おれのフレンド
りろ・だは~か
おれのフレンド
目が覚めたら、おれは地上にいた。確か、エサを求めて出てきたら、何かが飛んできて……たぶん、今に至る。
とりあえず立ち上がり――それによって、初めて気付いた。
おれに、さっきまでなかったはずの「手足」がある。それを認識した瞬間、頭の中ですべてが繋がった。
サンドスター、フレンズ化、ジャパリパーク……滝のように流れ込む情報をひとつずつ整理していくと、ある疑問が生まれた。
「おれは……いったい、何のフレンズなんだ?」
フードがあることと、尻尾の形状からして、蛇の仲間であることは間違いない。
しかし、何という蛇なのかが、どうしてもわからない。
だからまず、おれは図書館に向かった。
「困りましたね、わかりますか、助手」
「わかりません、困りましたね、ハカセ」
愕然とする、という言葉の意味を身をもって知った。
自分が何者かわからない。同じ種は他に見たことがない。
そんなの認めたくなかったおれは、しばらく図書館に篭もることにした。
だけど文字は読めないし、辛うじて絵は理解できてもそれらしいものは見当たらない。どんなに文献を漁っても、結局「蛇であることは間違いない」という見ればわかる情報しか得られなかった。
失意のどん底に落ちてもはやヤケになりかけてたおれに、肩を叩く者がいた。ハカセだった。
「その様子だと、まだわかっていないみたいですね」
「……んだよ、おれは忙しいんだ。ほっといてくれ」
「やれやれ、性格まで卑屈になってしまったのです。もともとそういう性格のフレンズだったのかもしれませんが」
「っ……んだとこらぁ!おまえにおれの気持ちがわかって」
「わかるかもしれない者を、連れてきたのです」
「……………、は?」
「ですが、必要なかったみたいですね。失礼したのです。この話はなかったことに……」
「あー!あー!ちょ、ちょちょちょちょっと待て!待ってくれ!」
慌てて引き留めるおれに、ハカセは「ふっふっふ、最初から素直にそう言えばいいのです」と言わんばかりの顔をしてい(るように見え)た。ちょーむかつく。
「さぁ、われわれの『さいしゅーへーき』の登場なのです!」
なにやらパークに相応しくない不穏な単語と共に、そいつは連れてこられた。
「コイツなのですよ、ミライ」
「わぁ!あなたが助手さんが言ってた珍しいフレンズさんなのですね!」
「ぴ、ぴゃああああああ!!?」
思わず本棚の後ろに隠れてしまった。けっして怖いとか人見知りとかそういうのではなく、なんというか、けものの本能がそうしなければならないと、おれの身体を動かしたのだ。
「あらぁ、ずいぶんと恥ずかしがり屋さんなフレンズさんなんですねぇ」
「な、ななななんだこのやろー!?」
「急にどうしたのですか、そんなところに隠れるなんて」
「お、落ち着くんだよぉ!」
照れ隠し半分で言ってみたものの、なんだか本当に気分が落ち着いてきた。もしかしたら本当にそういうフレンズなのかもしれない。あれだけ本で調べていたのに、いま初めて知った。
「ふむふむ、見たことのない蛇、人目を好まない……あぁ!もしかしてあなた、ツチノコさんではありませんか!?」
「ツ、チ……?」
「わー!すごいすごい!大発見ですよぉ!実在したんですぇ!やっぱりピット器官とかも持って……」
「そ、それがおれの名前なのか!?おれのこと、わかるのか!?」
思わず身を乗り出してしまった俺に対し、ミライはきょとんとした顔をしていた。
でも、それも一瞬のことで、クスリと微笑みながら、おれの手を握ってくれた。
「はい、私の知ってることでよければ教えますよ。だから、あなたのことも教えてくださいね」
「っ……うん、うん、うはぁああああん!」
ミライに抱きつき、おれは生まれて初めて大声を上げて泣いたのだった。
あれからずいぶん経って、ヒトはパークから姿を消した。
だけどあの黒いセルリアン事件でみんなでカバンを助けたことで、間接的にだが恩返しできたと思っている。
「おーい、大丈夫そうかー!?」
だから船出の日に、柄にもなく外に出てきて見送りまでしてしまった。手を振って応えるカバンに、心の中でエールを送った。
もし向こうのちほーでミライ、おれのフレンドに逢ったら、そのときは……
「……どうか、よろしくな」
おれのフレンド りろ・だは~か @liLoVinale
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