第5話さよなら、ハッピーエンド! 5
―――世界が明日滅ぶとしたら君はどうする?
こんな気を遣わなきゃいけなくなったのはわたしのせい。
ぎしぎしと
もっと楽しい家族にしたかったよ、私も。
リビングに入るといつも通り、とはいかない
目を合わせない二人は当然会話もなく
「おはよう」
それを無理に破ろうとしてもまるで空気そのものが拒んでいるようで何も返ってこない。わかってる。いたたまれないとかそんなんじゃない。これはわたしへの罰。今日が祝福された日だろうとわたしは祝福を受けてはならない。全てを壊したんだ。幸せにもなっちゃいけない。
「いってきます」
この言葉を発せるのもあと何回だろう。
父も母も離婚してそれぞれ別々の道をたどり、わたしも有菜も置いてけぼりかなこのままだと。二人で暮らすことになるのかな? 駄目か。有菜はきっと認めないもん。あの子はわたしと一緒にいると息苦しそう。いつからそうだったかはわからないけどこれでもわたしお姉ちゃんやってるもん。見えちゃうよ、そりゃ。ましてや人の感情とかは
玄関の扉を開けると日差しが勢いよく差してくる。君だけは祝福してくれるんだね。ありがと。
卒業式―――わたしはいろいろなものから今日、
× × ×
「陽の光が降り注ぎ、桜の蕾も膨らみ始め、春の訪れを感じる今日この頃」
去年と同じテンプレ文に思わず
今朝も
それにしてもこの学校にはほんと苦労させられた。
一年生は変な
そして三年生。私を慕うあの後輩はまたわたしを救おうと立ち上がった。何度も何度も苦しみ、その度に心が折れそうになっても諦めずに前を向いて―――わたしは
わたしが最後に姿を見たのを修学旅行から戻ってきた次の日の昼休み。
もちろん心配はしたけど無視されちゃってつい
―――会いたいな。
本心を偽っても脳裏をよぎるのはその一心。だって高校最後だよ? わたし留学して二度と会えるかわからないんだよ? だったらさ……最後に全部捨てていきたいじゃん。どっかのテンプレヒロインみたいに負けたいの。
大体期待を
「お別れの歌。これまでお世話になった先生方、お父さんお母さん。
うちのクラスは何やるんだっけ。
ろくに話聞いてなかったけどこれが思い出ならちゃんと合わせなきゃな……。
「ねぇねぇここに書いてよ! ここ!」
「マジで!? お前第二ボタン渡したの?」
「いやだって欲しがってたし」
「えー! さっき今枝がお前のこと探してたからてっきり渡しにいったかと」
「え、マジ? ボタンもうねぇよ」
最後のHRも終われば記念撮影やら第二ボタン
わたしは……特にないかな。なくはないけどどうせ相手にしてくれないもん蒼も……有菜も。
「どうしたの? なんかつまらなそうだけど」
「別にそんなことないです……ってかよくわたしに声かけましたね」
「いいじゃない。だって私友達いないもの」
「まさか。女子からはちょっとヤバイ人で見られてますけど男なら全然就職先として希望する人多いですよ」
「ありがと。でもわたしは就職したいほうだから」
まるで友達みたいに会話を弾んでいるけど全然友達じゃないしなんならこの人私を
恨みはないといえば嘘。だから
「で、サナさんは何でここにいるんですか?」
怪訝な声音で訊くと伸ばした薬指を顎に当てながら「んー」と唸り、結局「暇だから」とくだらない返事が回答だった。
疲れた。これ以上ここにいても残せる思い出は何もない。席を立ち、鞄に荷物をまとめるとみていたサナさんが会話を続ける。
「もう帰っちゃうの?」
「話す人もいないので。それじゃ、もう二度と会うことはないでしょう」
「ええ、そうね。流石にもう会わないでしょうけど……でも最後に一つだけいいかしら」
めんどくさそうな表情をするも向こうはにこりと微笑んだ顔で返してくる。
「何ですか? 話だけなら訊きます」
「じゃあ簡単に。実はあなたの事を大事に思っている人から
胸が高鳴る音がした。動揺が顔にも出たのかサナさんが面白そうなものを見る目だがそんなことどうでもいい。嘘でしょ? もしかして最後だからほんとに別れの言葉とかそういうのぶつけてくるの? え、待って。わたし何も準備できてないしそんな直球ストレートありえないし。
「えと、あの」
「体育館裏にきてだって。ふふっ、もしかしてかしら?」
「し、失礼しますっ! その、ありがとうございました!」
「……楽しそうな顔してほんと憎らしいわね」
「もう会わないんですから。それじゃ!」
教室を飛び出したわたしは最後にサナさんが何か呟いていたようだけどうまく聞き取れなかった。
でも感謝の意だけは述べておいたのでこれでさよなら。
もういかなきゃ。彼が―――蒼が待ってる。
「いってらっしゃい。
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