第10話 レナ先生の柔道技はルール的にはナシだけどエロ的にはアリだと思う

 動くたびに体中がズキズキと痛んでたまらない。

 昨日、怜奈先生と柔道の乱取りけいこをしたことが理由なのは明白で、予想はしていたものの苦痛を伴う日となった。

 投げられてケガをしたというわけではなく、日ごろから運動不足の僕は、急に過激な運動をしたものだから筋肉が悲鳴を上げたのだ。

 ホント、筋肉痛なんて何年ぶりだろう……。

「で、昨日の怜奈先生とのデートはどうだったよ?」

「何か進展あった?」

 朝のホームルームの前、小木君と阿川君が芸能リポーター並みの勢いで質問してきた。

 この2人は何を期待しているのやら……。

「昨日は……かなり激しかったよ」

「おおおーーー!」

「もっと、詳しく!」

 2人の鼻息が荒い。

「怜奈先生のテクニックはホントにすごくて、僕も何とか攻めようとはしたんだけど、防戦一方だったよ」

「やっぱ、怜奈先生のテクはハンパなかったかー。く~、羨ましいなー」

「怜奈先生が攻めるのは、イメージ通りだよね」

 2人が納得するように首を縦に振る。

「結局最後は怜奈先生に固め技をかけられて、まいったしない僕を見かねた美里さんが止めに入って、乱取りけいこを終えたんだ」

「そっかー。フィニッシュは固め技で……ん? 乱取りけいこ? 柔道かいっ!」

「はははっ。翔平にまんまと騙されたね。美里さんも来てたの?」

「僕がケガしたときのために怜奈先生が呼んだんだよ」

 ケガはしなかったけど、体中が筋肉痛で重傷だ。

「なんで柔道なわけ? 初デートにしては斬新過ぎじゃね?」

「デートじゃないからっ。怜奈先生、狩野君に挑戦状を叩きつけたんだよ。それで僕が練習相手になったってわけ」

「えっ? なんで?」

「意味わかんなくね?」

 阿川君も小木君も驚いていた。

 確かに、怜奈先生の行動は人の思考の斜め上45度をいっていることも多い。でもそれは、いつだって生徒のためを思い、先生なりに精一杯考え抜いた結論なんだ。

「小木君、昨日言ったよね? 狩野君はメンタルが弱いって。怜奈先生は柔道を通して、狩野君を鼓舞するつもりなんじゃないかなあ?」

「そっかあ、そういうことなんだね」

「ヒュー! さすが。大好きな怜奈先生の考えてることは何でも分かっちゃうってか?」

「だからー、そんなんじゃないって! それに……」

 ホントに怜奈先生の考えいてることが何でも分かれば、心配したり悩んだりする必要は全く無いんだ。

「翔平、どした?」

「翔平?」

「あ、ごめん。昨日久しぶりに柔道なんてやったから、筋肉痛になっちゃって。ちょっと疲れが残ってるみたい」

 僕は曖昧な返事でその場をにごし、苦笑いした。

 

「さあ、行くわよ。有島君」

 放課後、ホームルームを終えた怜奈先生が元気な声で僕を呼び止める。

 先生はいつもと変わらぬ様子で、筋肉痛の『き』の字も見受けられない。

「えっと、やっぱり僕も行かなきゃダメですか?」

「ええ、もちろん。私、イクときは一緒にイキたい派なの♪」

「いや、先生の性癖とか聞いてませんから……」

「さあ、行くわよ。狩野君が来る前にしっかりウォーミングアップしとかないと」

 サラッと話をスルーして、怜奈先生が僕の手をとり歩き出す。

 なるほど、ウォーミングアップの相手というわけですね。

 先生がまず向かった先は教職員用の駐車場でなく、保健室だった。

「失礼しまーす。さあ、美里行くわよ!」

 保健室の扉を開き第一声を放った先生に対し、美里さんが怪訝な顔を向ける。

「ちょっと怜奈、昨日も言ったでしょ。今日は無理だって」

「そんなこと言わないで。美里が来てくれないと、私のカワイイ生徒たちに何かあったとき困るのよ」

 生徒たち……って、僕も含まれてる!?

 ウォーミングアップが恐ろしい……。

「あんたねー、カワイイ生徒ならケガさせるようなことしないでよね。私だって自分の仕事があるんだからっ。困らせないでよ」

 今日の美里さんの声は本当に怒っているようだった。

「ねえ、美里。お・ね・が・い♪」

 怜奈先生が前傾姿勢で両腕を組み、おっぱいをギュッと寄せてお得意の悩殺ポーズを披露する。

 先生、女性の美里さんにはそのセクシーポーズ、効果無いと思うのですが……。

「怜奈、あんたバカなの? とにかく、私は仕事があるから行きません!」

「うぇ~ん! 美里ちゃんの意地ワル~」

 今度は泣き落としですか。

 何でもありだな、この先生……。

「まあ、まあ。いいじゃないか、美里君。生徒のためと言うことなら、行っておやりなさい」

 様子を見ていた校医の石井先生が、ロマンスグレーの頭をポリポリかきながら声をかけた。

「そんな! 今、体調不良でベッドで休んでいる生徒が2人いるんですよ。私は――」

「生徒は私が責任を持って見ておくよ。だから美里君、行っておあげなさい」

「……石井先生は怜奈に甘すぎです」

 捨て台詞のように言うと、美里さんは1人で先に保健室から出て行った。

「ちょっと美里、置いてかないでよ~。有島君も早く」

 怜奈先生が慌てて美里さんの後を追う。

「はっはっは。相変わらずだな、怜奈先生は」

「あの、ホントによかったんでしょうか?」

 豪傑に笑う石井先生に、僕は恐る恐る尋ねた。

「ん? 美里君のことかい? 構わないさ。それに怜奈先生に居座られたんじゃ、病人にも毒だしな。はっはっは」

 石井先生の振り向いた先には、奥からこっそりこちらの様子をうかがっていた体調不良の生徒2名影が見えた。

 なるほど、そういうわけか。

 僕は石井先生に頭を下げて保健室をあとにした。


 愛車である高級外車を運転する怜奈先生は、昨日に増して上機嫌だった。

 多分、美里さんが一緒に来てくれたからだろう。

 対して僕はいささか不機嫌である。

 それは、僕一人が後部座席に座っているからだ。

 Gカップのロリ巨乳ナース、美里さんと、Jカップのキレイ系巨乳教師、怜奈先生の2人と共に、車内という密室で時間を過ごしているというのに、この位置からじゃおっぱいが見えないじゃないかっーーー!

 くーっ、2人のおっぱいが見たい!

「コラっ! ちゃんと座ってなさい。そんなに前に出てきたら危ないでしょ。小学生じゃあるまいし」

 美里さんに睨まれてしまった。

 おとなしくちゃんと座りなおして、ここから見えるおっぱいに意識を集中する。

「で、どうなのよ?」

「やっぱり私、けっこう感じにくいみたいなの。だから、おっぱいはかなり強く揉まれたほうが気持ちいかなあ」

「あんたの感度なんか聞いてないっ!」

「イテっ」

 美里さんがパシッと怜奈先生の頭をはたく。

 ナイスツッコミ。

 美里さんの気持ちは痛いほどよく分かりますが、怜奈先生は運転中なのでほどほどに。

「柔道よ。狩野君に勝てるの? 彼、スポーツ推薦もらうほどの実力なんでしょ」

「実力でいったら、彼の方がもちろん強いわ。でも、今の彼はどうかしら? それに私、今日の試合は絶対に勝たないと。狩野君に伝えたいこと、あるのよね」

 バックミラーに映る先生の表情はキリッと引き締まっていて、いつもの授業のときに見せる、僕らのために一生懸命授業をする教師の顔だった。


 狩野君が道場にやってきたのは、僕達が到着して15分くらいあとのことだった。

 この日の狩野君は学校のカバンの他にスポーツバッグを肩にかけ、「失礼します」と礼儀正しく一礼をして道場に入ってきた。

 更衣室で着替えを済ませた狩野君が再び現れると、道場内の空気がグッと引き締まって感じた。

 おそらく中学時代から着用しているであろう、狩野君の柔道着はところどころほつれ、使い込んでいる黒帯は色が若干薄くなっていた。

「準備できたんで」

 ウォーミングアップを終えた狩野君が怜奈先生に声をかける。

「それじゃ試合、始めましょうか」

 先生は短くそれだけ伝えると、狩野君と中央で向かい合い礼をした。

 怜奈先生と狩野君の試合が始まった。

 畳の外で、僕と美里さんは静かに見守る。

 積極的に掴みにいく怜奈先生に対し、狩野君はそのつど先生の手を俊敏に払いのけて組ませようとはしない。

「狩野君、かなり警戒してるわね」

 美里さんが試合に視線を向けたまま呟いた。

「そうなんですか?」

「攻める怜奈に対して狩野君は切ってばかりだし、自分から攻めようとしないもの。様子を見てるのかもしれないけれど」

 美里さんの言うとおり、狩野君が技をかけにいこうとする気配は感じられない。

 狩野君の身長は163センチで僕よりも小さい。対する怜奈先生の身長は167センチ。

 リーチの有利は怜奈先生にある。しかし、狩野君が筋力とスピードで先生に負けるはずは無く、やはり実力から言えば狩野君が有利なのは間違いない。

 それにも関わらず、10分が経過しても狩野君は攻めあぐねていた。

 試合のルールは怜奈先生の独断と偏見で時間を無視した形で進行しており、1本取ったほうが勝ちとみなされる。

 先生が狩野君を捕まえた。

 襟と袖をしっかりと掴んで組み合う形になる。

 相手にポジションを取られた狩野君が必死に抵抗する。

 怜奈先生が得意の足技をかけにいく。

 狩野君が倒れそうになりながらも必死に耐える。

「どうしたの? 昨日の勢いはどこにいったのかしら?」

「っく……っせーな」

「狩野君の得意技は逃げの柔道ということかしら?」

「んなわけねーだろっ!」

 挑発的な言葉を口にする怜奈先生を狩野君が睨みつけ、襟を掴み直してグッと引き寄せた。

 その瞬間、怜奈先生の柔道着の胸元がパッとはだけて――

「な、なんでTシャツ着てねーんだよっ!」

 狩野君の大声が道場にこだました。

 怜奈先生のはだけた柔道着の下から、淡いピンク色のブラジャーに包まれた巨大な乳房がブルンと揺れてあらわれた。

「Tシャツ、忘れてきちゃったの。テヘ♪」

「テヘじゃねーよ! なんて格好してんだよ!」

「隙ありっ。やあっ!」

 怜奈先生が足払いを繰り出す。

「わっ、何すんだよ!」

「今は試合中よ。集中力を欠いた者には、死あるのみ」

 怜奈先生、今のはかなり卑怯だと思います。

 あと、死って……。

「グッ……あんた一体なんなんだよっ! 真剣なのかふざけてんのか分かんねーよっ。クソ!」

 声を荒げた狩野君が先ほどまでとはうって変わって、積極的に攻め始めた。

 体勢を崩した怜奈先生が今度は防戦一方となる。

 狩野君の攻めをかわそうと動くたび、怜奈先生のブラに包まれた巨乳がブルンブルンと激しく揺れまくる。

 上下左右にまるで柔らかい生き物のように揺れ続ける。

「す、すごい!」

「有島君……変態」

「そっちじゃないですよ! 試合のことです。まあ、おっぱいもすごいことになってますけど……」

「狩野君、吹っ切れたって感じね」

 試合開始当初の動きと、今の狩野君の動きはまったく違っていた。

 俊敏さが一段と増し、そして攻める姿勢が全面的に出ている。

 勝とうとする気迫が伝わってくる柔道だ。

 狩野君の猛攻に耐えていた怜奈先生が反撃に出た。

 腰を落として重心を下げ、襟を掴んだ手に力を込めて狩野君を引き込んだ。

 体勢を崩した狩野君が前のめりになって倒れこむ。

 狩野君の顔の先には、怜奈先生のJカップの谷間が。

 巨乳の豊かな谷間に顔を挟まれ、息苦しそうに狩野君がもがく。

 そのまま先生が大内刈をしかけ、狩野君が畳の上に倒れた。

 すかさず先生が寝技を仕掛けるが……。

「ちょ、ちょっと何だよそれっ!?」

「私の必殺技、パイズリ固めよ♪」

「そんな技、ねーだろっ! ちょっと、やめ、あっ。ああっ!」

 仰向けに倒れる狩野君の下半身に先生が覆いかぶさり、密着して押さえ込む。

 狩野君の膨張しているであろう股間に、怜奈先生のおっぱいがムニュムニュと押し当てられる。

「どう? もう我慢できないでしょ?」

「うっ……や、やばい。ああっ」

 狩野君の上ずった声を上げる。

 怜奈先生が片手をおっぱいの下に移動させ、何やらモゾモゾと動かす。

 ふたたび出した片手でおっぱいを抱えるようにしてギュッと寄せると、上体を前後させて狩野君の下半身を摩擦するようにゆっくり動き始めた。

「あっ! ああっ!」

 狩野君が体をビクつかせながら、叫び声を上げた。

 狩野君のモノは柔道着のズボンの中でおそらく、いや100パーセント凝固している。

 そしてそれは、薄い生地のブラ一枚で包まれた怜奈先生のJカップの谷間に挟まれているのだ。

 柔道着のズボン生地を隔てているとはいえ、あのバレーボールみたいな先生の乳房に挟まれているということを想像しただけで……って、何やってんだよっ!

 悠長にさらなるエロ展開を期待している場合じゃない!

 怜奈先生の暴走を止めなくちゃっ。

「ま、まいった」

 僕が畳に入ろうとした瞬間、狩野君が敗北を宣言し、怜奈先生が体を離して立ち上がった。

「クソっ。女にも勝てないなんて……」

 狩野君は仰向けに倒れたまま起き上がろうとしない。

 腕で顔を覆い、体を震わせ涙を流し始めた。

「狩野君、早く起きなさい。いつまで寝ているつもり?」

「えっ?」

 狩野君が上体を起こし、怜奈先生の顔を見つめる。

「すぐに2試合目、始めるわよ」

「だってオレ、もう負けて……」

「いつ先生が、1試合で終わりといったかしら?」

「へっ? あの、意味が分からないんすけど……」

 狩野君は明らかに困惑していた。

 そりゃそーなるよね。

 果し合いを申し込まれて、勝った相手からリベンジ申請されたんだから。

「意味なんてないわよ。久しぶりにいいけいこ相手を見つけたから、私がただ柔道したいだけですもの」

「えええっ! なんすか、それ? プハッ、フハハハハッ」

 狩野君は吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。

「まったく、あの子ったら。でも、怜奈らしいわね」

 美里さんも苦笑いしている。

「ねえ、狩野君。柔道のけいこってすごくキツくて、つらいじゃない。必死で練習して、試合で負けるのってもっとつらくて悔しいよね。だから、もっと楽しまなくちゃ! 狩野君は入学したばかり、まだ1年生なんだよ。何回負けたっていいんだよ。負けた分だけ強くなって、3年生までけいこを続けて新入部員が入ってきたとき、『狩野先輩みたいな柔道家になりたいな』そんな風に感じてもらえたら、素敵だなあって先生は思うよ」

「……」

 狩野君は先生の目をジッと見つめて静かに話を聞いていた。

「そしてもう1つ。柔道でやられたら柔道でやり返せ。ちょっと先輩に意地悪されたくらいで逃げ出しちゃう子は、先生の弟子を名乗る資格はありません!」

 怜奈先生、ツッコミどころ満載過ぎです。

「フッ、ハハハ。オレ、先生の弟子じゃないし。名乗ってないし」

「いいえ。先生の生徒は弟子みたいなものなのです」

 両手を腰にあて、先生はJカップの大きな胸を張って答えた。

「よっしゃ! 怜奈先生、もう一回、お願いします。でも、さっきの技は無しにしてくださいよ」

「ええ。じゃあ今度は私の一番弟子、有島翔平君と戦って倒してみなさい。彼から20本とったら、私が相手をしましょう」

「はいっ」

 よし、まずは怜奈先生の一番弟子のこの僕が……ってなんでだよっ!

 しかも20本って。

「がんばれ、一番弟子」

 美里さんにポンと背中を押され、僕は引きつった笑いを浮かべながら畳に入った。


 ジッとしていても体中がズキズキと痛んでたまらない。

 筋肉痛が悪化した上、超高校級の柔道技を20本受けたせいだ。

 狩野君は「有島って受け身ハンパねーな」なんて褒めてくれて正直嬉しかったけれど、僕から言わせてもらうと、狩野君の投げ技の方がマジ、っぱねっす。

 僕と乱取りけいこを終えたあとも狩野君は怜奈先生とけいこを続け、自信を取り戻した様子で帰っていった。

 帰り際の狩野君の笑顔が、今まで見せたことのないさわやかな表情で、ここまで付き合った僕も頑張った甲斐があったなあと、そんな報われた気がした。

「一時はどうなることかと心配したけど、良かったわね」

「はい。狩野君、元気になってくれて安心しました。ところで美里さん、昨日のことなんですけど……」

 怜奈先生は更衣室で着替えの最中だ。

 今のうちに怜奈先生のお父さんのことを確かめたい。

「このことは、怜奈の親友である私と石井先生、それから怜奈の家族や親類しか知らないことなんだ。君なら信用できると思って話すけれど、他言は絶対にダメだからな」

「はい」

 美里さんがグッと体を近付け、僕の顔のすぐ前でささやいた。

 ち、近い……。

 怜奈先生とは違ったいい香りがする。

 すごく甘い香り。

 Gカップの巨乳がナース服の胸元をパツンパツンに膨らませている。

 目の前の大きなおっぱいに、つい視線がいってしまいそうになるのをグッとこらえ、美里さんの話に集中する。

「怜奈の父親は亡くなっている。これは紛れも無い事実だ。怜奈がなんであんなことを言ったということなんだけど――」

「2人でなんの話してるのー?」

 怜奈先生に後ろから突然声をかけられ、僕と美里さんは飛び上がるくらい驚いた。

「い、いえ別に」

「怪しいわね。あー、有島君、美里にHな質問してたんでしょ?」

「それは、あんただっ!」

「イテッ」

 美里さんがパシッと怜奈先生の頭をはたく。

「ほら、バカ言ってないで学校に戻るよ。私、仕事の途中で抜けて来たんだからね」

「ごめーん。でもありがとう、美里。助かったよ。今度おごっちゃうよー」

「当たり前じゃ」

 怜奈先生はまるで子供みたいに美里さんにじゃれつき、腕を組んで車へ引っ張っていった。

 一瞬だけ振り向いた美里さんが、眉をひそめて胸の前に小さく手をあげ『ゴメン』のポーズを僕に見せた。

 やっぱり、怜奈先生のお父さんは亡くなっている。

 それなのに、なぜ先生はあんなことを言ったのか?

 ――やだ、有島君。なに言ってるの? 私の父は健在よ。

 あれは、どういう意味なのか……。

 先生のお父さんのことはすごく気になるけれど、今日は無事に狩野君の問題が解決したことだし、これでよしとしよう。

 けいこのあと、狩野君は明日から部活に行くことを約束してくれた。

 あのとき、怜奈先生は涙を浮かべて何度も頷き、狩野君の手をギュッと握っていた。

 そして、帰り際の狩野君の笑顔を見て、怜奈先生も優しい笑顔になっていた。

 怜奈先生は生徒のことをいつも真剣に考えてくれている。

 生徒がつらいときは自分も涙を流し、生徒が嬉しいときにはまるで自分のことのように喜んでくれる。

 そんな生徒思いでかなりエロくてちょっと強引な怜奈先生を、僕は何だか気になって放っておけないないのだ。

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