サイコロ6の美少女って大変なの!

ちびまるフォイ

サイコロ女の受難


私の1日はサイコロではじまる。


「はぁ、2かぁ」


自分の頭を回して出た目は「2」。いまいちな数字。

私たち、サイコロ人間には出た目の大きさがそのまま顔面偏差値になる。


2なんてダメダメな数字を出した私は、

当然いま気になっている早風くんに声をかけられるわけもない。


「早風くん、一緒にご飯食べよっ」

「早風くん、今日の放課後一緒に帰ろ」

「早風くん、いっそもう抱いて!!」


「ふふふっ、いっぺんに話しかけないでくれよ」


早風くんの周りには、頭の目の数が多くて自信をつけた

ハイエナ……もとい女子たちが群がっている。


「ふん……なによ、出た目が4とか5とかだからって……。

 私は目こそ小さいけど、心のサイコロの目は誰よりも大きいんだから」


自分でも悲しいほどの負け惜しみを吐いた。

私だって、もっと大きな目を出せればきっと……。



翌日、私は天に祈った。


「神様、どうか……どうか私に良い目を出してください」


頭を振ってサイコロを回す。

出た目は「1」。


「ああああ!! もう! 昨日より悪いじゃん!!」


絶望した。

当然その日は学校にいっても早風くんはもちろん、

ザコ男子からも声をかけられることなく1日が終わった。


その翌日も。


「3んんんんん!?」


またダメで。

その翌日も。


「なんでまた2なのよぉーーー!!!」


その翌日も、その翌日も……。


「もう1はイヤぁぁぁぁ!!!」


私のサイコロ運は絶望的で神様に嫌われているとしか思えなかった。

早風くんとの距離はどんどん広がってしまう。


「はいはい……どうせ今朝も低い目なんでしょ……」


出た目は「1」。

鏡に映った自分の頭を見てはぁとため息が漏れる。


ふと視線の先にはネイル用の化粧品が目に入った。


「……いや待って? この目を変えればいいかも」


私は化粧品を使って「1」の目を書き換える。

1の赤色を黒く塗りつぶし、周囲に点を増やして「6」の目にする。


「できた! これならきっと声をかけてもらえる!」


学校に向かうと、私の作戦はぴたりはまった。


「ねぇ、今日は予定とかあるの?」


「は、早風くんっ……!!」


久しぶりに声をかけられた緊張で危うく頭の目が朱色に染まりそう。


「予定ないですっ」

「そう、よかった」


目を変えたその日にデートに誘われちゃった!!

早風くんと一気に縮まった距離に思わずガッツポーズ。


デートもスタイリッシュにエスコートする早風くんにますますメロメロ。


「ここ俺のお気に入りの場所なんだ」


すっかりあたりも暗くなったころ、風早君と良い雰囲気の場所にきた。

これはキスの流れかもしれない!


「ちょっとトイレ……!」


私は慌てて心の準備をするために一時撤退。

鏡を見て驚いた。


「うそ!! 化粧が落ちてる……!!」


緊張の汗で化粧が落ち始めて、6の目が1になりかけている。

これじゃキスしようと顔を近づければすぐにバレてしまう。


「ごめん! 今日はちょっと親が死にかけているから帰るね!」


「急に!?」


私は風早くんと別れて速攻帰宅した。

もったいなかったけれど、いい判断だったと思う。


翌日、私は自分の頭を振って目を確認した。


「ろ、ろ、ろ、6!! やったーー!!」


もう何年ぶりだろうか。

小細工をすることなく6の目を出すことができた。

化粧落ちの心配もない。キスし放題だ。


私はスキップしながら早風くんのもとへ向かった。


「早風くんっ。昨日は急にかえってごめんね。今日は予定ある?」


「……え、なに」


死んだミミズでも見るような眼で見られた。

なんで!? 昨日と顔の目は同じなのに!


「ど、どうしたの早風くん。昨日はあんなにいい感じだったじゃない!」


「だって昨日は……」


早風くんは私の顔に向けていた視線を下に落とした。




「昨日は、お前の体のサイコロ目が6で巨乳だったから」


「結局そっちかい!!!」



今朝の体の目は「1」。

サイコロの目でナイスバディかどうか決まる。


今度は体の目も化粧しなくちゃ……。

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