第11話束の間
昨日はつらかった……
大変でした。
もう、いろいろあって何がなんだか……
そんなことを思いながら俺は学校にトボトボと向かった。
今日は、なにもおこらないでほしいと願いながら……
商店街まで来ると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おっす、柴咲~」
と、聴き慣れた声がする。
俺が後ろを振り返るとそこには加藤がいた。
どうでもいいが、髪を切ったようだ。――ちょっと違和感があるていどだが明らかにボリュームがすくない。
「あぁ、うっす加藤」
軽く挨拶をして「髪切ったか?」と問いかけてみる。
「そうなんだけどな~、聞いてくれよ~、何か知らんけど帰宅中、気づいたら髪がいい感じに切れてたんだよ~」
……何言ってんだこいつ。
俺が無言になったので二人の間に『間』が生まれる。
「……何言ってんだ、みたいな顔すんなよ~」
おう、こいつエスパーか。
「てか、いきなりそんなこと言われても信じるわけ……」
ねぇだろ。そう言おうとしたがそこでふと思った。
以前の俺は加藤からそう思われていてもおかしくはない。
朝イチから突拍子もないことを友人から言われても冗談だと思われても仕方なくはないのか?
うーん、俺も今考えてみると、なかなかおかしな事を言ってたんだな。
すると加藤が怪訝そうな顔で俺に声をかけた。
「どうした~、腹でも痛いのか~」
加藤が心配してくれたようだ。
「いや、なんでもねえよ」
俺は心配を晴らすよう、ケロッとした顔で返事をした。
「ならいいけどよ~」と加藤が流す。
だがそう考えると加藤の話が本当でもおかしくないということになる。
……いや、まさかな。
俺の脳裏に槍を持った少女の姿が横切ったが気のせいだろう。――気のせいであってほしい。
歩きながらそんなことを考えるとふと、加藤が口を開いた。
「……そう言えば、宿題終わったか~?」
宿題? そんなのあったっけ?
「――!!」
や、やってねぇ。
俺の顔を見た加藤は察したように「……ああ、終わったのな~」と言ってきた。なので俺は……
「うん、終わった!!」
と元気な声で言った。
オワターーーーーーーーー!!!
叫びたい。
……いや、ここで諦めてどうする。
あきらめたらそこで試合終了だ。
まだ……まだ間に合ーーーーーーーーう!!!
「てことで、また学校でな」
と言い残し俺はダッシュで加藤のもとを離れた。
ちなみに提出には間に合いませんでした……
ラース・ルラシオン @purana
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