エピローグ

 数日後、長かった戦は終わりを告げた。アルプ皇国はリーゼル台地の主権を失うこととなったが、アルプ皇帝は処刑を免れた。

 ファビス王女婚約の告示がなされたのはそれから間もなくのことだった。国民は、戦功著しかったデビルドラゴンの竜騎士が皇太子になるのは自然な事と受け止めた様だ。

 親竜族は今、故郷北の森への移住を準備中だ。そんな中、クラリスはちゃっかり王宮でファビスの侍女におさまっている。ファビスともレイリンとも仲良くやっているみたいで、毎日みんなで賢者の授業を受けている。

 僕は北の町ザクセルに居城を貰ったが、今は王宮住まいだ。もう少し国情が落ち着くまではここでファビスの守護に当たるというのが表向きの理由だが、実のところ、ファビスが我が儘を言って僕を引き留めた。お陰で、僕も賢者の授業を受けさせられている。

 シャハドとレイリンのアツアツぶりは相変わらずだ。あの二人の結婚も近そうだ。

 アルマーダは北の森で仲間たちと暮らしている。僕がファビスと結婚するのはまだ先のことだが、新婚旅行はアルマーダに乗って行こうと決めている。


 今日も王宮警護の竜騎たちが空を舞っている。僕はファビスと並んで王宮のテラスからそれを眺めていた。夕焼けがレッドドラゴンを一層赤く染めている。彼女の赤みがかった肌も夕陽に染まり、濃い緑の瞳を際だたせる。

 平和の訪れを告げるかのように、微かに竜の咆吼が聞こえていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親竜族の末裔 風来 万 @ki45toryu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る