STAGE:9 分納はイヤだ!

 最近はダウンロード販売が普及しているので、もう無いのかもしれませんが、僕がゲームショップで働いていた時代には『分納』というものがありました。


 この『分納』、読んで字の如く『分割して納品する』というもの。

 つまりはあまりに人気で生産が追いつかないゲームソフトが発売日に発注数の何割、次の出荷日に何割と、数回に分けて納品されるのです。


 と、これだけだと「まぁ生産が追いつかないのなら、それも仕方ないんじゃない?」と思うかもしれません。


 が、ゲームソフトは一般的に発売週の売れ行きが命!


 そりゃあビッグタイトルは他と違って長く売れてくれますよ。

 でも、誰だってすぐに遊びたいでしょ?

 ええ、ショップだって発売週にどどーんと売り出したいです。


 ってことで分納になっても、僕たちショップ側は発売週に出来る限り多くの数を用意しようと頑張るわけですが、当然分納ですから発売日分はどこの問屋も数が限られていて仕入れ値がどんどん上がるわけです。


 もうこの時点で、分納ノーサンキューですよ。


 だけど分納が怖いのはむしろ発売日の後。

 ちゃんと売れてくれて、次の入荷分にも予約が入ってくれるとまぁ安心も出来ます。

 しかし、予約分は売れるけれど店頭分はさっぱり、となると頭が真っ青になります。


 そうなんです、分納なのにあまり売れないって事態もこの世の中にはあるのです。


 これは恐怖ですよ。

 なんせ店頭で売れ残っているくせに、翌週あたりにはまた結構な数が入荷してしまうんですから。

 

 ちなみにこの分納の悲劇が起きてしまった某ソフトは、発売日の夕方にして問屋から完全に赤字な価格での案内が来ました。

 ショップも大変ですが、仕入れる量が桁違いな問屋はもっと大変です。早めにどんどん捌いていかないと、分納で溜まる一方ですから。


 そして問屋がそんな値段で案内をしてくると、当然市場での値段も下がります。

 稀に発売して間もないビッグタイトルがとんでもなく値下げしていることがありますが、その背景には分納が絡んでいることもあるのです。


 というわけでホント分納はやめて。

 メーカーとしては確実にリピート生産分を掃ける事が出来るのは大きいかもしれませんが、同時に下手したら市場価値が早い段階で落ちまくって、結果、そのタイトルにキズをつけることになります。

 お互いにいいことなんてありませんよ?


 あ、でも、安く買えたユーザーはラッキーなのかな? うーん(とは言え、予約して買ったユーザーはお気の毒様なんだよね。買取金額もダダ下がりするし)。

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