カササギと鏡

@changetype

しんりんちほーの冒険!

 しんりんちほーの端、木の数がまばらになっていて、隣のちほーへ繋がる道がある場所。

 そこに鏡を持ってあっちを向いたりこっちを向いたり遊んでいるアニマルガール……「フレンズ」がいます。

 光に当たると青く輝く長い尾羽と翼は、普段は胴体や頭と同じような、紫を含んだ黒。翼の先が腹や肩と同じ白で彩られている、スズメ目カラス科の動物として知られる彼女の名前はカササギ。


「おぉー……」


 鏡をしばらく見つめていると思ったら後ろを向いたり、鏡を見つめながら自分の顔を引っ張ってみたり。鏡とその映るものへ夢中になっています。

 そこを通りがかったのは、イノシシという種の扁平な鼻を模した武器を手に持つ、ニホンイノシシのフレンズでした。


「カササギどの、珍しいものを持っておりますな! なんでござるか?」

「あ、イノシシ。これが何か気になる? ほら、見て見て!」


 カササギの突き出した鏡を言われた通りじっと見つめるイノシシの声は、興味から驚愕へと変わっていきます。


「えっ? これは……拙者の仲間でござるか?! いつの間に!?」


 突如目の前に現れた顔に驚愕し後ずさるかと思えば鏡の後ろを見ようとしたりと、興奮しているイノシシを落ち着けようと、カササギが説明します。


「これはねーイノシシが映ってるんだよ!」

「おお!? おお……! 言われてみれば、でござる! でも、どういうことでござろう? こんな不思議なもの、初めて見たでござる!」


 鼻をひくひくと動かしながら、カササギのように鏡を見つめながら自分の顔を引っ張ったり手を鏡の前で動かしたりしています。

 しかし、説明を求められても姿や周りの景色が映る、という事以外分からないカササギはそれ以上詳しく話す事はできません。


「いやーそれが自分の顔とか、周りの景色が映るって事以外さっぱり!」

「それなら図書館で博士に聞けばいいでござるよ! 拙者もこれが何か気になりますし、カササギどのについて行っても良いでござろうか?」

「イノシシがついて来るのはいいんだけど、図書館ってどこにあるの?」





 それなら拙者について来るといいでござる、と言ったイノシシについていくカササギですが、前を歩くイノシシは後ろも振り返らずにどんどん道を外れて奥へ奥へと進んで行きます。

 自慢の武器で草木を掻き分けて進んで行くイノシシの歩みはどんどん速くなり、ついて行く事すら大変です。

 密集する木々の中では飛行できないカササギは歩いて追いかけますが、とうとう生い茂る草木がイノシシの姿を隠してしまいました。


「カササギどのー! こっちでござるー!」


 イノシシの姿が見えなくなってしまったので、声を頼りに追いかけるカササギでしたが、その声も少しずつ遠ざかっていくではありませんか。

 このままイノシシを見失ってしまったら、もともと居た場所へ戻る道も、図書館へ行く道も分かりません。

 必死で追いかけるカササギですが、やはりこの森の中でイノシシに歩いて追いつけるわけもないか、と、声を張り上げてイノシシへ待つように呼びかけます。


「ちょ、ちょっと待ってよイノシシ! 私、森の中は飛べないの~!」

「こっちでござるよー!」


 カササギの呼びかけに歩みを止めたのか、少しずつイノシシの声が近づき、ようやく見えた姿にとりあえず遭難はしないで済んだ、と息を切らせながらも安堵するカササギでした。


「なんで……こんな森の中を…………」


 置いていかれると思ったよ、とカササギが息を切らせながら恨みがましく言うと、イノシシはすぐに、そんなつもりはなかったと謝ります。


「拙者、まっすぐ行けば近いかと……ごめんなさいでござる」


 カササギの持つ鏡の事を早く知りたいのは、二人共同じなのです。それからは肩を互いに並べ、ゆっくり歩いて行きます。しばらく歩くと、明るい場所……開けた場所へ近付いているのか少しずつ鬱蒼とした森が明るくなっていきます。


「あ! もうすぐ図書館に出るでござるよ! こっち! こっちでござるー!」

「あっ! ちょっと、待ちなさーい!」


 もう我慢できないと駆け出すイノシシを追いかけるカササギは、密集する木々に囲まれ飛べなかった鬱憤を晴らすように飛翔します。

 イノシシは後ろから飛んできたカササギが自身を追い越したのを見ると、こちらも負けてられないと、今度はイノシシがその背を追います。


「ふふーん! これくらい開けた所なら、私もイノシシに負けないくらい速く飛べるんだから!」

「おおー! 負けないでござるよ! カササギどの!」




 それから結局どちらが勝ったかは分かりませんが、とにかく二人は建物の前で駆ける足と羽ばたく翼を止め、肩を並べ一歩ずつ建物へと入って行きました。

 そうしてとうとう図書館へ到達したカササギとイノシシを、白と茶の色をした二人のフクロウのフレンズが出迎えました

「どうも、アフリカオオコノハズクの博士です」

「どうも、助手のワシミミズクです」

「拙者、ニホンイノシシのイノシシでござる!」

「私はカササギ! それで博士、これが何かわかる?」


 カササギは胸元へしまい込んでいた鏡を取り出し、問いかけました。

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