第12話 レナ先生のおっぱいについて小論文を書くとしたら字数制限を無視して小説10冊分は書いてしまうだろう

 月曜日の朝、猛烈に抗議する僕に対して、小木君と阿川君は手を合わせて平謝りした。

 2人の悪い冗談のせいで、僕は母さんにからかわれて恥ずかしい思いをしたのだ。この際だから、はっきり言っておかねばならない。

「僕は、大きなおっぱいを愛しているわけであり、決して怜奈先生に恋愛感情があるわけじゃない! 僕のおっぱい愛は、一個人に向けられるような恋愛感情みたい小さなものでなく、ワールド規模でかつワイドなスケールの大きいものなんだよっ!」

「プッ……」

「プフフフッ」

 小木君と阿川君が吹き出した。

「おーい、翔平。朝から巨乳を熱く語るなよな。お前が、おっぱいマイスターであることはクラスの誰もが認めてる」

 小木君と同じサッカー部の渡辺君の一言で、ドカンと笑いが起こった。

 何だかだんだん、いじられキャラが定着してきた気がする……。

「おはよー。はい、みんな席について。ずいぶん朝から盛り上がってるみたいね」

「おっぱいマイスターの翔平が、巨乳の素晴らしさを力説していましたー」

 渡辺君、真実はときに人を傷つけるということを知っているかい?

「あら、そうなの? じゃあ今度、先生のJカップを課題に小論文でも提出してもらおうかしら?」

 怜奈先生が両手で下からおっぱいを持ち上げ、ブルブルと揺さぶった。

 教室中が再び笑いの渦に包まれた。

 僕のクラスは今日も平和だ。


 昼休み、お弁当を食べ終えた僕はだいたい読書をしている。

 阿川君は軽音部でギターの練習しているし、小木君も昼食を終えたあとは部活の友達とグラウンドでサッカーをしている。そういうわけで、昼休みは1人の時間が多いのだ。

「あの、有島君。ちょっといいかな?」

「あ、うん」

 小田君がめずらしく声をかけてきた。

 普段はあいさつをかわすくらいで、小田君と会話らしい会話はしたことがない。

 怜奈先生に「あまり詮索しちゃダメよ」と言われ、僕は保健室でのことには触れずにいた。

 小田君は頭が良くてマジメな生徒だ。かと言って、自分から名乗り出てクラス委員をやるようなタイプでもなく、どちらかといえば控えめでおとなしい性格。

 僕と同じで自分から話すこともないから、お互い接点が無かったのだ。

 そんな小田君が昼休みに話しかけてきたものだから、少しびっくりした。

「有島君は、看護士の美里さんと仲いいよね?」

「えっ! いや、決して特別な関係では――」

「あ、そういう意味じゃなくて。美里さんと笑って話しているの見かけたから」

 なるほど、そういうことか。

 そうでなくても、クラスメイトたちから怜奈先生のことで冷やかされるというのに、これ以上変な誤解を受けるのはたまったものじゃない。

「ちょっと保健室にお世話になったことがあってさ。怜奈先生が美里さんの同級生だってこともあって、そのとき色々と話を聞いたりして、それでかな」

「オレ、美里さんに相談したいことがあるんだ。もし迷惑じゃなければ有島君、一緒に付き合ってくれないかな?」

 小田君は真剣な表情で頼んだ。

「それは構わないけど、僕が一緒で差し支えないの?」

「……オレさ、実は、看護士になりたいんだ」

 突然の告白に驚いた。

 小田君が看護士という職業を目指すということではなく、おそらく他の人には話していないであろう胸のうちを僕にうちあけたことに。

「へー、すごいね。小田君はもう進路決まってるんだ。僕なんか全然だよ。夢とか特技とかは無いし、勉強好きでもないし。巨乳好きで食べていける仕事無いかなーなんて、いつも考えて――」

「有島君は、驚かないの? 男が看護士になりたいって……」

 小田君はすごく意外そうな顔で僕を見つめていた。

「だって、男性の看護士って増えてきてるじゃん。ま、看護士全体で見ればごくわずかだけど。今から将来のこと見据えてるって、すごいと思うよ」

 僕が言うと、小田君はホッとした表情で嬉しそうに笑った。

「両親が反対しているんだ。なんのために進学校であるリン高に入れたと思ってるんだって。3年間しっかり勉強して、横浜の国立大に入れって」

「それって、怜奈先生と同じ大学? あそこ無茶苦茶、偏差値高いよね?」

「オレ、特進クラス志望だったんだけど、入れなかったんだ。それも親の勧めだったんだけど。中学のころから福祉関連の仕事に興味があったんだけど、親はオレを公務員か一流企業の社員にしたいみたい」

 小田君は寂しそうな目で苦笑いした。

 まさか、頭のいい小田君がそんな悩みを抱えていたなんて思いもしなかった。

「よし、今から保健室に行こう!」

「えっ! う、うん」

 急に立ち上がり、大きな声を出した僕に小田君は目を丸くしていた。


 小田君を連れて保健室にやってきた僕が扉をノックすると、美里さんの「どうぞ」という優しげな声が聞こえた。

「失礼します」

「あっ、有島君。調度いいとこに来た。君に大事な話があるの。怜奈のことなんだけど――」

 駆け寄ってきた美里さんが、僕の後ろに控えている小田君の存在に気がついて話を中断する。

「失礼します。あの、有島君と同じクラス、2組の小田です。実は相談というか、色々うかがいたい事があって来ました」

「えっと、石井先生はお昼休みで席を外しているのだけれど」

「小田君は美里さんに相談したいんですよ」

「えっ、私に?」

 僕の言葉に、美里さんは驚きながら自分自身を指差した。

「オレ、将来は看護士になりたいんです。それで美里さんに、看護士になるまでの経緯とか、現場での実体験とか色々と教えてもらいたくて」

「私なんかの話でよければ、喜んで」

「ありがとうございます!」

 美里さんが快く承諾してくれたお陰で、小田君も少し元気が出たみたいだ。

「じゃ、小田君。僕は先に戻ってるから。良かったね」

「ありがとう。有島君のおかげで助かったよ。それに少し気が軽くなったし」

 僕と小田君が言葉をかわす間に、美里さんが素早くメモに何やらしたためた。

 それをそばに置いてあったタオルに挟んで僕に手渡す。

「有島君、これ忘れ物。この前、保健室に来たとき置いて帰ったよ」

「あ、ああ。すみませんでした。では、失礼します」

 保健室を出て、廊下を歩きながらメモを開いた。

『放課後、教頭室前に来て。怜奈のことについて』

 メモには短くそう書かれていた。

 なんで教頭室の前?

 確かに人気の無い場所ではあるが、逆に目立って怪しい気がする。

 もっと、使っていない空き教室とかにすればいいのに。

 しかし、これで怜奈先生のお父さんについて真実を聞くことができる。

 怜奈先生について知ることができる。

 そうすれば、僕がもっと力になれることだってきっとあるはずなんだ。


 授業終了のチャイムが鳴り、しばらくして怜奈先生がいつも通りJカップのおっぱいをユサユサ揺らしながらホームルームにやってきた。

 いつもと変わらぬ笑顔。普段通りの下ネタトークとセクシーポーズ。歓声を上げるクラスメイト達。

「部活のある子は精一杯取り組むこと。そして、めいっぱい楽しむのよ。特に運動部は練習キツイと思うけど、そんなときは先生の言葉を思い出して奮起するのよ。あ、でも先生のおっぱいを思い出して股間を奮い立たせないように」

 怜奈先生が上半身を左右に動かすと、大きな2つの乳房がブルンブルンと大きく揺れた。

 誰かが「ヒュー」と口笛を鳴らし、盛大な拍手と笑いが起こった。

 ホームルームを終えてすぐ、怜奈先生に声をかけられた。

「有島君、ちょっといいかしら?」

「すみません! 急ぐので、またにしてください」

「そ、そう。わかったわ。気をつけて帰ってね」

 ちょっと残念そうにして、そのあと笑顔で言葉をかけてくれた先生にすまない気がした。

 でも、これから話を聞くこともきっと怜奈先生のためになるはず。

 ここは、心を鬼にして行かねばならない。

「あー、翔平が怜奈先生をフッたー」

「めずらしいね。翔平が先生のお願いを断るなんて」

 小木君と阿川君の声でクラスメイト達も僕に注目する。

「フッてないし。って言うか付き合ってもないからね。そもそも、今の時点でお願いかどうかも分からないじゃん!」

「おい、翔平! 巨乳マイスターは世界の巨乳を愛してるんじゃないのかよ? 巨乳に優しくしろよー」

 ほら出た。

 2人が余計なこと言うから、渡辺君まで便乗してきたじゃないか。

 他のクラスメイトまで騒ぎ出す始末。

「怜奈先生に謝れー!」

「巨乳に謝罪しろー!」

「先生、おっぱい見せてー!」

 最後のなんだよっ!

「分かったって。謝ればいいんでしょ、謝れば。怜奈先生……ごめんなパイ」

「……」

「……」

「……」

 いつもの怜奈先生の、両腕で巨乳を寄せて前傾する悩殺ポーズを決めたら、教室中がシーンと静まり返った。

 そして、バッグやら体操着やら色々な物が僕に向かって飛んで来た。

 イテっ。

 誰だよっ、辞書投げたヤツ!

「みんな、落ち着いて。有島君は悪くないわ。悪いのは、世の男性を虜にしてしまう先生のおっぱいよ」

 怜奈先生が胸の下で両腕を組み、抱えるようにして豊満なバストをムギュッと寄せる。

 大きく開いたブラウスの胸元から、こんもり盛り上がったおっぱいの谷間があらわれる。

「怜奈先生、マジ女神」

「神おっぱい」

「おっぱい、ばんざーい」

 クラスメイトから神として崇められる怜奈先生は、悩殺ポーズを披露しながら笑顔で声援に答える。

 これ、なんのイベント?

「さあ翔平、怜奈先生がヤツらの気を引いてくれているうちに行くんだ」

「オレらのことは気にするな。あとはオレとタケルで何とかする。一つ貸しにしとくぜ」

 阿川君と小木君が白い歯を見せて、カッコよく笑った。

 ありがとう、2人とも!

 って、なんでやねん!

 ことの発端は君たちだよね。

 ああ、日を追うごとに僕のいじられキャラが定着しつつあるな。

 しかし、今はそんなことを嘆いている暇はない。

 美里さんとの待ち合わせ場所、教頭室の前に急がねば。

 教室を抜け出した僕は足早に目的地へ向かった。


 今頃きっと美里さんは、カワイイ幼顔をふくれ面にして怒っているに違いない。

 このままだと確実に鉄拳制裁を食らってしまう。

 にも関わらず、僕が待ち合わせに遅刻しているのには訳がある。

「ごめんなさいね。急いでいる用事、あったんでしょう?」

「いえいえ。大丈夫です。先生こそ、こんなにたくさんの資料を1人で運ぶのは無理がありますよ」

「ありがとう。助かるわ」

 教頭室へ向かう途中、廊下に散らばった大量のプリントを集める女性教師に遭遇した。

 放っておくわけにも行かず、僕は資料を運ぶのを手伝うことに決めたのだ。

 見かけたことの無い先生だった。

 おそらく、2,3年生を担当している先生だろう。

 身長は165センチの僕と同じくらい。

 年齢はおそらく30代前半だろう。

 それにしても若く見える。

 白くてキレイな肌に整った顔立ち。

 眼鏡と目じりのホクロの組み合わせがエロさを漂わせている。

 長い髪を後ろでまとめて上げている。

 うなじがすごくセクシーだ。

 体にピッタリしたスーツが、スタイルの良さを強調させている。

 キュッとくびれたウェストから、丸いヒップのラインが美しい。

 スカートは膝上の長さ、露出も少なく上品さとエロさが絶妙なバランスで成立している。

 エロしかない怜奈先生に見習わせたい。

 そして、驚愕すべきはおっぱい!

 この女性教師が散らばったプリントを集めているのを見て、そのバストサイズに自分の目を疑った。

 怜奈先生に匹敵するほどにボリュームなのだ!

 ブラウスのボタンはしっかり上まで留められているが、その胸の大きな膨らみは隠しようが無い。

 パンパンに張ったバストは尋常ならざる盛り上がりを形成し、今にもブラウスのボタンがはじけ跳びそうなくらいだ。

 メロンでも入れてんじゃないのっ、と思わずつっ込みたくなるような規格外のサイズだ。

 たとえ2,3年生担当の教師とはいえ、こんな怜奈先生並のおっぱいを僕が見逃すはずはないのだけれど……。

 リン高はまだまだ広いということか。

「ここよ、資料室」

 女性教師に案内された資料室に入り、荷物を置く。

「ふうー」

 よし、これで心置きなく教頭室へ行けるぞ。

「本当にありがとう。あなた、お名前は?」

「僕は1年2組の有島翔平です。えっと、先生は?」

「私は、美月。よろしくね、有島君」

 美月先生の笑顔が怜奈先生に似ている気がして、何だかドキドキした。

「では、これで失礼します」

「ちょっと待って」

「おわっ!」

 美月先生が僕の腕をガッシリ掴んで引き戻した。

 向かい合って僕を見つめる。

 顔が近い。

「お礼がまだよ」

「えっ!? お、お礼なんていりませんよ。先生が困ってたら手伝うのは当たり前じゃないですか」

 美月先生が胸の大きな膨らみを僕の胸に押し付ける。

 制服の上からでも分かる、おっぱいの柔らかさ。

 ムニュムニュとした感触がたまらなく心地よい。

 怜奈先生に匹敵するほどのボリュームなのに、張りがあって形のよいバストは弾力がある。

 美月先生のおっぱいが僕の胸に押し当てられ、グニュっと潰れて変形した形がいやらしい。

 あっという間に僕の股間は熱くなってしまった。

「ふふふ。有島君のあそこは、お礼を欲しがっているみたいよ♪」

「いや、決してそんなことは! って、ああっ。美月先生、何するんですかー」

「ええ、そうよ、ナニするのよ。有島君のあそこに、たっぷりお礼させてもらうわ♪」

 なにの意味が違いますからっ!

 困っている先生を手伝って資料を運んだだけなのに、なんでこんな展開に!?

 こんなことされている場合じゃないのにー。

 まったく悪い気がしないどころか、むしろおっぱい無茶苦茶気持ちいー!

 って、ナニしてる場合じゃないぞ、僕!

 しっかりしろ!

 心の中で必死に理性を保とうと気合を入れる。

 そんな僕を見透かし、まるであざ笑うかのように、美月先生は妖艶な瞳で見つめながら、僕の腰にそっと手を回して抱きついた。

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