"伝説のサル"《ハンター》キンシコウの実力

@kakugenn

第1話伝説や噂は本当か

ヒトが居なくなったジャパリパークではセルリアンが問題となって居た。小型のもの単体であれば各地のフレンズたちにより自衛が可能であったが、大型だったり大きな群れであったりした場合には取り込まれ動物の姿に戻ってしまうフレンズも多数出ていた。


島の長であるアフリカオオコノハズクの博士とワシミミズクの助手は当初、自分たちが島を飛び回りながらセルリアン狩りをすることをで島の安全を保っていたが、島の全てのセルリアンを相手にすることは難しく、また戦う以外の役割に支障を来すことからフレンズの中でも戦闘能力の高いものにセルリアン狩りをする役目ハンターをするように依頼することにしたのだった。


今日は山のフレンズたちから強いと評判のキンシコウをスカウトに来ていた。

山のフレンズの話によればキンシコウは変わり者で、元々は森のフレンズにも関わらず山の中でも岩が多く集まった場所を住処としているらしく、二人はその場所を目指していた。


「しかし博士、本当にキンシコウは噂ほどに強いのでしょうか」

「助手は心配し過ぎなのです。他のフレンズからの話を聞く限りこの山付近に出没したセルリアンの大半を倒してるそうなのです。論より証拠なのです。」


キンシコウは哺乳網サル目オナガザル科シシバナザル属ゴールデンモンキーという動物のフレンズである。

ゴールデンモンキーは高地の森林地帯を住処とし、群れを形成して植物を主に食する雑食性の動物である。

鋭い爪も牙もなく、特別に強い動物と言う訳ではないゴールデンモンキーがフレンズ化したキンシコウが強いと言うのはにわかには信じ難い話であったが、実際に一つの山の安全を保つほどに積極的にセルリアンを狩っており、強いらしいことは疑う余地が無かった。

島中を飛び回っている博士と助手がキンシコウを知らないのも、その住処付近からはセルリアンの出現で困っていると言う話が無く、会う機会が無かったからである。


「確かに博士の言う通り、この山一帯のセルリアンを一人で狩っているとすれば相当に強いのでしょう。その強さで山だけでなくパーク全体のセルリアンを狩ってもらえればありがいですね」

「その通りなのです。さぁもうすぐキンシコウが居るらしい岩場が見えてくるのです」


博士たちが降り立ったそこは山の中でも特に岩が多く、その中程には後から岩を積んでいったかのような場所があり、博士たちの身長の倍程度の小山になっていた。

その小山の頂に座して居るフレンズが居た。

灰色の背景の中で足を組み背筋を伸ばした状態で目を瞑っているそのフレンズは、その金色の見た目も合間って遠目からでも一目で見つけることが出来た。


「お前がキンシコウなのですか」


博士の問いかけを受けて金色のフレンズが瞼を開いた。


「はい、確かに私がキンシコウですが、どちら様でしょうか❔」


「申し遅れたのです。私はアフリカオオコノハズクの博士」

「私は助手のワシミミズクです。今日はキンシコウにお願いがあって来ました。」


こうして無事に目的のキンシコウに会えた博士たちは深刻化するセルリアン問題とそれに対抗するため《ハンター》が必要なことを話した。


「....話は分かりました。最近どうもセルリアンが多いとは思って居ましたが、パーク全体がこんな状態だと言うなら腕に覚えのあるもので狩らないといけませんね。」


話を聞き終えたキンシコウはそう言って立ち上がり、傍にい置いてあった朱色の棒を手に岩の小山から降り立った。


「その話、お受けします。」


「ありがたいのです。」

「であれば、まずは一度我々と共にセルリアン狩りをしましょう 。我々としても一応はあなたの力を確認したいので」

「それが良いのです、すぐにでも付近のフレンズからセルリアンの目撃情報を集めるのです」


目的を果たして盛り上がる博士たちでしたが


「いえ、その必要はありません」


即座にキンシコウがそう言い放った。


「❔それは一体どういうことでしょう」

「我々は島の長として責任というものがあるのです、確認は必須なのです」


訝しがる博士たちであったが、尚もキンシコウは言う。


「いえいえ大丈夫ですよ、実力は本物ですのでご安心ください」


「ですから、その確認がしたいのです」

「口だけでは信用出来ないので、」


二人の言葉を聞いたキンシコウは片手で棒を体の後ろに回し、もう片方の手を前に突き出した見たことの無い構えをしながら二人の方へと寄っていった。


「な、なんなのです」

「怒ったのですか❔」


「、、、、、後ろ」


「「え❔」」


二人が振り向いた瞬間、キンシコウが大きく跳躍した。


「バシッ‼︎」


振り向いた先には自分たちより一回り大きいセルリアンが居た。そのことに驚きの声をあげる時にはキンシコウが棒によってセルリアンを真っ二つにしていた。そのことに唖然としているとキンシコウが口を開いた。


「探してもらわなくてもちょうど目の前に居るみたいなので、お披露目しましょう」


「すごいのです!」

「これなら《ハンター》もバッチリ務まるのです」


「ありがとうございます。ただ、お披露目はまだまだこれからですよ」


そう言ってキンシコウは棒で森の方を指した。その方向の森の暗がりをよく見ていると、たった今倒されたフレンズと同じような見た目のセルリアンがぞろぞろと森から出てくるところだった。


「きっとお二人がこちらに飛んでくるのを見て追って来たのでしょう。ちょうど良いので、師よりさずかった技の数々をご覧にいれましょう!」


そう言って一人でセルリアンの群れの方に向かって行ったキンシコウを二人は無謀だと追おうとしたが、二人の両足が地面から浮いた時には既に一体を倒していた。その後も特徴的な朱色の棒を体の周りでクルクルと回しながら、見事な立ち回りで見る間にセルリアンを倒していき、20体近くいたセルリアンの群れを一人で倒しきってしまった。


「ふふ、如何でしたか❔」


「すごいのです!」

「これなら《ハンター》の件もバッチリ任せられるのです」

「キンシコウはどうやってこんなに戦いが上手くなったのですか」

「そういえば師がどうのと言っていましたが❔」


強さの理由を聞かれたキンシコウは空を見上げ、かつての日々を思い出していた。


今と違い森で他のフレンズたちと同じように暮らしていた自分。そんな自分を見るなり「ゴクーウ!」と奇声をあげながら寄ってきたヒトというフレンズ❔が居たこと。


そのヒトからゴールデンモンキーがヒトと豚と、あとは河童という聞いたことのないフレンズたちと共に旅をする物語を聞いたこと。


そのヒトが「フレンズ化して道具が使えるようになったから元の動物の強さは関係ない、むしろ君みたいな器用なフレンズは戦い方を覚えれば凄く強くなれるよ!」と自分に戦い方を教え始めたこと


そしてそのヒト、、、、《お師匠様》がある日を境に自分の前から姿を消したこと


それらを一頻り思い出したキンシコウは二人の方を向いた。自分の強さの理由を聞いた二人。話すことは出来るが長くなるし、それに、、、何故だか簡単に教えてしまうとかつての日々が色を失って無価値になってしまうようなそんな気がした。

あの特別な日々は自分だけの大事な宝物にしたかった。

そこでキンシコウは薄く笑みを浮かべながらこう答えた。


「ふふ、謎はけものを魅力的にするものです。実力は本物ですのでご安心ください。」




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