最終話 神様、君の初恋を僕に下さい。
「それで?
「だってあからさまにホテルに
「はははっ。ほんと
「うっさい」
ストローを加えて一気にグラスに入っているアイスコーヒーを
大学は有名私立大の
と、自分のプロフィールをいくら見返しても
これからの
「一華はどう? そろそろCM
「無理無理。もう
言いながらビールを
「あーあ。いい男いないもんかね」
「一華はまだいいでしょ出会い多そうだし。私のほうが
「いい先生いないのー?」
「いないし大体が
「あー行き遅れね」
「私も馬鹿にできないわよ」
二人揃ってため息がこぼれる。そこには
教師が
こういう時に彼氏の一人でもいれば違うのかしら……。
思ったところで出会いがない現実なのでこうしてアルコールを
一華は
あと風の噂で
みんな卒業してもバラバラに見えて結局どこか
いや仕事するまでが人生の夏休みってよくいったもんだ。
「ところでさ、侑奈にいい話があるんだけど」
「何?
「いや私を何だと思ってんのよ。違う違う、普通に合コン開くから来ればって」
「パス。どうせろくでなしでしょ」
「決めつけるわねぇ。まぁその通りなんですけど」
「ほらみなさい」
こんなくだらない話を二時間、三時間で
ゲームしたいけど来週は遠足あるからその準備もあるしなぁ……。
昔の自分がいたらさぞ言ってやろう。
× × ×
「で、
「しーらない。で、ユマロマはいつ仕事すんの?」
「
「私のアシスタントをそこまで
秋葉原の駅近くにある
数か月の
まぁ唯一の不満は全員揃ってないことなんだけど。
数年の付き合いがあるユマロマにnichさん。今は漫画家としてデビューしそこそこ売れているらしい。
んで、俺の横にいる魔王と速水さ、あぁ本名は歌恋さん。
数年前から俺らのグループで適度に付き合っている有名イラストレーターでその彼氏がこんな
と、ここまでが高校時代までのメンバー。
「でもいいじゃないですか。僕なんて大学にもいかずにラーメン食べる日々なんで」
「ほぼ毎日のようにラーメン食べて太らないってアオちゃん何なのほんと……」
ドヤっとご
元々アオは雨が
俺らの心を
ただ雨が紹介するまでに
「あーあ。
「ゲームの影響で始めたのはいいけど
「へいへい」
「ほんといい
ユマロマはのんきそうにビールを大きく喉に流し込む。こんなんでもnichさんと結婚してるっていうんだから世の中おかしい。彼女いない歴=年齢なんて経歴いらないし
「で、雨はなんだ? そろそろ帰国か?」
「
「そうね。でも今日くらいは許してあげましょう……締め切り明けだし」
「あぁそういう」
「そういうこと」
オトナな女性にウィンクされてしまえば何も言うまい。
しかしそれはこの人が独身だったらの話。というよりもこのグループでカップルが多くなければでの話でもある。つまり
いやいますよ気になる女性の方は、もちろん。
いるけどこういう時どう誘ったらいいかわかんないしそもそもここの連中とはあくまで友達なんて思われてるかもしれないし。
「ちょいとトイレ」
言って席を立った。
戻る頃にはさらにアルコールが進んだユマロマ
男子トイレに入ると
「リズ君お疲れ様」
「あ、お疲れ」
出るとトイレ前の
「なんか
「いつものことでしょこの
「落ち着かないのはヲタクの
「それいつ休めるの?」
「さぁ。ヲタ卒とかじゃない?」
さて―――二人きりである。
「あ、あのアオさん」
「ん?」
赤く染まった頬と優しい笑み。あと
ただデートに誘うだけ……なんだがハードル高くね? あいつら
「お、俺と、えっと俺」
「んーもしかしてあれ? 告白?」
「え、いやそういう」
「そうなの? リズ君、僕のこと嫌い?」
「それはない! もう大好きとしか」
「あはっ」
面白そうに俺を見つめるアオさん傍ら多少の酔いとはいえ自分の発言に気付ける冷静さが残っている俺は
や、やっちまった……。
「い、いや違くて! 今の好きはそのヲタク友達として」
「えー女の子として好きとかじゃないんだ」
「え、いやあの」
「それも違う?」
なんなんだこの掌の上で踊らされている
じゃなくてどうすんだよ、これ。エロゲみたいに
「えと、そのつまりですね……好きっていうのはその……その」
男らしさの欠片もない
我ながら
「じゃあさ、リズ君の好きがなんなのか確かめようか。
「よ、
「うん。じゃあ戻ろっか」
とんとん
されど気分は
「……雨もこんな気持ちだったんかな」
まるでアニメのようなセリフを
ほんとヲタクだよ俺は。
× × ×
「今日はお疲れ様でした。
「ううん。
もっとマネージャーとか先輩は残ってもいいのに家庭優先とインターン生置いてっちゃうんだからほんと薄情もんだ。
でもま、こうして
「それにしても久々に
「うるさい黙れそして忘れろ」
「嫌です」
懐かしむ欠片もなく騒ぐ二人は本当に楽しそう。個人的には
「文化祭かぁ。あの時は私や葵君に
「まどか」
葵君が察してくれてびしっと厳しめの口調で割って入る。
すぐに気付いたようで「あっ」と声を
「す、すいませんっ! 別に
「
「は、はいっ」
どんなに言ってもこの子達からしたら未だに考えられないんだろうな。つい
事件からもうすぐ
最初は私やお父さんお母さんに
それから二人で言い合った。
大好きなお母さんが
誰からも
でも最後のだけは
―――ふざけないでよっ! 生まれて歓迎されない? じゃあ私はどうなるの! 私は嬉しかったんだよ……妹ができて。
思った以上に
それから私は
今はアルバイトしながら少しずつお父さんお母さんと打ち解けようとして頑張っている。家族っていう関係がちゃんとできるまではもう少し時間かかりそうだけどそれでも一歩ずつ前には進んでいる。
「よしっ! ご飯でも行こっか。
「ほんとですか? だって葵君」
「いや流石に自分の分は」
「いいのよ。今日は久々に先輩顔したい気分だから」
「なんですかそれ。まるで先輩みたいですね」
「そ。だって彼のこと好きだからそういう面も似ちゃうのよ」
「うわぁ」
「引くなよ、おい」
生意気な後輩だこと。
ほんと君の周りにはおかしな人がいっぱいだ。個性的でもユニークでもなくておかしいんだよみんな。まるで神様に選ばれたみたいでそれこそアニメやラノベ通りの世界。
なんて想像だけはヲタクだからいくらでもできる。
でもまだまだヒロインにはなれないなぁ私。
× × ×
「遠くない?」
もうすぐ
周囲は街頭もなく
きっかけは
あの話は最後に心替わりした神様が男の身体で世界を回ったとあり、その中で沖縄にも訪れている。そこで神の力をある場所に封印してそこから先は人間としてこの世界を回り続け
そしてその力はなんでもかなう願いと言われて今も眠っている。場所が不明なだけらしいが。
何の当てもなく身体は自然と沖縄へ赴き、そしてあの場所へ来た。
例の岬、始まりであり終わりでもある。
「ばーか。気付くの遅いねん、自分」
「またってこういうことですか……」
だが俺がこの人がこの場にいることでどうやらハズレの
「やめときやめとき。あいつ生き返らせることなんてうちにも
「いやそういうのじゃないんで」
「ふーん。じゃあ何や?」
「……神の力なんてもん存在しないようにしたかった、それで
しかしそれも
「んなもんとっくの昔に消えてるわ放置する訳ないやろアホが」
「さいですか……」
「ほなご苦労様や。無駄な出費残念やなぁ」
「うるせぇ」
これで次のコミ◯費用はなくなったがもういい。
さっさと東京に戻ろうと踵を返そうとしたが
「あぁせや。これはうちの独り言だから自分は聞かなくていいし知らなくていい」
なんだその見え見えの
少しだけ歩調を緩めて、聞き耳を立てる。どうせまためんどくさそうなことぬかすんだろうなぁ。
「
足は止まり、振り返るもそこには人の姿も気配もなく。
ほらみろ。やっぱりめんどくさいじゃねぇか。
そんなことをぼやく相手もいないがこれでタスク終了という訳にはいかなくもなり、
こうして今に至るというわけだがこれで何もなかったら今度こそあの神使ぶっ飛ばす。ついでに神様もいいだろうか。この先の人生不幸しかないとしても是非その面を
くだらない考えは疲れを
黒に染められた闇の中を手探りで歩くのは困難。おまけに地図は
それでもいつかは答えに辿り着くものであり、ようやく開けた場所に出て空を仰げばあの時と同じ星空のオンパレードライブが開催されていた。ほんのりと嗅いだことがある雨の匂いが鼻腔を擽るも既に止んでいる。
見上げた先に見えるものは
どこかでほくそ笑んでひとりぼっちな俺を見ている神様はどこですかと周囲を見渡したところで反応なんかありゃしない。むしろこんな
「誰ですか?」
女の子の声。
「君は?」
「私は―――です。あなたは誰ですか?」
「
「……なんか
「その通り。アニメやラノベが好きなヲタクなんだ」
「ヲタク? あぁ、あの気持ち悪い」
「気持ち悪い言うなよ……試しにおすすめのアニメを
「いやそういうのは……え、マジでこんな
「あのね……」
そう思われるのは無理もないけどもう少しオブラードに包んでもいいんじゃないかしら。
なんてことは向こうに
「あの本当に人、ですよね?」
「まんま同じ
「に、人間です!
「お互い様だ。ま、こんな山奥にいきなり人と
「ですね」
こんな世界で本当によかったんだろうか。こみ上げてくる
だから
「雨宮さん」
「何だ?」
「神様っていると思いますか?」
「なんだ。まるでテンプレみたいな台詞だな」
「は? 意味わかんないんですけど」
「だよな、ははっ」
「……この人やばい人では?」
「やばい人だよ」
今も昔もずっとろくな人間なんかじゃない。自分がよく知ってる。
「神様かぁ。もしいたら言いたいことがあるんだよな」
「言いたいこと?」
「うん。ずっと言いたくて、でも言えなかった」
口を止めて、もう
初めて会う女の子。それがこんな山奥っていうのは何の設定なんだか。
それでもこの
「
神様、君の初恋を僕に下さい。 鏑木鉱旗 @koki1026
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