第15話
水元君の幼馴染みの家へ向かった私達は、玄関のチャイムを鳴らした。
「おい! いるんだろ?」
やや乱暴にドアをノックする水元君。
「そんなに乱暴にしなくても……」
私は水元君を制止した。
「なぁんだ。 ばれちゃったの?」
暫くしてそんな声と共に玄関のドアが開かれた。
「お前……。 どういうつもりだ?」
「だって樹、 その子と別れないんだもの。 私達許嫁なのよ?」
「それは親が勝手に決めた話だ。 悪いがオレはお前の許嫁になるつもりはない。 下手にイタズラしないでくれ」
「なによ! そんな子の何処がいいの?」
水元君と幼馴染みのやり取りに私は何も言えず、ただ見守るしかなかった。
「玄関先でなぁに?」
「ママ……」
幼馴染みの母親らしき人が中からやって来た。
「こんにちはおばさん。 騒がしくてすいません」
「あらあら樹ちゃん、 どうしたの?」
「こいつがオレの彼女にイタズラをして……。 後ケータイを返してもらいに来ました」
「ケータイ? 樹ちゃんの?」
「はい」
「あなた……。 樹ちゃんには彼女が居るからって話したじゃやい? なのに何故?」
「だって……樹は私の……」
「許嫁ではないのよ? 現実を見なさい」
俯く彼女は言葉を失っている。くちびるをギュッと噛み締めていた。
「返せばいんでしょ? ケータイ……」
「ああ。 それともう頼むから邪魔しないで欲しい……」
家の中へ入った彼女は、水元君のケータイを手に持って、そっと差し出した。
「ごめんなさいね、 樹ちゃん……」
「いえ……。 では帰ります」
私の手を取り幼馴染みの家を後にした。
「悪かった……」
「え?」
「嫌な思いさせたろ?」
「ううん、 大丈夫だよ」
力いっぱい繋いだ手から、水元君の温もりが伝わる様で、温かな気持ちになった。
「受験終わったらゆっくりしよう」
「うん。 あ! これプレゼント……」
私は水元君に紙袋を渡した。
コーヒー豆とクッキーの入った紙袋。
「中見ていい?」
「大した物じゃないよ」
「いおりからの物は何でも嬉しいよ」
忙しい時期は二人でゆっくり過ごせないけれど、私達は確実に思いあっていると実感できた。
「ほーぉ? 惚気か?」
いつものカフェ、ラテを飲みながらナミに報告した。
「惚気じゃないけど……」
「まあ、 お邪魔な幼馴染みが消えて良かったんじゃないのぉ? まだ分からないけどね」
「そんな事言わないでよぉ〜!」
「しつこい女はしつこいよ?」
「ううう……」
「まぁでも大丈夫なんでしょ?」
「信じるもん」
「ふっ……」
「ナミ〜!」
「受験終わったら甘えなさい」
「そのつもり」
「……ったく。 付き合ってられないから帰るわ」
ラテを飲み干しナミが席を立った。
「落ち着いたら遊ぼ」
「ふふん」
カランカランとドアを開け、ナミは帰って行った。
さぁて勉強頑張らないと。水元君に釣り合う人になりたいし、夢も叶えたい。
高校三年生。紆余曲折あるけれど、夢も恋も一生懸命だ。
高校三年生。 栗田モナカ @Seriemi0113
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