STAGE:8 外国人には気をつけろ!

 今回は僕自身ではなく、STAGE5で「『魔界天使ジブリール2』をやりたかった」との言葉を残して警官になった友人の話です。


 この友人とはネットで知り合い、幸いにも当時住んでいる家が近かったので何度もお互いの家に遊びにいった仲でした。


 僕が上京してからも帰郷する度に会いに行ったものですが、会うたびにネットゲームにハマっていたり、アーケードの『WCCF』に夢中だったりと、弁護士になるための勉強をほったらかしており、案の定、長年試験に受かることができないでいました。


 そんな友人に両親もある時ついに堪忍袋の緒が切れて「今年中にどこでもいいから就職しろ!」と言い渡し、その結果、辿り着いたのが東京の警官、警視庁だったわけです。


 もっとも受験の為に上京してきた彼はTシャツ、短パンというあまりにラフな恰好で、今時アルバイトの面接でももうちょっとまともな恰好でくるわという酷いもの。

 おまけに体力測定では腹筋が三回しか出来なかったそうで、彼を自分のアパートに泊めた僕はその日のうちに残念会を開いてやりました。


 が、予想に反して何故か合格。

 僕の中で東京の治安への不安度を急上昇させて、彼は警察学校に入学。そこもなんとか卒業して警官になりました。


 そして都心でも治安が悪そうなところへ配属された彼。

 要領がいいヤツなんで上手くやっていたそうですが、ひとつだけ問題がありました。

 都心では頻発に起こる外国人による喧嘩。なんとか取り押させたはいいものの、言葉が分からなくてとても困るのだそうです。


 そこでゲーマーな彼はあるものに目を付けました。

 それはPSPソフト『トークマン』。言葉を聞いて翻訳し、こちらの言葉も翻訳して相手の言語で伝えてくれるソフトです。


 これを使えば外人と会話が出来る。おまけに普段はゲームも出来るし、俺って賢い! なんて思ったそうですよ。


 そしていつものように外国人の喧嘩があり、捕まえたばかりの興奮した外人にここぞとばかりに『トークマン』が入ったPSPを手にして事情聴取したところ……


「舐めてんのか! このクソ野朗!」


 と流暢な日本語をしゃべって外人はPSPを友人から取り上げ、人ゴミへと投げ捨てたそうです。


 まぁ、そうだよね。

 興奮しているところに、そんなおもちゃを差し出されたら普通怒るよね。

 結果、『トークマン』作戦は見事に失敗。投げ捨てられた友人のPSPも見つからなかったそうです。


 そんな友人ですが、警官になって数年後に結婚。

 今もなんだかんだで警官を無事勤め上げています。

 

 ただ、子供にも恵まれたにもかかわらず、いまだに「ゲーム三昧なニートの頃に戻りたい」と内心を吐露されるのは勘弁してほしいですね。

 治安への不安がますます高まる今日この頃です。

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