第16話 レナ先生が真面目なときでも彼女のおっぱいは彼女の意思とは関係なくいつでもエロい

 金曜日の昼休み、渡辺君はとても焦っていた。

 渡辺君が好意を寄せるユメちゃんとのかるた対決を明日に控えているのにも関わらず、百人一首を全然暗記できていなかったからである。

 ネット検索で、大まかなルールは頭に入れたものの、一番肝心な百人一首が覚えられない。

「カーッ、無理だあ」

「ちょっと渡辺君、頑張ってよ。僕だって昼休みを犠牲にして付き合ってるんだから」

「そりゃあ翔平ちゃんは彼女が国語教師じゃん。古典もできなきゃダメっしょ」

 なんで怜奈先生が僕の彼女になってんだ!

「なになに~? 彼女がどうかしたのお?」

「わっ!」

 突然、背中にムニュムニュした柔らかい物体が押し当てられ、びっくりして振り向くと、悪戯っぽい笑みを浮かべた怜奈先生が立っていた。

「先生、かるたって暗記してます?」

「ん? 百人一首のこと? ええ、覚えているわよ」

 渡辺君が質問すると、怜奈先生は意外なことを聞かれたという表情で答える。

「俺、明日かるたやるんだけど全然覚えられなくて……」

「えっ、渡辺君かるたやるの? それなら実践を交えて教えてあげる。私、大学でかるた部だったの」

 怜奈先生の意外な過去が判明。

 かるたの和風で清楚なイメージと、怜奈先生のセクシーダイナマイツボディのギャップあり過ぎ……。

「じゃ、放課後お願いしゃっす!」

 渡辺君、サッカー部サボりかよ!

「ええ。放課後、教室で練習しましょ」

 笑顔で返事をした怜奈先生は、Jカップの巨乳をプルプル揺らしながら教室をあとにした。


 クラスメイトたちがそれぞれ部活や帰宅で教室をあとにする中、僕と渡辺君はスマホとにらめっこしながら百人一首の暗記に奮闘していた。

「お待たせ~。さあ、始めましょうか」

 職員室から戻ってきた怜奈先生がやる気に満ちた表情で声をかける。

 僕たちは教室の後ろに移動して床に腰を下ろし、先生がよういしてくれたかるたを並べ始めた。

「先生、やっぱ俺、全然覚えられないんすけど……」

「渡辺君、明日の試合は勝たないといけないの?」

「えっ? いや、そんなこともないんすけど、相手は経験者で格上だから……。ただ、少しでもいいから札がとりたいなーみたいな」

 渡辺君は頭をガシガシかきながら、照れくさそうに答えた。

「そう、その対戦相手が好きな子というわけね。ふ~ん」

「なっ、なぜそれを!?」

 大げさなリアクションで動揺する渡辺君。

 単純過ぎ……。

 それにしても怜奈先生、鋭いな。

 女の勘、いや巨乳の勘というやつだろう。

「フフフ。先生は何でもお見通しよ。この国宝級ナイスバディでいかなる男も落としてきた恋愛マイスター怜奈先生が、渡辺君を完全サポートするわ」

「マジっすか? 先生すげー! お願いしゃっす」

 怜奈先生のお色気テクとかどうでもいいんで、早くかるた教えてください。

「渡辺君、さっき百人一首が全然覚えられないって言ってたわよね? まず暗記についてだけど、歌をすべて覚える必要はないの」

「えええっ! どういう事っすか?」

「えっ!? それはどういう……」

 2人して思わず大きな声を出してしまった。

 かるたは歌の上の句が読まれ、下の句が書かれた札を取るのがルールであり、百人一首を暗記していなければ成り立たない競技のはず。

 渡辺君は、その分厚い壁にぶち当たって悩んでいたのだ。

「かるたには『決まり字』というのがあるの。つまり、上の句の何文字目まで聞けば下の句が確定されるか、ということを表していて、一字決まりが7句、二字決まりが42句あって、六字決まりまであるわ。決まり字をしっかり把握してさえいれば、歌すべてを覚える必要はないということよ」

「おおおっ!」

 僕と渡辺君は感嘆の声をシンクロさせた。

「あと札の配置なんだけれど、実際に試合形式の練習をしながら説明するわね」

「はい!」

 気合のこもった返事をして、渡辺君は先生に教えてもらいながら自陣に札を並べ始めた。

 上の句を読み上げる役割の人を『読手』と呼ぶらしいのだけれど、素人の僕にそんな大役は到底無理なわけで、怜奈先生が用意してくれたCDで代用した。

 コンポのリモコンの一時停止ボタンと再生ボタンを押すのが僕の役割である。

 札を並べ終えた渡辺君と怜奈先生が向かい合い、視線を落として配置の暗記に集中する。

 僕たち3人の他に誰もいない教室はシーンと静まり返り、渡辺君と怜奈先生の息遣いが聞こえてくる。

 暗記時間が終了し、渡辺君と怜奈先生が正座で丁寧に礼をした。

 リモコンの再生ボタンを押す。

 最初に『序歌』と言われる歌が一首詠みあげられる。

 いよいよ次の歌から試合スタートだ。

 ステレオから2文字目の音が流れた瞬間、怜奈先生がまっすぐに手を伸ばし、渡辺君の陣下段二字決まりの札を払っていた。

「先生、早っ!」

 まさしく電光石火のごとし。

 渡辺君が口をポカンと開いたまま怜奈先生を見つめる。

「今のが二字決まりよ。敵陣から取ったときは自陣の札を相手に1枚送ることができるの。これが『送り札』よ」

「ふんふん、なるほど。敵陣の札を取ったら自陣から1枚送ると……」

 渡辺君はいつになく真剣な表情で先生の話を聞き、ノートにしっかりメモをとっている。

「最終的に、自陣の札が先に無くなった方の勝利よ。渡辺君の場合、勝つことが目的ではないから自陣の一字決まりと二字決まりは絶対に死守すること。そうすれば、確実に数枚はとることができるはずよ。いいわね」

「はいっ!」

「じゃあ、続けましょう。有島君、お願い」

「了解です」

 僕は再びリモコンの再生ボタンを押した。

 怜奈先生がかるたを指導している姿は、授業のときとまったく変わらない。

 先生の真剣な声と熱心な様子に、渡辺君の取り組みも自然と熱を帯びてくる。

 ところどころのポイントで分かりやすい解説を交えながら、笑顔で話す先生に僕まで引き込まれていた。

 怜奈先生は本当に教え上手だと思う。

 そして博識な上に、人の心を掴むことに長けている。

 聞いている人を飽きさせず、さらに虜にしてしまう話術やユーモアはすごい才能だと思うんだ。

「ちなみにこの歌の意味は『君と早くHがしたくてたまらない』という男性の思いが込められたものよ」

「マジっすか!? エロいっすね」

 そんなわけねーだろっ。

「マジエロよ」

 国語教師がおかしな造語使うのはやめてください……。

 ときに無駄な下ネタをぶっこみつつ、試合を進行させながら先生はかるたの解説をこなしていった。

 怜奈先生には、いい意味でも悪い意味でも驚かされてばかりだ。

 でも僕は、先生のことを教師として本当に尊敬している。

 一生懸命な渡辺君を優しい表情で見守る怜奈先生を見て、改めてそうな風に感じた。

「いやん♪ 有島君が先生のおっぱいをいやらしい目でガン見してるわ~。そんな 風に見られたら先生、乳首立っちゃう~ん♪」

 前言撤回。

 黙れっ、エロ教師!


 試合を終えて5分間の休憩後、渡辺君と怜奈先生は再び試合を開始した。

 先ほどと同様に試合形式なわけだが、今度は解説を一切行わず実戦の流れで進行していった。

 CDから流れる『読手』が札を読み上げる声が、静かな教室に響く。

 怜奈先生と渡辺君は並べられた札にジッと視線を注ぎ、集中力を研ぎ澄ましている。

 上の句が読み上げられるたび、ハンターが狙った獲物を仕留めるかのように2人は札に手を伸ばす。

 やはり怜奈先生の実力は圧倒的だった。

 札が読まれた瞬間の反応速度が早く、一字決まりや二字決まりは手がつけられないほどだ。

 渡辺君も頑張っているが、まだ1枚も取ることができない。

 彼の額から汗が流れ落ちるのを見て、僕は『なんとか1枚でも取れますように!』と祈りつつ、リモコンのボタンを押し間違えないように集中した。

 次の歌が詠みあげられる。

「せいっ」

「あっ! クソー。また取られたー」

 悔しそうに声を上げながら、渡辺君がガシガシと頭を掻きむしる。

 豪快に払い飛ばした札を取りに立った怜奈先生が、笑顔で戻ってきた。

 2人は再び対峙して札をジッと見つめる。

 CDの音声に思いっきり集中していたせいで、怜奈先生がスーツのジャケットを脱いでいたことに今頃気が付いた。

 先生も渡辺君と同様、かなり汗をかいている。

 一滴の汗がキラリと光り、首筋をつたって豊満なおっぱいの谷間に吸い込まれていった。

 汗でびっしょり濡れた白色のインナーシャツが、ぴったりと大きなブラジャーに張り付き透けて見える。

「さあ、まだまだこれからよ!」

 渡辺君を励ますかのように声を出し、怜奈先生は低い姿勢で前傾した。

 シャツの胸元は大きく開いており、2つの特大メロンのような乳房が深い谷間を形成している。

 怜奈先生が勢いよく札を払うたび、Jカップのおっぱいがブルンブルンと激しく揺れる。

 先生が自陣の札に手を伸ばせば左右に、敵陣の札を払えば前後におっぱいが揺れまくる。

 す、凄すぎる!

 こんなに激しい乳揺れ、AV でもグラドルのイメージDVDでも見たことないぞ!

 縦横無尽に暴れまわる2つの巨大な乳房に、僕の視線は釘付けになっていた。

 歌が詠まれ、反応した怜奈先生が素早く動くたびにおっぱい同士が強く打ち付け合い、タプンタプンと柔らかさを連想させるHな音がこだました。

 くっ、ダメだ。

 怜奈先生のJカップ乳揺れに全神経が総動員されて、リモコンを操作することに集中できない……。

 試合に夢中な怜奈先生は、自分のおっぱいがものすごくエロいことになっているのに一切気にしていない。

 と、言うより多分気が付いていない……。

 普段狙ってやっているセクシーポーズよりも、自然な行動の中から生まれる無意識なサービスショットのほうが何倍もエロい!

 よし、この光景をまぶたに焼き付け、しっかり脳内保存しておこう。

 今夜のオカズは、怜奈先生のかるた乳揺れで決まりだ!

「有島君っ。ちょっと、有島君」

「はっ、はい?」

 名前を呼ばれて我に返り、乳揺れシーン脳内ダウンロードが中断された。

「もう再生していいわよ。ぼーっとして大丈夫?」

「あっ、はい。大丈夫です。すみません」

「翔平ちゃん、しっかりしてくれよな! 本番、明日なんだぜ」

 渡辺君がタオルで汗をぬぐいながら笑って言った。

「ご、ごめん。気を付けるよ。僕も集中するから、渡辺君もラストまで頑張って!」

「おう!」

 勇ましく拳を上げた渡辺君は先生と向き合い、再び真剣勝負に身を投じた。

 渡辺君が一生懸命にやってるんだ。

 僕もちゃんと集中しなくちゃ。

 パチパチと両手で強く頬を叩く僕を、不思議そうな顔で見つめ、あどけない表情で首をかしげる怜奈先生がとても可愛らしかった。




 



 

 

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