343 遺跡&生態科で報告説明、商人ギルド




 夕方早い時間に帰宅し、リュカと遊んだあとは晩ご飯を賄い室で一緒に摂り、その後は鍛冶小屋へ引きこもった。

 スサが呼びに来るまで集中して、思いつくままに色々なものを作ったので大満足の1日だった。

 スサには叱られたけれど、楽しかった! と話すと、呆れたように笑われた。

「そうしたところは子供らしいのですね。でも子供なのですから、早く寝ませんと」

「はい」

「よろしい。では、おやすみなさいませ」

 シウがベッドに入るまで見張って、それから彼女は部屋から出て行った。



 朝になると、二日酔いの顔でキリクがやってきた。

「シリルから矢のような催促が来ていてな。で、王子との面談を取り付けてあるからと報告している。口裏を合わせておいてくれ」

「……面談するんだよね?」

「お前の付き添いだから、一応、面談? になるんじゃないのか」

「……僕を共犯にするの止めてほしいんだけどなあ」

「良いじゃないか。俺がいて良かっただろ?」

「助かりましたけど! ありがとうございましたー」

「よしよし。分かれば良いんだ。で、今日は俺も学校へ見学に――」

「騒ぎになるから却下」

 なんだと!? と、大騒ぎだ。

 とりあえず二日酔いに効くポーションを渡して客間へ帰ってもらった。


 キリクがいない間に学校へ行った。

 教室に入るとミルトとクラフトが来ており、シウに手を振った。

「よう。相変わらず早いな」

「そっちも」

 リュカの勉強の進行具合を聞いたりしているうちに、生徒が集まりアルベリクもやってきた。

 授業が終わると、アルベリクに頭を下げた。

「ありがとうございました。いろいろ話を通してくださっていたようですね」

「僕でも少しは力になれたのかな。皆、上に掛け合ってくれたようだけど」

「はい。上の方が驚いてました。どれだけ伝手があるんだって思われたみたい」

「学校の先生達も繋がりを使って、働きかけたようだからね」

「あ、僕も父上にお願いしたからね」

 フロランが通りすがりにといった感じで話して、じゃあねと手を振って教室を出て行った。その後ろ姿に声を掛ける。

「ありがと、フロラン!」

「今度、遺跡へ行く時手伝ってくれよ」

 それで貸し借りなしということなのだろう。

「あんなこと言ってるけど、用事があれば断っていいんだからね」

「はい、先生」

 軽く、王宮で何があったのかを説明して、皆が安堵したところで昼休憩に入った。


 午後も授業が始まる前にお礼を言ったり事情を説明したりと、話し込んでしまった。

「とにかく、無事終わって良かった。フェルマー伯爵も蟄居となれば手出しはできないだろうね」

「先生もありがとうございました」

 頭を下げてお礼を言うと、バルトロメは恥ずかしそうにいやいやと手を振っていた。

 先生はその後、グラキエースギガスについて聞きたがった。

 シウの立場がようやく落ち着いたので、気になっていたことを機関銃のように質問してくるので、生徒達が呆れて止めていた。

「先生、折角だから授業で取り上げたらどうでしょう。シウに発表してもらって、その後質疑応答と議論をしてみませんか」

「おお、それはいい提案だ。よし、じゃあ授業を始めるぞ」

 シウの意見はおかまいなしに始まってしまった。

 仕方なく、まずどうした経緯でグラキエースギガスを討伐するに至ったかを話した。

 生態を学ぶ上でも、魔獣の行動内容を知っておく必要があるからだ。

 人間側の事情と、動き、流れを知ってから、更に冒険者達による索敵報告などを話した。

「では、人の騒ぎに気付いて方向転換したということか」

 一旦、誘き出すまでの流れを説明して、話を止めた。

 そこまでの話で質問があれば受け付けることになったのだが、積極的に質問してくるのはやはりバルトロメだった。

「元々、王都方面へ動き出していたのに、急遽、こちらへ来たんです。先程の説明通り、殺されそうになっていたので相当騒いでいたんですよね」

「ふむ」

「ただ、人の声に反応したのか、動きによる振動のせいか、あるいは聖獣などがいたので獣目当てであったかはこの時点で分かりませんでした」

「そうか、聖獣もいたな。魔獣は聖獣を特に好むからな」

「食べるんですか?」

 アロンソが先生に質問した。嫌そうな顔だ。

「そう。魔獣は積極的に人などを襲うが、その中でも魔力量の多いものを好むのではないかと最近は言われている。そういう意味では聖獣はもっとも彼等の好みだろう」

「その割には、王都など人の多い場所を狙いませんよね」

「ウスターシュ、良い質問だ。どういうわけか、魔獣は生まれるのが森などの奥地で、そうそう人里に出てこない。知能はないと言われているが、人に敵わないことは理解しているのかもしれないと僕は思っている。だから群れを作り、やがてリーダーとなる強い物を生み出すんだね」

 そうして人里を襲い、上手くいけば更に人の多い個所を狙うようになる。

「ちょっと脱線したね。シウ、続きを」

「はい。その後、地形的に安定していて迎え撃てる場所を探してもらい、防御態勢を整えました」

「具体的には?」

 バルトロメが真剣な顔をして聞くので、報告しすぎて暗記した内容を、教壇前の白板に書き込んで行った。

 第一防壁、第二防壁と、堀を描いた。攻撃班はここにいて、と説明を続ける。

「呼び寄せずともやってきて、ちょうど1時間後に戦闘開始となりました」

 戦闘がどうだったかも話していると4時限目が終了した。

 休憩をはさんで5時限目になり、クライマックスまでを話し終えた。

「僕の個人的な感触ですけど、グラキエースギガスは熱量にも反応していたような気がします」

「ねつりょう?」

「生き物の温度、です。誰にでも体温はあるでしょう? それを目安に動いているのかなと思うことがありました。たとえば同じような魔力量なら、革鎧などで覆っている冒険者の方が狙われにくかったです。他にも似たようなことが幾つか。グラキエースギガスの動きをトレースすると、熱量に反応したのではと思ったんです。あと、どうも目はあまり良くないんじゃないでしょうか。囮役として飛び回っていた騎獣を捕まえるのに、精度が悪かったんです。騎獣の方が逃げるのは上手だったとは、思えないので」

 フェレスより遥かに下手だったのだ。

「すごいね。観察眼も鋭いが、動きをトレースし直すという考えが素晴らしい。他に、気付いたことはあるかい?」

「そうですね。鬼の割には動きが悪かったですね。確かに攻撃を避けたりする動きは大型魔獣の割に素早かったですけど、鬼種としては思ったほど強くなくて呆気なかったです」

「……それはどうなんだろうか。君、隻眼の英雄の強さに慣れてない?」

「え、そう、かな?」

「大体、シウはさ、殺されそうになったんだよね」

「そうそう。殺されそうになったってところに誰も突っ込まないから、僕どうしようかと思ったよ」

 ウスターシュとアロンソが苦笑気味に続けた。

 バルトロメも、あ、そうだったね、と呑気なものだ。

「殺されそうになったことを本人もさらっと流すぐらいだからさ。そんなシウの言う『強くない』は信じられないなあ」

「そう言われちゃうと僕も自信なくなってきた」

「他の冒険者の話が聞けたら良いんじゃないのかしら」

「ルフィナ、賢い!」

 良く言った、と皆が褒め称える。

「でも来てもらえるように依頼を出すの? 冒険者の人って学校へ来るの嫌がるそうよ」

「狩りへ行く計画でも立てて護衛依頼を出すというのは、どうかな」

「いいかも!」

 皆、わいわい楽しそうに計画を立て始めた。

 ククールスなら来てくれそうな気もしたが、折角楽しそうに計画を立てているので黙っていることにした。


 5時限目は時間通りに終わったので、その足で商人ギルドへ顔を出した。

 待ち構えていたかのようにユーリに捕まり、本部長室へ連れて行かれる。

 部屋にはヴェルシカとシェイラがいて、にこにことおかしいぐらいの笑顔だ。シウが引き気味なのに、ユーリは背中を押して部屋の中へと連れて行く。

「さあさあ、どうぞどうぞ」

 ヴェルシカは相変わらず、ごますり状態で手を組んで低姿勢だ。

「来ていただけるのをお待ちしておりました。いやあ、良かったです!」

 心の底から良かったと思っているのが伝わる声で、ちょっと、いやかなり引いてしまった。

「何か、あったんですか……?」

「ほら、本部長ももう少し落ち着いてください。シウ君が困ってますよ」

「あー、いや、まあね」

「本部長、商人組合の会合でポロッと零しちゃったのよね。飛行板のこと。そのせいでまだかまだかとせっつかれて、大変だったの。しかも国が大事な特許情報を握り潰す可能性もあると知って、商人達が憤ってしまって、もう少しで貴族との喧嘩が始まったかもしれないの。ぜーんぶ、本部長の軽い口のせいで」

「……そうなんですか」

「シウ君が助かったことで、かろうじて首が繋がったのよ。本部長、シウ君には頭が上がりませんわね?」

 シェイラの笑顔の嫌味が怖かった。ユーリもにこにこしながら本部長を見ているが、その目が笑っていない。この人は後で2人に吊し上げられるんだろうなと、少しだけ同情した。






**********

ここ、相当大きな間違いやらかしていたので、大幅に削ってます。

そのうち、なおします。

教えてくれた方、どうもありがとうです。




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