ツチノコさんの一日

@Akepaper

フレンズ

私はツチノコ、ジャパリパークの砂漠地方で暮らしている。


酒と暗いところが好きだ。それと・・・、

おいサーバル、あまりこっちを見るな、恥ずかしい。

今日は、サーバルが私の家に遊びに来ていた。


それほど親しい関係ではないと思っていたのだが、わざわざバイパスを通って   ジャパリバスで来てくれたのだから手厚く持て成してやろう。まずは、私の部   屋に入れた。


私はある遊びをスナネコに教えてもらった。

それは洞窟の砂や土に水を混ぜて、形を作り乾燥させて、固めることで模様や、容器を作ることである。

普段の退屈な生活はこれで、ちょっぴり優雅な物へと変わった。


「わー!でっかいおうちー!」


サーバルが感嘆の声をもらした、こいつはいつもそうだ。能天気で、アホっぽい。


「綺麗な壁だねー、これどうやるのー?」


サーバルが疑問を口にした、サーバルはいつもニコニコしていて、裏で何を思っているのかも分からない。

 何も思ってないのだろうが・・・・。

「これは、ラッキー・ビーストに頼んで持ってきてもらった水を、砂と混ぜて泥にする。

 そして、泥で形造って乾燥させると頑丈になるんだ。どうだ、かっこいいだろ?」

「う~ん、わかんない」

 まったく、これだから。せっかく教えてやったのに。


それから私は、サーバルに遺跡の面白いところを見せた。

一段落すると、いつの間にか、普通の世間話になりかけていた。

洞窟の中に籠っていると、会話をしないからこういう時に困るな。


「ところで、ツチノコはいつも何しているの?」


予期しない突然の質問だった。

私は返答に戸惑った。そういえば、大したことをしていないな。

いつも履いている一本下駄の手入れをしたり、遺跡に傷が出来ていないか見回りをしたり、沸いてきたセルリアンを退治したりする。あとは、たまにスナネコが持ってきた日本酒を飲んだり・・・?


でも、そんなことはすぐに終わってしまう。

そもそも、私は外が苦手だ。サーバルの住んでいる地方もそうだが、砂漠地方は暑い。暑すぎる。だから、日中に移動することは控える。夜は涼しくなるのかというと、そうではない。すごく寒くなるんだ、だから砂漠地方ははっきり言って嫌いだ。

じゃあ、他の地方に行けばいいじゃないかって?

私はフレンズ化する前の性質のせいか、他のフレンズと話すのが苦手だ。

だから、別に不自由していないし、これでいいと思っている。現に自分一人で、この遺跡を管理しきれている。まぁ退屈ではあるんだが。


スナネコとはたまに会って、地方限定のジャパリマンを交換しあったりするが、それほどの仲でもない。ただのご近所さんだ。

とりあえず、私は改めていつもの一日を振り返った。


まず朝、例の異変が起きてからというもの、どうも天候がおかしくなっている。

だから、私は毎日天気を観察することにしている。

ちなみに、昨日の天気はいつも通り曇りだった。


天気を洞窟の壁に彫って記録してから、しばらくの間ボーっとする。

いろんなことを考える。

実は異変が起きる前の記憶がないのだ、ただ何かが起きたということは知っている。

私だけではなく皆、前の記憶がない。だから、例の異変としか呼ぶことができない。

私がフレンズ化する前はどんなだったのか、私の住んでいるジャパリパークは何のために作られたのか。ある程度、憶測はできている。

ジャパリパークは、人間が動物と触れ合いながらアトラクションを楽しむために、作られた。私はそう考えている。

では、一体・・・・なぜ人間はどこにもいないのか。いや、絶滅したのか。

こんなことを考えているフレンズは私だけではないだろうか。サーバルのように、サバンナで日に焼かれていると脳も焼かれてしまうのかもしれない。

やはり、地下に籠ることもいいことなのかもしれないな。


そして、昼。私は小型のフレンズなので、あまりお腹は減らない。

だから、昼と寝る前にジャパリマンを食べるだけだ。

あれ・・・・その後何してるんだっけ・・・・。

まったく浮かばない、つまりそれほど無力で退屈な時間を過ごしているということだ。

思いだそうとしても、浮かばない。洞窟の中の落ちていた石を壁にぶつけて、跳ね返ってきた石をキャッチしてまた投げ返すとか、体を伸ばしたりしてストレッチしたりする。他には・・・?

胸の奥を、何かが締め付けた。


「あれれー?ツチノコちゃんどうしたの?もしかしてー、質問の意味が分からなかったとかー?」

 

まったく、腹の立つ奴だ。物分かりの良いカバンとはまったく違うな。

イラッとしたはずなのに、自然と笑みがこぼれてしまった。

そして、急に悲しくなった。

サーバルはたくさんのフレンズと知りあいで、いつも楽しそうにしている。

私は何をしている?地下でひっそりと生き続けるのか?


悲しくなった。目から自然と涙が零れて、顔を伝っていく。

遺跡の中に、涙の落下音が響いた。


「どうしたの、ツチノコちゃん!ごめんね!調子に乗りすぎちゃったよ!」

 そんなことない、お前は何も悪くない。そう言おうとしたが、言葉が出ない。


「ごめんねツチノコちゃん!もうからかわないから・・・・また遊ぼう・・・」

 返答できない。言葉が喉で出かけるが、重りがついているかのようで発することができない。


「ごめんね、また来るよ・・・・」

 ダメだ、こんなんじゃ・・・・・。



「待ってくれ!!!!!」

 思わず大きな声を出してしまった、サーバルは驚いている。

「その・・・・サーバルは・・・悪くない。」

「サーバルの質問を聞いて、私がいかに無力でつまらなくて、孤独で、捻くれたフレンズなんだと思ったんだ。」

「それで・・・・情けなくて・・・・・」


「そんなことないよ!!!!!!!!」

 サーバルもまた、大きな声を上げる。

「ツチノコちゃんは鼻がいいし!頭もいいよ!」

「フレンズにはそれぞれ得意なことがあるし、ジャパリパークにのけものはいないよ!」

 サーバルは続けた。

「前遺跡に閉じ込められちゃったときも、ピット気管のおかげで私たちはセルリアンからも逃げられて遺跡からも出られた。いっぱい、いーっぱい感謝してるんだよ!」

「ツチノコは、私の大切なすっごーいフレンズだよ!!」

「まだまだ、サーバルにいっぱーい!いろんなこと教えてもらうんだから!!」

 声が出なかった・・・サーバルはてっきり私のことが嫌いなのかと思っていた。

 私のことをフレンズ《友達》と呼んでくれたのは、彼女が初めてだった。

「もう大丈夫だよ、安心してね」

 サーバルが私に抱き着いてきた。恥ずかしさはあったが、それよりも安心感を感じた。

 友達ができたこと、それが何よりも嬉しいことだった。

 私は彼女の温もりに、しばらく甘えることにした。










彼女の無知さや能天気さにはイライラすることが、多くあった。


しかし、彼女との時間は他の何よりも充実していて楽しいものだった。

今ではもう、彼女は私の大切なフレンズ《友達》だ。


ある日、再びサーバルが遊びに来た。

「サーバル、これを見てくれ!!!」

「どうしたの、ツチノコ。何かあったの?」


 私は床に落ちていた、キラキラを光るものに指をさす。

「ジ”ャ”パ”リ”コ”イ”ン”だ”!”!”!”!”」


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