバルちゃん。ほら、サーバルちゃんの『ひこうき』の翼を広げると…」


墜落したサーバルのひこうきの翼部分を広げて飛ばすと、先ほどとは違い、ユラユラと浮かんで飛んだ。どうやら翼が上手く広がっていなかったようだ。


「すごーい!かばんちゃんありがとう!」


かばんに抱きつく、サーバル。


「サーバルちゃん…!くすぐったいよ…」


かばんは照れくさそうに、赤面している。


「よーし!もっと練習して、かばんちゃんの『ひこーき』みたいに遠くへ飛ぶやつを作るぞー!」


サーバルは気合を入れてひこーき作りに取りかかる。すると、運転席のボスが話しかけてきた。


「もうすぐ、『みずべちほー』だよ。今日は天気もいいから、ペンギンたちのライブが観られるね」


「ああ、もう着いちゃった…!続きはまた今度だね!!」


サーバルは名残惜しそうに手を止めた。もうすぐ『みずべちほー』に着く。


ボスはバスを止めた。


「着いたよ。ここから『すてーじ』まで歩いていこう」


「よーし!早くペパプに会いにいこう!かばんちゃん!早くー!」


サーバルは四六時中元気なようで、バスから颯爽と駆け降りた。夜行性だとは思えない。


「待ってよ!サーバルちゃん!」


かばんもサーバルを追いかけるように『みずべちほー』に降り立った。

この先に新たな出会いが待ち受けているのだろうか。


「かばんちゃーん!早くおいでよー!」


すでに30mは先を走っていっているサーバル。


「行きましょうか、ラッキーさん」


「わかった。いこう」


ボスと共に歩き出す。かばん。


サーバルは忘れているかもしれないが、耳で突き破った『かぶと』を被ったままだ。


サーバルちゃんに追いついたら、はずしてあげようと思いつつ、やっぱり似合ってるなぁ…とも思うかばんなのであった。

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