第13話 美月先生のおっぱいとレナ先生のおっぱいを比較するとかなりレベルの高い戦いになることは間違いない

 誰もいない資料室の中で、僕と美月先生はピッタリと体を密着させて見つめあう。

 タイトスカートの下の先生の柔らかな太ももが僕の股間に触れる。

「有島君、触って。おっぱい、好きでしょ?」

 美月先生がスーツのジャケットを脱ぎ、ブラウスのボタンを外し始めた。

 ギュッと押し込まれていた大きなおっぱいが開放され、美しいY字の谷間をのぞかせる。

 す、すごい!

 ホントに怜奈先生と変わらないくらいのボリューム!

 こんなおっぱい、触れるチャンスは滅多にないぞ!

 いや、ちょっと待て。こんなことしていていいのか?

 怜奈先生のお父さんについて、話を聞きに行かなくちゃいけないんだ!

「はい、おっぱい大好きですが、またの機会にお願いします!」

「そう言わずに、まずは触り心地を確かめて♪」

「ちょ、ちょっと! 美月先生」

 美月先生が僕の手を取り、自分の大きな胸に触れさせる。

 ブラウスの薄い生地を隔てて、先生のおっぱいの柔らかさが手のひらに伝わってきた。

「ほら、遠慮しないで。先生のおっぱい、揉んでちょうだい♪」

 美月先生が微笑みながら、僕の手をおっぱいに強く押しつけた。

「わっ!」

 思わず両手に力を込めて鷲掴みする。

「アァン♪ 有島君、意外に激しいのね」

「す、すみません。そんなつもりじゃ……」

「ほら、手が止まってるわよ。もっと、先生のおっぱい、こね回して♪」

 美月先生が僕を見つめながらささやいた。

 先生のおっぱいは柔らかく、そしてあまりにも大きかった。

 僕の手にはまったく収まりきらない乳房のボリューム。

 鷲掴みした手の指が、ムニュムニュとおっぱいにめり込んでたまらなく心地よい。

 ホント、怜奈先生のおっぱいそっくりだ。

 離したくても、手が離れない。

 僕の意思に反して、おっぱいを揉む手の動きが止まらない。

「アンッ♪ アァン♪ どう? 先生のおっぱいは?」

 色っぽくあえぎ声を上げながら、美月先生が尋ねる。

「すごく大きいです。それに柔らかくて、気持ちいいです!」

「先生のおっぱいが1番かしら?」

「……」

 そのとき、ふと怜奈先生のおっぱいが頭の中に浮かんだ。

 それから怜奈先生の色々な表情。

 怜奈先生の嬉しそうな顔、笑った顔、すねた顔、悲しそうな顔、怒った顔。

 いつの間にか、美月先生のおっぱいを揉む手は止まっていた。

「有島君、どうしたの?」

「先生のおっぱいは、1番ではありません。僕の理想の巨乳は別の人ですから。その人は、尊敬できる先生であり、とても素敵な女性でもあります。大きい胸の中に詰まっているものは単なる脂肪なんかじゃなく、その人の個性とか人間性だと思うんです」

「……」

 美月先生は黙り、僕からそっと離れた。

「正直、美月先生ほどのおっぱいはお目にかかれませんし、ボリューム、形、柔らかさのどれをとっても至高のおっぱいに間違いはありません。でも、僕は理想の巨乳を守るために行かねばなりません」

「……そう、あなたの気持ちは良くわかりました。じゃあ、行きましょうか。教頭室へ」

「はいっ! えっ!?」

 なんで美月先生、僕が教頭室に行くって知ってるの?

 僕、話したっけ?

 いや、言った覚えは無い……。

 僕が首をかしげる様子を、美月先生が面白そうに眺めている。

「あっ、いたー! もう、探したんですよー。ちょっと美月さん、なんて格好してるんですか!?」

 急に資料室の扉が開かれ、大声を出しながら美里さんが入ってきた。

 美里さんが、ギロリと僕を睨みつける。

「ひっ、ごめんなさい。遅れたのには、正当な理由がありまして……」

「正当な理由でそんな卑猥なありさまのヤツがいるか! 変態!」

 激怒する美里さんの指差す先には、膨張した僕の股間が……。

「こ、これは生理現象というか、健康な男子高生の反応といいますか――」

「美里ちゃん、怒らないで。有島君は合格よ」

 美月先生が優しい声で美里さんをたしなめる。

「やったー! 合格だーっ」

「意味も分からないのに、喜ぶな! 変態!」

 美里さんの鉄拳が僕の頭に直撃した。

 イテテテ。

 美月先生の言う合格って、どういう意味かな?

「もう、美里ちゃんは乱暴なんだから。殴ったりしちゃダメよ。わんぱくなところは高校生のころから変わらないわね」

「すみません……」

 美里さんが恥ずかしそうにうつむいた。

 美月先生は美里さんを高校生のころから知っているのか。

「さあ、行きましょう」

 美月先生にうながされ、僕らは教頭室へ向かった。


 教頭室に入ると、校医の石井先生が応接用のソファに腰掛け、神妙な面持ちで待っていた。

「石井先生、お待たせしてすみません」

「いえ、いえ。皆そろったことですし、始めましょうか」

 ソファに腰を下ろした僕達に、石井先生が語りかける。

「まず、自己紹介しないといけないわね。倫理館高校、教頭の野村美月です。有島君、改めまして、よろしく」

「きょ、教頭先生!」

 驚きのあまり、声が裏返ってしまった。

「ちなみに美月さんは、怜奈の伯母さんにあたります」

「ええっー! 教頭先生が怜奈先生の伯母さん!? ずいぶんお若いですね」

 美里さんの補足説明を聞いて二度驚いた。

「あんまりジロジロ見るなよな。失礼だろ」

「あっ、すみません」

 美里さんに注意されて視線をそらす。

「ふふふ。いいのよ。驚いたでしょ? 私の姉、つまり怜奈の母親とは年の離れた姉妹でね」

「そうなんですか」

「さて、ここからが本題なのだけれど、怜奈の父親が亡くなっていることは美里ちゃんから聞いて知っているわよね?」

「はい。怜奈先生がまだ幼いころに亡くなったと聞きました」

 美月先生がうなずく。

「怜奈の父親、私の義理の兄は消防士だったの。お兄さんは仕事が非番だったあの日、怜奈を連れて横浜の花火大会に出掛けたの。そこで事故が起こった。花火の火薬が爆発して、大きな火事が発生したの。お兄さんは怜奈を一緒に来ていたメイドさんに託して、火災現場へ直行した。火災に巻き込まれた人、5人を救出したそうよ。でも、お兄さんはそのまま帰らぬ人となったわ」

「……お気の毒です。でも、怜奈先生のお父さんは、すごく勇敢で立派な方だと思います!」

「ええ、そうね。ありがとう。私も兄のことは誇りに思うわ。でも、怜奈はいまだに父親の死を受け入れてはいないの。お兄さんが亡くなって葬儀を行い、怜奈にもちゃんと説明したのだけれど、『お父さんは生きてる』の一点張りでね。私はそのうち大きくなれば、怜奈にも分かるときがくるだろうと思ってそっとしておいたのだけれど……」

 美月先生の声が暗く沈んだ。

「怜奈ちゃんのおじいさんはとても厳格な方でね。聞き分けの無い怜奈ちゃんをキツク叱ったんだ。何度も『父親は死んだんだ』と言い聞かせてね。それが原因で怜奈ちゃんは、パニック障害を引き起こした。彼女が呼吸困難になって、初めて診察したのが私なんだよ」

「石井先生の本来の専門は、精神科、心療内科なの」

 石井先生と美里さんが静かに語る。

「パニック障害は1年くらいして治まったのだが、別の問題が起こってね……」

「ちょうど思春期、中学生くらいから発言や行動に問題が出始めたの。それは、あきらかに一般常識を越えていたし、著しく羞恥心が欠如していたわ。怜奈のクラスのあなたなら、分かるわよね?」

 重たい声で話す石井先生のあとを、美月先生が続けた。

「はい。やっぱり怜奈先生のああいった発言や行動は、お父さんの死が原因なんですね」

「そうだね。父親の死を認めると心のバランスが崩れてパニック障害を引き起こしてしまう。自分の体を保護するために、脳は自身を騙して父親は生きていると思い込ませる。しかし、それも無理がある話だ。心には少しずつ負担がかかり、その蓄積されたストレスを開放する手段が、怜奈ちゃんの問題行動や発言だと推測できる」

 なるほど。

 怜奈先生がなぜあそこまでエロいのか、理由が分かった。

 パニック障害による肉体的苦痛から逃れるため、心に負担をかけ、そのしわ寄せが性格に影響そ及ぼしているということか。

「私と石井先生は、すべての手を尽くして怜奈を守ってきたの。怜奈が高校生のときには、美里ちゃんにも協力してもらったわ。もちろん今もね。美里ちゃんには本当に感謝してる」

「いえ、私は怜奈の友達として当然のことをしただけです」

 美月先生の言葉に、美里さんは微笑みながら首を横に振った。

「有島君にお願いがあります。怜奈を守ってあげてくれないかしら?」

「えっ、僕がですか?」

「ええ。怜奈は今年度に入ってから、かなり落ち着いているわ。安定もしているし」

 あの、ありさまで……。

 去年はもっとひどかったってことか。

「怜奈、有島君の話になるとすごく嬉しそうにしゃべるの。きっと、相性がいいんだと思う」

 美里さん、こっちはいつも振り回されっぱなしなんですけど……。

「今でも週1回は診察をしているんだが、ずいぶん調子がいいみたいなんだ。私にも、有島君の話を楽しそうにしてくれるよ。君は人の心を癒す存在なのかも知れないね」

 石井先生、もしかして僕、アニマルセラピー的な立ち位置?

「君が単に下心があって、怜奈に近付いているわけではないことは資料室で分かったわ」

 美月先生がウィンクする。

 合格というのはそういう意味ね。

「分かりました。僕でよければ、出来る限り協力させていただきます」

「ありがとう、有島君。助かるわ」

 立ち上がった美月先生が、ギュッと僕を抱きしめた。

 く、苦しい……けど、このムニュムニュした感触は……。

 おっぱーい!

 顔が美月先生の巨乳に押し付けられ、柔らかい感触が気持ちよい。

「あら、ごめんなさい。いやね、私ったら。つい嬉しくて」

 慌てて僕から離れた美月先生が照れている様子は、年上の女性だけどカワイく感じた。

 そんな僕を、美里さんが怖い顔で睨んでいる。

「有島君、何か他に聞きたいことは無いかしら?」

 ソファに座りなおした美月先生が尋ねる。

「えっと……非常に重要なことを1つ、よろしいですか?」

「ええ、構わないわ」

 美月先生が真剣な表情で僕を見つめる。

「美月先生のバストサイズは?」

「えっ? 105センチのIカップよ。ふふふ♪」

 100センチオーバーのIカップキターーー!

 まさしく怜奈先生にも匹敵するほどの巨乳!

 まさか、リン高にこれほどまで巨乳美女が集結しているとは思いもよら――。

「マジで死ね! 変態!」

「イッテー! イテテッ」

 美里さんの重たい一撃が、僕の頭上に炸裂した。

 この人、ナース服姿でいつも拳振るってるよな。

 日ごろの行動と職業が矛盾しまくりだ!

「はっはっは。有島君は面白いね。怜奈ちゃんの気持ちが分かる気がするよ。美里君も元気があっていいねー」

 よくねーよ!

 暴力ナースを注意しろ、ドクター。

 色々あるけど、リン高の教頭室もやっぱり平和だった――。

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