真実


きっと何かの間違いだ。


【これで本当に高3?】

【高3にしてこのクオリティ】

【イラストの人も学生かな】

【高校生尊敬するわー】

【就職?進学?頑張れー(笑)】



次々に流れるコメント。

同時に私の思考もグルグル回り続ける。


だって2人は私のクラスメイトで…



動画サイトの横に別のタブを開いて、検索してみる。



田中の双子 経歴 詳細



こんなんでヒットするのかな…あった。

簡単に見つかった。



その説明によれば、田中の双子(忘れてるかもしれないけれど、あの双子のこと)の初投稿は中3で、現在は4年目になるらしい。

初投稿時の動画は削除されていて、古いのは去年のもの。

そこには説明で初投稿と記載されているが、実際はその2年以上前から始めていたらしい。名前も去年まで別の名前を使用していたため、真の初投稿動画から去年までのを知る者は少ないよう。

再生が伸びたのも去年から。それから頻繁に曲を作り(月に1~2、最低でも2ヶ月に1曲)、有名になっていった。


ということらしい。



私も、双子が中3から投稿していたのは知っていた。確かに去年からと考えると、現在高1の私達と辻褄はあうはず。


でも、実際は3年前には投稿していた。

3年前といえば私は中1だ。

でもこの説明が正しければ、3年前は中3で、現在は…高3。




つまり、双子は………




やだもう、考えたくない。

疲れた。今日は寝よう。


PCの電源を落とし、制服のままだと言うことにも気づかないまま、私は寝た。





色んな事実を知った後の、翌日以降

私は何度か双子に真実を問おうとした。


でも、怖かった。

聞こうとする度に思考が止まる。


「ねぇっゆーくん」

「んー?どうしたの」

「…寒くなってきたね」

「んだねー…そろそろカーディガン着ようかなー?」



話しかける度に、話をそらしてしまう




そうこうしているうちに、気づけば秋も過ぎて…12月になっていた。




「クリスマスー!!」

「今年は曖瀬も家に来るか?」

「…うん、行こうかな」

「じゃあケーキ作る」

「曖瀬ちゃーんっ僕たちの誕生日も忘れないでねー?」

「誕生日…そっか、25日だ…」

「…最近、元気ないな」

「えっそうかな?」

「僕も思ったー」



『2人って本当は高3なの?』

なんて聞けるかッ!!



誕生日。あの話が本当なら…16歳、じゃなくて18歳の誕生日ってことだ。


今なら聞ける…?



「あっもうすぐ委員会じゃん!!」

「もうそんな時間か。曖瀬、また後で」

「うん…」



そうだ、委員会があったのか

2人は委員会に入ってるから…



結局、この後もタイミングがあわず、直接聞くことはできなかった。






「いらっしゃーい」

「お邪魔します」


12月25日。本当に月日って早い。



「ひーくん、ゆーくん

誕生日、おめでとう」

「おっプレゼントじゃん!!」

「ありがと」


プレゼントはストラップ。

ひーくんにはH、ゆーくんにはYの

イニシャルが入ったストラップをあげた。

「綺麗でしょ?一目惚れしたんだ」

「かっこいー…僕気に入った!!」

「携帯にでも付けるか」

「実はねー私も色違いなの」


そう、私も思わず色違いのストラップを買ってしまった。私のイニシャルが入ったやつ。

「私は財布につけてみました」

「いいねー、僕はペンケースにつけようかな」

「あっゆーにぃずるーい」


背後から蠢ちゃん(妹)が登場


「うごめも欲しい!!」

「じゃあ今度買ってきてあげるね」

「やったっ!!おねぇちゃん大好き!!」

「ほら曖瀬ちゃん、いつまで玄関にいるのっ早く座りなさい!!お客様なんだからっ」

「志津子様っお邪魔してます!!」

「はいみんなも座って座ってー」



リビングへ行くと、テーブルにはあふれそうなくらいの料理やデザートが沢山。


私達はそれを食べながら一年を振り返ってみたりしょうもない雑談したりしてた。


「いやー、曖瀬ちゃんがいるだけでこんなに楽しくなるなんてねー」

「うるさいのは毎年だろ」

「うるさいんじゃなくて更に楽しいんだよー!!」

「うごめも楽しいー!!」

「私も楽しいっ」

「志津母さんまで…」

「あっお茶もう切れちゃった」

「うごめお茶のおかわり持ってくるー」

「よろしく、いってらっしゃいー」



私が入ってもよかったのかはわからないけど、楽しいのならそれでいいや







ぴーんぽーん



「あら、誰かしら」

志津子様が玄関へ向かう。


「僕たちへのプレゼントじゃないー?」

「うわーわざわざ宅配便で?」

「年の数の薔薇の花束とか」

「ちょっと歪魅ーそれは引くわー」



と、わいわい騒いでいたのだけれど






「さっさと帰って頂戴!!!」


突然、玄関から聞こえた怒鳴り声。

この声は志津子様。


この一瞬で、場の空気が変わった。



「どーしたの…って…え?」

気になったのか、ゆーくんがリビングから玄関を覗く。

すると、目を見開いてすぐこちらへ戻ってきた。



「ゆーくん、どうかした?」

「なにも。迷惑な客が来ちゃったみたい」

「迷惑?」

「ちょっとね…」




「おーいユガミくーん元気かぁー?」


玄関から今度は男の声が響いた。


「呼んでるけど…」

「いいんだよ別に」



「あれ?崎山のおじさん」


お茶のおかわりを持ってきた蠢ちゃんが呟いた。


「あっ蠢……」

「崎山の……?」

「うん、今来てるの、崎山のおじさんだよ」



私はなんとなく双子に目を向けた。

2人はやってしまったというばつの悪い顔をしていた。






「おぅ、ユガミにヒズミに蠢ちゃーん……と、お嬢さん?」


その声はリビングの入り口から聞こえた。目をやると、そこにいたのは……





「…お父さん?」


写真でしか見たことがない、私の父だった。






「…馬鹿親父」


そう呟いたのはひーくん。


「ん?…お父さん?君は…?」

「アンタ自分の娘の顔も覚えてないわけ?」


ゆーくんがお父さんに問いかける。


「この子は曖瀬ちゃんだよ。」

「え?だって曖瀬は…え?君、曖瀬なの?」


私は黙って静かに頷く。

もう、声を出すのも辛かった。


私のお父さんは、私の事を覚えていなかったーーーー。


そう思うと、涙が出そうになった。


「最低だなアンタ」


ゆーくんらしくない口調。そうとう怒っているのだろうか…そう思った矢先にお父さんが言った。


「おいおいヒズミ、それが父親に言う態度か?」


…へ?

今問いかけたのは間違いなくゆーくんだった。

だけどお父さんは、"ヒズミ"と言った。しかも、「父親に言う態度」って……


「とりあえず親父、帰って」

「ユガミもつれねーなぁ?まぁ突然だったしなー。今日は帰るわ」


そう言うとお父さんは玄関に向かった。


「またその内な、曖瀬」


バタン



お父さんは外へ出ていった。






「……静かだね」


うごめちゃんがそっと喋った。



「………歪魅、曖瀬ちゃんを僕の部屋に通しといて」

「わかった」


そういうとひーくんは私をゆーくんの部屋に案内した。



この部屋に来るのは2度目。

1度目も双子の秘密と私との関係を知ったときだった。



しばらくすると、飲み物を持ってきたゆーくんが部屋に入ってきた。



「突然ごめんね、喉乾いたでしょ?これ飲みなよー」


渡されたのは温かいミルクティー。

その優しさにまた泣きそうになる。



「…話、切り出していい?」

「ん。いいよ」

「ありがとー。…もうこの際、全部話すよ」



そして、私は双子の秘密、お父さんとの関係…



そして、私と双子の本当の関係を知ることになった





「まず僕たちのことね。



実はさ、僕と歪魅は名前が逆なんだよ」


「名前が…逆?」


お父さんは二人をそれぞれ逆の名前を言っていた。

私は双子を間違えたことはない。いや、最初は戸惑ったけど、慣れれば微妙に顔が違うからわかる。


けれど、お父さんが逆に呼んでもそれに反論しなかった。

つまり、そういうことなのだろう。


「漢字は合ってるんだけど、読みが逆なんだ。このことを知ってるのはアイツ…曖瀬ちゃんの父親としづちゃんだけ。うごめすら知らない事なんだ」

「でもっなんで…?」


何故、呼び名を変える必要があったのだろうか

その答えは意外なものだった



「俺はユガミが嫌いなんだ」

答えたのはひーくん。


「え、ひーくんはゆーくんが嫌いなの?」


「歪深は普通に兄弟として好きだ。俺が嫌いなのは…ユガミ、だ」

「僕もヒズミが嫌い。目の前にいる歪魅は好きだけどね」


…混乱してきた。え?ゆがみはすきだけどきらい?ひずみがきらいだけどすき?


「歪深改めヒズミ。僕はヒズミ…僕自身が嫌いなんだよ」

「同じく、だな」


「つまり、自分自身が嫌いってこと?」

「そ。てか名前が嫌い。何この名前ー」

「この名前を着けたのは、親父…曖瀬の父親だ」

「お父さんが…?」


「まぁ、僕たちの嫌いなアイツが名づけた名前が嫌で、お互いに名前を交換することで少しでも名前に縛られないようにしようってわけ。

漢字はまぁ…アレだけど、呼び名位ならちがくても気づかれないもんだしね」


「…もしかして、私に本名で呼ばせないのって…」

「そう、嫌いな名前を呼ばせたくなかったんだよ。

ちなみにしづちゃんはそれを知って、呼び名をゆーくんひーくんに替えてくれたんだ。」


「んじゃ次。俺達と親父の関係…まぁ俺が親父って呼んでるからわかると思うけど」

「私のお父さんは、二人のお父さんでもあるってことね?」

「物分かりが良くて良い妹を持ったよ」

「………妹って、やっぱ私のことだったんだね」


気になってたことの一つ。

同い年なら、私が誕生日の遅い双子の妹になれる筈がない。


「気づいてた?」

「うん。動画のコメから調べてなんとなくだけど」


私は最近の疑問を話した。ここまでくれば躊躇いもない。私はすんなりと話すことができた。


「まぁ、結論をいうと…僕たちは18歳になった。とある事情で2年留年になったんだよね」

「本来は俺らは高3だ。だから曖瀬の2つ上になるな」


「そして…そろそろ一番気になるだろう…僕達とアイツとの関係だけど」



処理が追いつかないけどまぁ大体わかればいいか。

さぁ…確かに気になる関係。


「アイツが俺たちの親父なのは把握済みだよね?……それで、あの時のカセットのやつあるでしょ?」

「11年前の私の誕生日のね」

「そうそれ。あの時の説明、実は一部嘘なんだよね」

「まぁ、でしょうね」

「…実はあの時、一緒に住んでたんだ」

「……ほぅ」



ここまでは予想してた範囲。

だけど、これ以降はほとんどが初めて知った内容となった。





「その前に。しづちゃんの年齢っておぼえてる?」


「志津子さまの年齢…31じゃなかっ……!!!ちょっとまって」




待って、双子が18になったってことは…?



「気づいた?」

「志津母さんの年を考えると31-18で13歳になるんだ」


「ちょっ計算してたのに!!!」



すまない、とひーくんはいう。

そんなことより…


「じゃあ母親違うの…?」

「そういうことねー」


「でも、志津母さんが15歳で子供を産んだのは本当なんだ」

「え?」



15歳は本当?

うごめちゃんは…まだ12歳だし。



「僕たちが15、6歳と仮定したときでつじつまが合うんだよ?つまり志津ちゃんの本当の子の年齢は?」


「えっ16歳…」






ちょっとちょっとちょっと、タイム。

えっとつまり?二人が言いたいことって??




…そんな馬鹿な話






「あのさ、私ちゃんとお母さんいるよ?」

「知ってる。《育ての母》はその人間違いない」



育ての母?お母さんが?



…どういうことなの



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メロディ. 雪森ぎはる @guihal

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