第14話 渡辺君が抱える悩みの大きさはとレナ先生のおっぱいの大きさに比べたら大したことはない
怜奈先生の心の病について教頭室で美月先生から話を聞き、1週間が経過した。
「怜奈先生を守る」なんてカッコよく宣言したわけだが、特に大した事件が起きるということもなく、いたって平穏な日々を過ごしていた。
相変わらず怜奈先生は日常的にセクシーショットを連発し、会話をするたびに下ネタをぶっこんでくるものの、過剰なボディタッチや脱衣といった問題行動は控えめになり、僕としても安心して授業に専念している。
さて、お弁当も食べたことだし、昼休みはゆっくり読書でもしようかな。
「翔平ちゃ~ん、さっきから呼んでのに無視とかマジありえないっしょ~」
渡辺君が馴れ馴れしい声を出しながら僕の肩を揺する。
「僕、読書したいんだけど……」
「俺の悩み、聞いてほしいんだわ~」
「それは進路相談室でどうぞ」
「進路じゃねーしっ。俺らくらいの年頃の悩みと言ったら、恋愛しかないいっしょ」
高校生の悩み=恋愛という発想がまず間違ってない?
もっと他に考えることいっぱいあるだろ。
大きなおっぱいのこととか……。
「そういう話は小木君に相談すたほうがいいと思うよ。小木君、モテそうだし」
「うわっ、翔平ちゃん冷たいわ~。狩野ちゃんと小田ちゃんの相談に乗って、俺のは無理とかマジひどくね?」
「グッ……なぜそのことを?」
「翔平ちゃん、クラスで有名だぜ。エロいけどかなりイイヤツって。狩野ちゃんがスランプのとき一緒に稽古付き合ったり、小田ちゃんが美里さんに相談できるようにセッティングしてあげたりとか」
確かに狩野君はあの日から調子を取り戻して先輩たちを圧倒し、今では柔道部内でトップレベルの実力を発揮している。
小田君も、美里さんと話をしたことで前向きになり「時間をかけて親を説得していく」と明るい表情で語っていた。将来、看護師になることを目標により一層頑張っている。
2人の問題改善に僕が関わったことは確かだけれど、実際は大したことをしていない。
狩野君を勇気づけたのは怜奈先生で、小田君を後押ししたのは美里さんなのだ。
ましてや今回、渡辺君の相談内容は恋愛について。
彼女もいなければ女友達すらいない僕にとって、完全に専門外もいいところだ。
巨乳と料理についてなら豊富な知識を取り揃えておりますが……。
「恋愛の悩みなんて、僕じゃ力になれないよ」
「まあ、そう言わずにさ。とりあえず聞いてくれるだけでもいいからさ~」
「まあ、聞くだけなら……」
「サンキュー! じゃ、場所移そうぜ」
渡辺君は声を弾ませながら教室の扉を開けた。
屋上まで移動すると渡辺君はフェンスにもたれ、どこか遠くを見つめた。大して長くもない前髪を払い、小さなため息をつく。
まさしく恋に悩む少年の演出といったところか。
「俺があの子に出会ったのは先週の木曜日、穏やかな風の吹く放課後のことだった。彼女と一瞬だけ目があったとき、俺の体にビビッと電流が流れたみたいに強くて熱い何かを感じたんだ。彼女は――」
「そのくだり長い。帰っていい?」
「ちゃんと聞けよ! って言うか帰るなよっ」
「はいはい。なるべく簡潔にお願いします」
「ったく、ロマンの無いヤツだな。事務的にもほどがあんだろ」
話の骨を折られた渡辺君は、いかにも不服そうな顔をする。
「ほら、早く話さないと昼休み終わっちゃうよ」
「分かってるよ。えっと、先週の木曜、部活行く途中でスゲーかわいい子に会ったんんだよ」
「えっ? うち、男子校だよ。渡辺君ってそういう――」
「ちげーよっ。バカ! 他の学校の女子だよっ」
そんなことは言われなくとも分かっていたが、渡辺君をイジル機会は滅多にないので面白半分に言ってみた。
「で、どこの学校?」
「それが分かんねーから、相談してんだろ」
「えっ!? そこから?」
「頼むよ、翔平ちゃ~ん。すげー気になって夜も眠れないんだよ~」
それをいつも授業中に居眠りしている理由にはできないよ、渡辺君。
「僕、探偵じゃないんだけど……」
「そこを何とか! この借りは必ず返す」
まだ何も貸してないし、貸す気もないんだけどな。
「……分かったよ。先週の木曜日、リン校に来ていた女の子が誰か調べればいいんだね?」
必死な声で懇願し、頭を下げたまま動こうとしない渡辺君がすごくけなげに見えて、つい引き受けてしまった。
「ホントに?」
「嘘のほうがいい?」
「いやいや、それは困る。マジで」
「ハハハ。冗談だよ」
僕が笑うと、彼はホッとした様子でため息をつき、僕の手を強く握って何回も「ありがとう」を繰り返した。
普段の渡辺君は小木君以上にお調子者で、僕をはじめ色々な子をいじってはクラスで笑いをとっている。正直それが不愉快な時だってあるし、馴れ馴れしい態度にも親しめないないのが本音だ。
彼のことが嫌いというわけではないけれど、苦手な相手であることに違いはない。
そんな風に思っていた相手が、僕を頼りにして相談を持ち掛けてきたのだ。
彼の声はすごく必死で表情は真剣だった。
深々と頭を下げる姿に誠意を感じた。
そんな渡辺君の力になってあげたいと、僕は素直に思ったんだ。
「それじゃあ、渡辺君がその女の子について分かっていること、できる限り教えてくれる? 特徴とか、どんな制服だったとか」
「お、おうっ!」
渡辺君はすごく嬉しそうに頷き、期待に目を輝かせていた。
放課後、僕は2年生校舎へやってきた。
渡辺君が先週の木曜日に、たった1度だけ彼女を見かけた場所である。
同じ時間帯の同じ場所で聞き込みを行えば、必ず有力な情報を掴めるはずだ。
母さんお気に入りのサスペンスドラマのイケメン刑事がそう言っていた。
それにしても、2年生校舎ってなんだか緊張するな……。
部活やサークルに所属していない僕は、先輩と接する機会が全く無いわけで、早くもアウェイの空気に飲まれつつあった。
通りがかりの先輩にいきなり尋ねるのも不自然だし、どうしたものかな……。
少し間、思案していた僕の背中に、柔らかく大きな物体が押し当てられた。
ビックリして振り返ると、そこには悪戯っぽい笑みを浮かべる怜奈先生が立っていた。
「お、驚かさないでくださいよ」
「有島君、こんな所で何しているの?」
「僕は用事があるんです。先生こそ、仕事サボっていていいんですか?」
「失礼ね。今日の仕事はもうお終いよ。帰ろうとしたところに、有島君が2年生校舎に入って行くのが見えたからつけてきたのよ」
怜奈先生、校内で生徒を尾行するのはやめてください。
「ちょっと友達に頼まれた事があって。先生には関係ないので帰っていいですよ」
「むむっ、怪しい。有島君、最近ちょっと変よ。1日の中で先生のおっぱいを見て、ペニスを勃起させている時間が短縮されているもの」
変なのは怜奈先生の思考だ!
生徒の股間をチェックするな!
「とにかく、僕は何も後ろめたいことはありませんし、完全に先生の誤解です」
「その言葉、ちゃんと先生のおっぱいを見ながら言ってみなさい!」
なんでおっぱいだよ!
そこは『目』だろっ。
「ちょ、ちょっと先生。近いですから……。」
怜奈先生がジリジリと詰め寄って僕の顔を覗き込む。
ロケットみたいにグッと飛び出した巨大なおっぱいが、僕の胸に押し付けられる。ムニュムニュとした柔らかなおっぱいの弾力が伝わってくる。その心地よさに、思わず股間が反応してしまった。
「有島君のここはすごく素直ね。さあ、正直に言っちゃいなさい。ホントは先生のおっぱいをおかずに射精したいのに、ずっとオナ禁してますって」
なんでそうなる!?
怜奈先生がミニスカートからすらっと伸びる足を前に出し、キレイでムチムチした太ももを僕の股間に擦り付けてきた。
すぐ目の前には、キツイ感じの目で僕を見つめる先生の美しい顔。
フワリとものすごく良い香りがして、キレイな怜奈先生と見つめ合っていると頭がクラクラしてしまう。
視線を下げると、先生のスーツのインナーシャツは大きく胸元が開いていて、こんもり盛り上がったJカップの谷間がはっきりと見える。
「わ、わかりました。ちゃんと話しますから離れてくださいっ」
「そう、分かればいいのよ」
怜奈先生は特大サイズの乳房をブルンと揺らし、僕から離れた。
僕は、渡辺君から相談された内容を要約して話した。
先生は頷きながら話を聞いていたが、話の終盤に差し掛かるとどうにも我慢できない様子で「先生も手伝うわ」と、目を輝かせながら言った。
僕が「頼まれたのは自分ですから、先生は何もしないでください」と、キッパリ断ると先生はシュンとして元気がなくなった。
そんな怜奈先生を見ているとかわいそうになってしまい、絶対に何もしないで大人しくしていることを条件に、一緒に行動することを許した。
さあ、気を取り直して再調査といきますか。
まずは、1階奥の実験室を訪ねた。放課後、この教室は科学部が活動している。
「失礼します」
「あ、入部希望ですか?」
「違います」
科学部員たちの僕への興味が一気に薄れる。
期待させてごめんなさい……。
「何か?」
「ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど……」
僕は渡辺君から聞いた女の子の特徴を伝え、先週の木曜日に彼女を見かけなかったか質問した。
科学部の部員たちは皆、首を横に振った。
まあ、実験室にこもりきりじゃ無理ないか。
よし、次に行こう!
お礼を言って実験室をあとにする。
その後も料理部、吹奏楽部、合唱部、漫画研究会など、2年生校舎で活動している部活やサークルを片っ端からあたったが、全く成果は上がらなかった。
なぜだ?
渡辺君の話によれば、その子は3年生校舎には足を踏み入れていないはず。
渡辺君の見間違いか?
部活をしらみつぶしにあたれば必ずヒットすると、たかをくくっていた僕の考えが甘かった。
もしかして、生徒会関係?
いや、生徒会室は3年生校舎だ。
そもそも、渡辺君の情報は確かなのだろうか?
完全に行き詰った僕は、深いため息をついた。
「有島君、大丈夫?」
ずっと大人しくついてきた怜奈先生が心配そうに尋ねる。
「……大丈夫、だと思います」
「困ったときは私を頼ってくれていいのよ。私はあなたの担任教師なんだから」
先生の笑顔がすごくまぶしく見えた。
「あの、怜奈先生。青色のネクタイに紺色のブレザー、チェックのスカートの制服がどこの学校かご存知ありませんか?」
知っているはずはないと思いつつ、優しい笑顔の先生につい甘えてしまった。
「それは道徳館女子高の制服ね。青色のネクタイをしているのは、確か1年生だったと思うわ」
怜奈先生はニコニコしながら答えると、得意げにJカップのおっぱいを突き出して見せた。
「道徳館て、リン校と同じ野村学園が経営する学校ですよね? ドウジョの生徒がうちの学校に来ていた理由までは分かりませんよね?」
まさかそこまではと思いつつ、念のために聞いてみる。
「かるた部の合同練習よ」
僕の予想を覆し、先生は涼しげな表情でサラリと答えた。
「か、かるた部!? さっき一通り見てきましたけど、かるた部なんてありませんでしたよ」
「今日はリン校が道徳館に出向いて合同練習しているはずよ」
そりゃあ、見つかるはずもない……。
「なんで先に教えてくれないんですかっ?」
僕が怒った口調で尋ねると、怜奈先生はペロリと舌を出した。
「だって有島君、『何もしないで大人しくしていてください』って先生に言ったじゃない。先生は、君の言葉を守っただけよ」
はあ……。
怜奈先生が見た目と違って、かなり子供っぽい性格であることをすっかり忘れていた。
僕が睨んでも、怜奈先生はしてやったりといった小悪魔的笑みを浮かべている。
まあ、怜奈先生が問題行動を起こすことなく、必要な情報を入手することができたし、ここは結果オーライということにしておこう。
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